8/11 魔王として。
わしは収録に遅刻しそうになり転移魔法を使った。
そして、恐れていた事が起きる。
そう、以前の世界に戻ってしまったのじゃ。
しかも勇者に敗北したあの直後に。
魔王に逃げられたとブツブツ言いながら魔王の玉座を背にする勇者。
そしてその勇者に向かって攻撃魔法を放とうとしている魔法使い。
剣を振りかざした剣士。
渾身の一撃を食らわせようと力を貯める格闘家。
わしはその様子を、再び玉座から眺める。
そして、わしは叫んだ。
勇者、危ない! と。
勇者は振り向き、自らの危機的状況に気付いて間一髪仲間の裏切りの一撃をかわす。
状況が飲み込めていない勇者。
焦る仲間達。
わしは激怒し、愚かな勇者の仲間たちに向け必殺の一撃を放つ。
倒れる勇者の仲間達。
それを呆然と見つめる勇者。
わしは勇者に説明をしてやるが、
信じられない。お前が洗脳したんだろ!
とわしに切りかかる勇者。
そして、わしは振り下ろされる剣を、敢えてこの身に受けた。
暗転する意識。
そして、気が付くとわしはメイドに膝枕をされていた。
悪い夢を見た。
最高な筈のそのシチュエーション。
心配するメイド。
わしはただただ、メイドに八つ当たりをして部屋を追い出した。
最低じゃ。
あんな悪夢如きでメイドに当たり散らすとは魔王失格である。
わしは今日
初めて仕事をドタキャンした。