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1.16 Miyuki Hasukawa(2027.4.12)

「ふぅ……」

 黒板に向かい板書を移す生徒、さらに授業スピードを上げていく担任教師、黒川。

 そんな中、軽く溜息をつく一人の女生徒がいた。

(夏樹君……どうしたのかな?)

 その女生徒は真紅の目、艶のある白い肌、ふんわりとした長い銀色のポニーテールを持っており、もし街を歩いていたら、十人中七、八人は振り向くだろう美しさを滲み出させていた。

「えー……WHO憲章によると、健康の定義は身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態であり……って、おーい。美雪ー。聞いているかー?」

 このクラスの黒川が銀色の髪の少女に問い掛ける。その声で、少女、蓮川美雪は現実へと戻された。

「は、はい。大丈夫です。気にしないでください」

「そうか?体調悪いなら言えよー」

 黒川はそうとだけ言うと、また板書を開始した。

 美雪はまた考えにふけり始める。

(なぜかは分からないけど、何でこんなに遅いんだろう……いつもならもう来ている時間なのに)

 ちなみに一つ補足をしておくが、美雪は夏樹とは高校に入ってからの始めての友達なのだ。心配してもおかしくはない。

 夏樹は朝に弱いタイプなので、よく寝坊しては遅刻をする。それでも黒川によって一時間目の終わりに学校に来ている。(本人曰く、わざと時間をずらしてこの時間に間に合わせているとのことらしいが)

 そんな夏樹が今日に限ってまだ来ていない。もう二時間目はとうに始まっているというのに。

(……何か、あったのかな?)

 美雪は最悪な事態を思い浮かべたが、すぐに心の奥にしまった。

 しかし、実際はそうなっていたのだ。

 


 コンコン、と扉を叩く音がした。その小さい音に、授業が一時中断する。

「はい?」

 返事をして黒川は扉を開けに向かうが、その手間はノックした人物によって省かれた。

「黒川先生」

 入ってきたのは、白髪にスーツの男性。美雪の記憶が正しければ、確か教頭先生だ。

「少しいいですか?」

「はーい。みんな、黒板写しておいてねー」

 そう言いながらすたすたと出て行く保健の教師黒川。

 クラスがざわめく。

 飛び交う変な噂。

 例えば、入学早々から特別指導とか、今話題の神隠しの被害者になったとか、そんな噂話が浮かんでは消え、浮かんでは消えていく。

 しかし、真実が伝えられる。

「えぇ――っ! 夏樹が、事故ぉ? しかも意思を取り戻さないだって?」

 響き渡る黒川の声。それと同時に、黒川があわてて教室に入ってくる。

「今から病院行ってくる! 残りの時間は自習しておいて!」

 クラスに沈黙が走った。


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