表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

目覚めと約束



 人様を巻き込んだ壮大なラブロマンス、というのは、大泣きするスラシルを見たヴェルンドの言葉であった。まさにその通り、と彼と被害者の会を結成しようかと考えていたイズンは、笑いながら大きく頷いた。


 リーヴは自分の気持ちに気づくのが遅過ぎたのだ。違う相手を抱いてから気づく恋物語など、とんでもない話である。救いだったのは、その体だけは想い人であったことだ。それにスラシルには、行為に及ぶ機能がまだなかった。イズンの中であの夜は、未遂として片づけられている。正直、自分が舞い上がってしまっていたことも否めなかった。恥ずかしさは、どちらかというと自分の浅はかさにある。


「やっぱり、体と心がばらばらなんてアンバランスね。こんなややこしいことになってしまうなんて」


 サイバー空間へと戻ったイズンは、モニター越しにリーヴとスラシルを見つめながら呟いた。リーヴと触れ合えたことに舞い上がってしまったのは、自分が長らく己の肉体を離れていたせいだ。結果的には丸く収まったものの、リーヴとスラシルのすれ違いを加速させたのも、スラシルとイズンが入れ替わってしまったせいである。


「俺はまっぴらごめんだね」


 肉体と精神は同じところにあるもんだ、とヴェルンドは肩を竦めた。イズンは、私もそう思っていたはずなのに、とくすくす笑った。やはり、心は体を離れてはいけないのだ。


「私も早く、目覚めなきゃ」


 夢心地であった恋も冷めたところで、イズンは目を覚まさなければならない。人類の地上帰還は間もなくである。きちんと自分の体で、リーヴとスラシルに会いたかった。


 ようやく洗浄用水を排出するのをやめたスラシルの瞳は、綺麗に洗われていた。澄み渡る薄荷の瞳が、もう手の届かない場所にあるのだと思うと、少しだけ寂しいような気もする。



「イズン、ありがとう。それから、ごめんね」

「ううん、いいの」



 簡素な言葉を交わした。本当はこちらも感謝と謝罪を伝えたかったのだが、あまり良い台詞が浮かんでこなかったのだ。これではリーヴのことを笑えない。けれどこれだけは伝えなくては、とイズンは微笑んだ。


「私、あなたのことをとても素敵な人だと思うわ」


 だから幸せになって、と。スラシルは驚いたように目を丸めて、それからくしゃりと破顔した。





 人類は新たな安息の地、ユグドラシルの大地に立つ。半世紀の夢をさ迷った少女は、澄んだ青空を彷彿とさせる瞳を輝かせ、ブロンドの髪を揺らした。


 彼女は二人の友人と、その身体を持って会う約束をしている。




(完)


 タイトルの読めないこのお話、完結です(笑)

途中、スラシルのスノードームのくだりで登場した歌の歌詞が、一応タイトルの意味となっております。フランス語の授業で先生がお話されていた小ネタだったのですが、気に入ってタイトルに…。間違っていないか、ちょっぴり不安です( ̄▽ ̄;)

 リーヴとスラシルのような二人組が好きなのですが、今回はそこにイズンという天真爛漫な少女が介入し…人とロボットだからこそ起きたややこしい恋の話になったかな、と個人的にはお気に入りの作品となっています!


少し長めのお話でしたが、最後までお付き合いくださり、ありがとうございました!

ご意見・ご感想等いただけると大変励みになります…(uωu*)

年明けに、また何か短編を掲載できたらよいなと思っております。

それでは、よいお年をー!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ