年越しパーティー(前編)
ヴォルザード家の大晦日、我が家は沢山のお客さんをお迎えしている。
まずは、クラウスさん一家。
領主の館で新年を迎えなくて良いのですかと訊ねたら、どこに居ようが新年は来ると、いかにもクラウスさんな答えが返ってきた。
マリアンヌさん、アンジェお姉ちゃん、勿論、アウグストの兄貴も一緒だ。
年越しの料理の準備とかは、クラウスさんのお屋敷の料理人さんや使用人さんにも手伝っていただきました。
年越しの準備が終わったところで、料理人さんや使用人さんたちにも休みに入ってもらいました。
クラウスさんのお屋敷で働いていらっしゃる方で、家庭をお持ちの人は自宅で新年を迎えるそうです。
それ以外の皆さんには、我が家の年越しパーティーに参加してもらいました。
続いてのお客さんは、アマンダさんとメイサちゃん。
ヴォルザードでの僕の大切な家族ですから、勿論招待していますよ。
マノンの母親ノエラさんと、弟のハミルも招待しています。
我が家のパーティーは女子率が高いので、ハミルなんてお姉さんたちに可愛がってもらえそうですが、変に意地を張って馴染めていない感じですね。
唯香の父、唯生さんと奥さんの美香さんにも来てもらいました。
今年はアウグストの兄貴がいますが、クラウスさんの相手を僕だけで務めるのはなかなか大変ですから、唯生さんに来てもらえたのは助かりました。
僕の父親は、一応声を掛けたのですが、仕事が忙しいそうで今回は来ていません。
欠席するための言い訳ではなく、本当に仕事が立て込んでいるようです。
父さんは、以前の会社を辞めた後、今は復興事業に関連した仕事をやっているそうです。
例の地球を滅亡させるかもしれなかった隕石の欠片が地球に降り注いだ件で、日本も各地で大きな被害が出たそうです。
ただ、原子力発電所とかダムとか、直撃したらヤバい場所には落ちなかったようで、復興は順調に進んでいるようです。
日本政府からは全く連絡がありませんし、僕への報酬は有耶無耶にされそうな気がします。
あちこちに被害が出たのも僕のせいにされそうになった事もあったようですが、天文学者さんが何もしなかったら地球は終わっていたという論文を次々に発表したので、一部の人からは救世主などと呼ばれているようです。
あんまり持ち上げられるのも怖いですし、カルトの教祖とか絶対に嫌なので、今は地球にはあまり行かないようにしています。
まぁ、そんな事よりも、今は年越しのパーティーですよ。
「それでは、年越しのパーティーを始めたいと思います。本年も、ありがとうございました。来る新しい年が、皆様にとって素晴らしい年でありますようにお祈りして……乾杯!」
柄にも無く挨拶なんかして始まったパーティーの主役は、僕じゃなくてコウタです。
いやぁ、うちの子マジ天使ですからねぇ……。
「どうです、アマンダさん、うちのコウタは母親に似て可愛いでしょう」
「はははは……そこで僕に似てと言わないのがケントらしいね」
「だって、マノンに似た方が絶対に可愛いですからね。今から女の子を泣かせないか心配ですよ」
「父親に似て気の多い子に育ったら心配だねぇ」
「いやいや、僕はみんな本気ですから、浮気はしませんよ」
「こんなに良い嫁が五人も居て、浮気なんかしたら罰が当たるよ」
「ですよねぇ……痛っ、なんでメイサちゃんが抓るのさ」
「んー……何となく、ケントのくせに生意気だから……」
ちゃんとお嫁さんを大切にして、浮気はしないと言ってるのに、抓られる意味が分かりません。
まぁ、メイサちゃんは、まだまだお子ちゃまってことなんでしょう。
お子ちゃまと言えば、姉のマノンが産んだ子なのに、ハミルは全然興味無さそうですよねぇ。
ここは義理の兄として、ちょっと言ってやった方が良さそうですね。
「やぁ、ハミル、コウタを見に行かないのかい?」
「別に……興味無いし……」
「でも、お姉さんが産んだ子供だよ」
「別に……ただの赤ん坊だし……」
「えっ、ハミルにとっては甥っ子、コウタから見たら叔父さんになるんだよ」
「叔父さん言うな! そんな歳じゃない!」
ハミルはプンスコ怒って、料理を取りに行っちゃいました。
なるほど、ハミルの歳でおじさんって言われるのは辛いか。
これは、ちょっと聞いておいた方が良いのかな。
「ねぇねぇ、美緒ちゃん」
「なに? お兄ちゃん」
そうなんですよ、いつの間にか、美緒ちゃんからはお兄ちゃんって呼ばれるようになってるんです。
メイサちゃんも、フィーデリアも妹だと思っているんですけど、僕をお兄ちゃんと呼ぶのは美緒ちゃんだけなんですよねぇ。
「来年は、唯香も子供を産むんだけどさ……」
「今からスッゴク楽しみ」
「それで、唯香に子供が出来ると、美緒ちゃんは叔母さんになるんだけど……」
「嫌ぁぁぁ! 私はお姉ちゃんって呼んでもらうから、美緒姉ちゃんって呼ばせるんだから」
「分かった、了解……それでいいから」
やっぱり、僕よりも若い年代が、オジサンとかオバサンって呼ばれるのは抵抗があるみたいだねぇ。
仕方ないから、ハミルのことも、ハミルお兄ちゃんと呼ばせてやりましょうかね。
「おい、ケント! 客をほったらかしにしてないで、こっち来て飲め!」
おっと、早い時間から絡まれないように、上手く立ち回っていたつもりだったのに、クラウスさんに捕捉されてしまいました。
クラウスさんの傍らには、既にご機嫌な様子の唯生さんの姿もあります。
「さぁさぁ、新米パパの健人君、一杯いこうじゃないか」
「はい、いただきます。来年はお爺ちゃんになる唯生さん」
「ぐぉぉ……お爺ちゃん……」
おっと、お爺ちゃんの一言は思ったよりも唯生さんのHPをゴッソリ削ったみたいです。
「け、健人君、そのお爺ちゃんというのは、まだ言わないでくれるかな。私はまだ四十代の前半なんで……」
「すみません、そんなにショックだとは思わず……でも、たぶん僕は三十代でお爺ちゃんになると思いますよ」
ヴォルザードでは、十五歳で学校を卒業したら即結婚して家庭を持つ人も珍しくない。
家庭を持つような関係だから、当然深い関係になっていて、でき婚の場合も少なくないそうだ。
「そうだぞ、タダオの歳で孫が居るなんて、ヴォルザードでは珍しくもなんともないぞ」
「そうなのか、クラウス。そうか、郷に入っては郷に従えか……」
「ケントも言ってるように、あと二十年もしないうちに、タダオはひい爺さんだからな」
「ひい爺さん……想像もつかん」
「考えても分からんことなんか考えてないで、飲め飲め」
「そうだな、飲まないとやってられん、ほら、健人君も……」
「はい、いただきます」
うん、今夜のお酒は長くなりそうですね。
まぁ、僕の場合は自己治癒という切り札があるから大丈夫ですけどね。
「そう言えば、クラウスさん、アンジェお姉ちゃんの縁談はどうするんですか?」
「ぶほぉ! げほっ、げっほっ……」
「あーあー、せっかく良いお酒を用意したんだから、床に飲ませないでくださいよ」
「お前が余計なことを言うからだろうが!」
「んで、どうするんですか?」
「はぁ……来年輿入れさせる。けど、まだ発表すんなよ」
「どのタイミングで発表するんですか?」
「ディートヘルムの戴冠式が終わってからだ」
そのタイミングで発表するということは、まだリーゼンブルグ王国内がゴタゴタしているんでしょうか。
「その辺りは、お前の嫁に聞いた方が早いだろう」
「まぁ、そうなんですけどね」
バルシャニアとヴォルザードは、リーゼンブルグ王国の西と東に位置します。
両者が婚姻関係を結ぶということは、リーゼンブルグの動きを牽制する意味合いを持ちます。
まぁ、現状はバルシャニアもリーゼンブルグも僕の身内なので、戦争になるなんて考えていませんが、僕らの次の世代ではどうなるか分かりません。
これは、未来を見据えた縁談という意味合いもあるのでしょう。
その辺り、もうちょっと突っ込んで聞かせてもらおうじゃありませんか。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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うん、エッチだ……
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