5/2 一抹の不安。
今日はヒナと一緒にケル子の散歩。
最近は家族とこうやってのんびり過ごす時間が取れているのが嬉しい。
世間は何かと騒がしい日々が続いているがそれはそれ、これはこれである。
ヒナはやはりいつものように宙にぷかぷか浮かびながらケル子のリードを持って散歩をする。
魔王の娘トライの人気故にヒナ単体でもサインをせがまれたりする事もあるが、あからさまに幽霊な所が多少人を遠ざけているようにも思う。
そもそも幽霊なのに当たり前のようにこの世になじんでいるし、人々ももう慣れてしまったというのが恐ろしい所じゃ。
あっちの世界では死霊など意思もぼやけて暴れる事しかできないというのに、ヒナは随分と自我を保っていてまったく人間と変わらぬ。
同じ年齢の子供と比べると少々幼過ぎるようにも思うが、逆に他所の子供よりも大人びていると思う事もある。
生まれた時代による物なのか、基本的に我儘は言わないしわめいたりもしない。
空気も読める。……ある程度は。
見た目が成長する事はないじゃろうが精神は毎日成長しているように思う。
場合によってはうちの家族の中で一番長い付き合いになる可能性すらある。
そうじゃ、わしは魔王。人とは寿命が違う。
ティナもメイドも人間じゃ。
おそらくどんどん成長していき、わしらよりも先に……。
……あぁ、そう言えばロッテは魔族であったか。
やめじゃ。そんな先の事を考えて憂鬱になってどうする。
しかし、実際問題あとどのくらい今の生活を続けていけるのであろうか。