1.22 Miyuki Hasukawa(2027.4.13)
「はいはーい、席につけー。吉報だぞー。聞きたい奴は静かに!」
天霊高校一年四組の教室に、黒川の声が響き渡った。騒がしかった教室が、黒川から放たれた笑顔の殺気によって一斉に掻き消される。美雪はそのようなクラスの雰囲気を、まるで
「よし、それじゃあ話すぞ」
黒川から殺気が消える。その瞬間、美雪から溜息が漏れる。
殺気は人を疲れさせる。確かに、この落ち着きの無いクラスを支配するには手っ取り早い方法ではあるが、戦場でもないのに殺気を食らいたくはないのが殆どの生徒の心情だろう。
まあ、静かにしておけば食らうわけは無いのであるが。
黒川はにこやかに言葉を紡いだ。良いことでも合ったのだろうか、と美雪は心の中だけにその意見を抑えておく。
「今さっき病院から連絡が入ってな、夏樹が目覚めたそうだ。怪我も大したことは無く、明日から学校に来るらしいぞ」
「おー」というクラス中からの感動詞とともに拍手が沸いた。そして美雪はもう一度溜息。
「それで、連絡事項な。まず、最近は神隠しという誘拐事件が発生しています。用の無い生徒は速やかに帰宅するように。あと美雪、今日放課後生徒会室に集合。副会長が用事があるそうだ」
「はい。……って、え?」
美雪の疑問と同時に、チャイムが鳴り、級長の号令がかかった。
その場の雰囲気に任されつつ、挨拶を終えた美雪。しかし、美雪は困惑していた。
生徒会に呼ばれるようなことを、していないはず。困惑ばかりが頭をよぎり、結局一時間目が始まる前に結論に至ることは出来なかった。