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1.12 Yuri Minakami(2027.4.12)

 日本。

 かつて栄華を極め、工業大国と言われていた国家の名前である。

 現在は、五年前――二〇二二年に起きた異常気象『コールド・アース』により、国土の殆どが凍結し、土地としての最低機能も保てなくなっていた。

 唯一、『コールド・アース』の影響を受けることの無かったナゴヤという名前の都市だけだった。

 始めは国内(ナゴヤだけになったが)は非常に混乱し、世界経済に与える打撃も大きかった。

 しかし、現在は景気も回復し、ナゴヤは日本国から独立し、都市国家『エデン』となった。

 エデンは、周囲の土地が陥没してしまい、擬似的な海上都市のようになっており、半径五十キロメートルの円形の国土を、北に工業や建築関係などの都市開発を行う工業区、西に高層ビル群と商業港がある商業区、東にサラリーマンや学生のマンション郡が立ち並ぶ居住区、南には自然開発や食料の生成を行う自然区、そして中央には立法機関、行政機関、司法機関の集まる執政区がある。

 水上みなかみ百合ゆりは、居住区の西南、エリア4にいた。水色の短い髪の毛を風になびかせ、白いエデン防衛庁のロングコートを着て、鈍い銀色のバイザーを首から下げ、虚空を見上げていた。見た目から判断すると、とても不思議な小学校高学年の女の子に見える。

「……」

 顔も中々かわいいというのに、持ち合わせている無表情と無口が、それを隠してしまっている。

 エデン防衛庁とは、基本的にEU、中華人民共和国からの侵攻を防衛するための国防組織である。

 ただし、もう一つ。隠蔽された事象を司る。

 白色の光が、灰色の大海を泳ぐ。

 すると、百合の短い髪が風に揺れる。百合が、コートを抑えた。

「……来た」

 百合の声がビルとビルとの間で響く。

 風が舞い上がり、漆黒の影に百合は隠される。

 すると、天から全長五メートルはあるだろう、巨大なカラスが舞い降りた。

 その漆黒の巨躯には、多くの傷が残され、歴戦の猛者を彷彿させた。

 百合はそれを避け、身構える。

 刹那、この空間が冷えた。

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