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メイドコスとメイクをキメて鏡の前でポーズを決めるのは中学二年の山ノ内瑞希。
「可愛い……」
彼、曰く、僕って可愛い系の男の娘♪ 自分からこんなこと言うなんてどれだけ勘違いしてるのかと思われるかもしれないけど……自分の可能性に気付いちゃったんだよね。
メイドコスでポーズをキメていてる姿は何処から見ても美少女な彼だけど、こんなでも性的指向は女子一筋だという。彼女いない歴=年齢という残念さである。
文化祭の模擬店のメイド喫茶でふざけたクラスの女子に半ば無理やりメイドコスをさせられた瞬間、自分の自分でない可愛さに開眼する! そこから芋づる式に中性的な見た目に更に磨きがかかってしまった。
将来は一緒にコスプレを楽しめる人がお嫁に来てくれるのが一番の希望(野望(無謀))♪
休日の午前、家族も夜まで皆出払っている。前日の夜半から続く雨でその日予定していたイベントが中止になり瑞希も憂さ晴らしに自宅でコスプレをし、なりきりメイクでポーズを決めて自撮りに勤しんでいた。
突如、激しい轟音と共に家中の電気が落ちる。
「やだ! なに怖い!」
停電により視界が奪われ、一瞬で世界が漆黒に包まれ動けないでいると、何処からともなく熱と材木が焦げた様な臭いが充満してきた気がする。
「げほ! げほ! 煙? 逃げないと!」
中学生男子の火事場のバカ力で勢いよくドアを開け放つと目の前は一面真っ赤な灼熱地獄。
「!」
新鮮な空気が一気に入り込んだことで炎が爆発的に燃え上がり勢いで瑞希は飛ばされ室内と共に激しく燃え上がった。
「……」
朦朧とした意識の中何者かに手を掴まれ、一気に引き上げられた。
「やあ! 元気?」
そこにいたのは眼鏡っ娘。
「ん……誰?」
「えへっ……アタシあなた達の言うところの女神のお姉さんだよ? 悪い女神じゃないんだけどね……驚いたよね? ねえ聞いてる?」