6/14 メイドの解放。
明け方に続き、事の顛末を記していく。
ハーフであるメイドに神の末裔としての時空移動等の力はほぼ無い。
短距離、短時間のみならば行使可能らしく、どこからともなくお茶が出て来たりするのはこの力によるものであろう。
それ以外はただただ強力な身体能力と魔法に対する耐性。どちらかというと性質は人間の方に近いらしい。
寿命は長いらしく、驚くべき事に既に100歳を超えているのだとか。
わしとそこまで変わらんではないか。
わしは、何故わしのメイドになったのかを聞いてみた。
すると、この城の主は別の世界からの強大な力の移動を感知したらしい。それはわしの事であろう。
そして、自分の孫娘にあたるメイドにわしの監視と調査を命令した。
メイドがわしの傍に居てくれたのは祖父からの命令だったから、であった。
何故だか、ひどく納得してしもうた。
メイドはきっと何か理由があってわしと一緒にいるのだと、そうどこかで予感していた。
メイドは祖父のしもべとしての契約をさせられていて、どんな命令でも聞かねばならない。
わしと一緒に居るようになり、最初のうちはきちんと報告をしていたが、やがて嘘の報告をするようになった。
まだ監視が必要だ、と。
わしが危険かもしれないという事実がある以上監視をつけておく理由が生まれる。
つまり、メイドは自らの意思でわしと共に居てくれようとしたのじゃ。
わしはつい涙がでてしまった。
メイドの本心を知れて涙腺を堪えきれなかった。
あの大会の事は祖父の耳にも入ってしまい、わしよりもメイドの方が強いという事実が公になってしまったため、これ以上わしの事を警戒する必要は無い、という判断が下されたらしい。
それで突然戻ってこいという命令を受け、どうする事も出来ず出て行った。
別れを告げなかったのは、なんとかして戻るつもりがあったかららしいが、どうやら祖父の意思は固いらしい。
彼らには記憶を読み取る呪法があるそうで、わしらと過ごした時間は全て筒抜けになった。そして、猫の事も。
彼女の祖父は管理者に気付かれてしまうのを酷く警戒しており、近々この世界を捨て新天地へ移動するつもりだったらしい。
その為、戻るよう命令を受け、帰らざるを得なくなり、翌日にはアレである。
だから頑なに一人で行きたい場所があるとか言っていたのじゃった。
わしはメイドに帰ってくるよう伝えたが、戻りたいがそれは出来ないという。
何故なら、そう命令されているから。
そして確かこのあたりのタイミングだったか、メイドの祖父、そして祖母が現れて戦闘になった。
メイドは泣きながらやめてくれと叫んでいたが聞く耳を持たない。
祖母の方は祖父のいいなりという感じで、戦闘はほぼ祖父だけを相手にする形だった。
それはそれはとんでも無い強さであったが、こちらも神の力を手に入れている。
猫に協力してもらい一瞬相手を結界に閉じ込め、その瞬間にわしは異空間にしまっておいた聖剣を取り出し切りつけた。
これはティナがこの世界にやってくる時に持っていたものである。
魔を祓う聖なる剣。それは男の半身を切り裂き、そしてメイドとの主従の呪法すらも断ち切った。
どうやらこの時彼は時間操作も使おうとしたらしいが、猫に阻止されタイミングが遅れた上に聖剣にてその力すら切り裂かれたのだとか。
さすが勇者の剣じゃ。
わしが勇者に負けたのも頷ける。うん、この剣が凄かったんじゃな!
自由になったメイドは、それでも祖父を殺さないでほしいと言うのでわしはそれ以上の攻撃はしなかった。
猫が言うにはそれくらい放っておけば自然治癒するとの事。
男は、悪態をつきながらも負けを認め、メイドに対し
好きにしろと言い、これでメイドは完全に解放された。
猫は男たちに安全に暮らせる場所を提案し、彼等はそれを呑んで後日そちらへ行く事になった。
勿論メイドはわしが連れて帰る。
当然であろう?
ここから先はまだ書くのが恥ずかしいので明日に回す。
完結まで残り二話。
次回、ついに……。