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エピローグ ~キミが夜になるために~

 かくして私は短編小説の皮をかぶった、いわば気付(きつ)(やく)を書いている。昼間この原稿を持ち歩き、幻想に埋没(まいぼつ)しつつあるときには自然に(ページ)()り、目は行間を走り、脳は文字を吸引するようになるだろう。一読で私は夜になる。目に見えない仮面をかぶる。


 いずれ昼は食い尽くされ、思い出す事すらなくなるだろう。自分自身の核がいったいどこにあるのか。そんな自意識すら些事(さじ)になる。


『変身』の主人公、グレゴールは致命傷を負って絶命する。半死半生の彼は、虫となった自分の死に安らぎを感じつつ息を引き取るのだ。


 私や壬生(みぶ)がどのような顛末(てんまつ)を辿るのかは分からない。ひとつはっきりしているのは、死の間際(まぎわ)に変身前のことを思い出すことすらあるまいということだ。

 変身した事実さえ忘れ去ってしまえば、私は完全になる。いつしかこの(さく)も不要になるだろう。




 さて、キミにはひとつお願いがある。ここまで読んだのだからもう理解しているだろう。

 喜劇も悲劇も終わりだ。目を覚ませ。夜になれ。




 了

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