37
「お姉ちゃんって、ルークス先生の研究室でお手伝いするって聞いたんだけれど?」
教室の移動中に何気なくアリアに質問される。
事の発端はルークスの研究室で雪崩が起きて当の本人が遭難しそうになったから。人命救助がしやすくなると考えて申し出てみた。
「あぁ、うん。あそこ常に人手不足で大変そうだから、片付けしたり? お茶いれたりすることにしたの」
「ルークス先生って気難しそうだから大変じゃないの?」
「へぇ、難しいんだ……そこまでじゃないけどなぁ」
アリスの前では独占欲強めで甘えん坊のいたずらっ子なのだが、ここは認識の違いを敢えて埋めることは自分用の立派な墓穴を自ら掘りすすめるみたいな愚行なので遠慮しておいた。
「ねぇ……おねえちゃん。何か私に隠してることあるでしょ?」
アリアがぼそっとつぶやいた。
「へあ? ……なっなんで?」
「何かそんな気がして」
さすが妹、家族ならではの唐突な質問に心臓が口から飛び出しそうなアリスが挙動不審気味に誤魔化してしまう……。
「ないない! あったらまずアリアには言うじゃない?」
「そうなの? ふふ、じゃあ気のせいかなぁ……」
妹にルークスとの事をまだ言い出せるきっかけも無いままにどんどん関係は深くなる。
何かを感じ取った妹からそれとなく聞かれてしまう始末。
「う……うん。なにかあったら教えるよ」
上着を脱いで袖をまくったら準備完了。
「……さて始めようかな?」
あらかじめ確認して読み終わったらしい資料や本を次々に本棚に戻していくとスペースが空いて若干すっきりしたような気がして気分がいい。
過去には自分もそう簡単には処分できない黒歴史達を山ほど抱えて身動きも取れずに足掻いていたものだが、ここに来る時に、いいのか悪いのかみんなまとめて燃えて消し炭で心機一転気分すっきりなのであった。
目的の本棚は居眠りしているルークスの後方少し上……。
「むむむ……この本を戻したいのに目的地にはルークスが……。ちょっと避けられそうもないときたら……」
とにかくこの手にある本を戻したくて、うずうずするからそっとルークスの腰かけた椅子に自分も膝を乗せてそっとその後ろの本棚に手を伸ばして身を乗りだした。
「ん、あとすこし……」
ギシ……
ちょっとした軋みとしきりに鼻先に触れてこようとする温もりの気配がルークスを微睡みから引き戻す。いつの間に寝落ちたのか……うっすらと目を開けると、自分に覆いかぶさっている……これはアリス?
その花の様な芳香に惑わされてしまいそう。
これではまるで煽られているように感じてしまっても仕方のない構図。
「ひゃん!」
「君は何も知らぬ顔をして存外大胆なのだな……」
かぁぁぁぁ……
「それ……違っ、んん!」
「!」
珍しく自分から触れてこようとしてきた温もりが逃げ出そうとするから、それを捕まえて膝の上から逃がしはしない。
「あ……」
こんな扇情的な行動を取るアリスをわざわざ見逃してやる余裕は今のルークスは持ち合わせていなかった。
アリスを決して傷つける事のないように無理に押し入ったりはしないつもりだったが、堪えきれない彼女の切ないお願いが耳元で囁かれると彼から理性という二文字が消え去っていった。
何割も削り、割愛し大部ソフトに書き換えてお届けしています
(; ・`д・´) キリッ
↑
やりきった顔