6/10 トランシルヴァニアの森。
昨夜遅くにトランシルヴァニアに到着。
この世界にこのような場所があることに驚いた。
まるでわしが以前居た世界の街並みのようである。
ここまで来たはいい物の、情報提供者が写真を撮った場所まで行ってみたところでそこにメイドが居るわけでもない。
ここからどうやってメイドの足跡を辿るべきか思案し、とにかく周囲に聞き込みをする事にした。
すると複数の目撃証言があり、どうやら近くの森の方へ向かったという。
しかし、そこには何も無い。人がわざわざ行くような場所ではないとの事。
念の為、通訳を街に残し、わしも森へ行ってみたが……何の変哲もない森である。
起伏は緩やかじゃが木々が鬱蒼と生い茂っており、視界は悪い。
確かにメイドが行くような場所があるとも思えない。
しばらく散策して街まで戻ってきたが……その途中である物を見つけた。
森の中で一点、微かに差し込む木漏れ日に反射する光があり、森の中に不自然な……と思いつつ近寄ると、そこにはわしがメイドにねだられて買ってやったアクセサリーの一部が落ちていた。
僥倖である。
深い森の中これを見つけられる確率は如何なるものか。
実を言うとわしはこれが何なのか気付かず街まで持って帰っていた。
通訳が、それはリングだと言うので、こちらで売っているものか聞くと、ネット検索をしてくれた。
リングに掘られた文字から日本の会社で作られたものと分かり、わしはここまできてようやくあの時のアクセサリーだと気付いた。
わしが買ってやったのはネックレスだったので、このリングとは結びつかなかったのじゃ。
だとしたらどうして、チェーンに通されていたリングだけが落ちていたのであろう?
とにかく、これでここにメイドが来たことは確定した。
これを記した後、もう一度森へ行ってみようと思う。
完結まであと6日。