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 ルークスの研究室で自習していたが、いつの間にやら机に突っ伏してうとうとしてしまったアリス。


 ガチャ


「ふぁーっ。たっだいま~~」




 一仕事を終え、気疲れはあるが解放されたタイミングで咲良の状態になったルークスが帰ってきた。


 アリスは声をかけてもピクリともしない。


「もしかして……寝ちゃってる? つんつん……良く寝ちゃって、アリスったらまるで子供みたい。にひひ……」


 ルークスはアリスのほっぺたを暫しばらくくむにむに押して遊んでいた。

 ぷにぷにむにむに……


「女の子は柔らかいんだなー、私も昔は女の子だったんだけど……」


 むにむに

「柔らかくない……」


 自らの頬をむにむにしても女の子のそれとは比べ物にならなかった。


 むにむにむにむに……。


「……もーぉ、つまんない!」


 外見は(成人男子で)大人びていても中身はまるで子供な咲良は、同郷の年上の友達が出来て嬉しくて仕方ない。目の前のとびきり可愛い娘は、訳ありの自分が甘えても嫌な顔ひとつしないときたら強依存まっしぐらだった。


「もう可愛いアリス大~好き」


 ルークスはアリスに寄り添いその頬に口付ける。


 彼の体や精神にある一定以上の負荷等がかかったり通常時と違うとると咲良が表に出る余地が出てくる。


「アリス、柔らかくてあたたかい……」


 ルークスはアリスを大きな手で宝物みたいに抱え込むと寄り添い懐にしまい温もりでうとうとし始めてしまう。




「!」


 意識を取り戻したルークスは慌てて体を離す。アリスは静かに寝息を立てている。

 じんわり温もりを感じる自分の体の所々に羞恥を隠せず眉をひそめるも次第に耳まで赤く染まっていく、この状態……自分自身が信じられない。


「……くそっ」


 最初の時は、教え子アリスが強引に押し掛けて来たのだ。そうに違いないと自分に言い聞かせ誤魔化しそれを何としても押し通してやろうと思っていたが、今のは何だ?


「くっ……無理に引き留めず部屋に帰せば良かったか……でも」


 きちんと確認したくて、ちゃんと言い含めるまでは帰したくなくて、半ば強引に引き留めておいたと言うのに、気がつけばこの様ざまだ。


 寝ている自分の腕の中にこの女子生徒が無理やり入り込む事は可能なのかと、逆転の一手も考えてみたが、相手は無防備な表情をして寝息を立てている少女。強く握ったら折れてしまいそうな細腕でそんな力業ができ得るわけも無い。


「バカらしい……」


 これは世間に何と言い訳を考えたものか。考えながら自分の指先が冷えてきたのに気が付いて温もりを求めて無意識にアリスに手伸ばそうとした自分の手を勢いよく引くと後ろに隠す。


「私は……彼女に何を求めているのか……あり得ない! 彼女は生徒だ!」



「んっ……お帰りなさい、僕寝ちゃってた。ふふふ……おはよ」

 大きな声をあげた事によりアリスが微睡みから目を覚まし優しく微笑えんで体を起き上がらせた。その滑かな肉体、アンニュイな表情……背徳的な全てに対し、胸の鼓動が早鐘を打つように鳴り出して止まらない。


「ぐっ……」


 自分の傍かたわらで、無防備にも警戒一つしないこの無垢な少女の温もりを心地よく感じていたのは確かで……、何なら邪な何かに身を任せ押し倒したい衝動に駆られるルークス。


「どうしたの? 難しい顔をして?」


 伺うように頭こうべを傾げ、流れる様にしなやかな手つきでルークスの頭を撫でる。


「やめろ!」


 記憶にある中でも人に撫でられるなど子供の頃にも経験せず、それを人に許したことは今まで無かった。勢い良く叩はたいてしまった。


「痛っ……」


「あっ……」

 二人の間に沈黙が流れる。




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