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生きていく
8、生きていく
僕の家の前に到着した。
裕太と別れる際、バイバイより、「ありがとう」という言葉が自然と出た。
家まで送ってくれてありがとう。
裕太の考えを聞かせてくれてありがとう。
俺と友達になってくれてありがとう……
そしてバイバイを言って別れた。
次の日から裕太は大学に来なくなった。
僕は、また一人になった。
相変わらず、大学のキャンパス内を歩くときは人目を気にするし、人とのコミュニケーションは苦手だ。
不安になって、絶望することもある。
それでも、つらい日々の中にも、確かな手ごたえがある。
僕は生きている。
生きる理由、必ず幸せになる方法、不安をなくす方法なんて、分からない。
そんなこと分からなくていい。あやふやなままでいい。
分からないまま、僕は生きていくのだ。
幸せになれるといいな……。
僕も、裕太も……
そんな思いで胸がいっぱいになった。