夜の自宅警備員
※今回はネロ目線の話になります。
家の中が、いつもよりも騒がしいにゃ。
なんでも、新しい年が来るそうにゃ。
どこから来るのか分からないし、新しい年なるものも見たことが無いが、ご主人様に害をなす物ではないらしいから、ネロの出番は無いようにゃ。
季節はすっかり冬になり、昼間は天気の良い日以外は外に出るのが億劫……じゃなくて、家の中の警備が忙しくなっているにゃ。
でも天気の良い日は陽だまり……じゃなくて、見晴らしの良い場所から家を守っているにゃ。
レビンとトレノも一緒に日向ぼっこ……じゃなくて、警備に励むようになっているが、日当たりのせいではなくて、戦力の集中というか連絡を密にするというか色々あるのにゃ。
家の外で警備をしていると、時々ふらっとご主人様が現れるにゃ。
「ネロ、お腹貸して……」
「ネロは警備で忙しいけど、ご主人様の頼みとあらば仕方ないにゃ」
「うん、ごめんねぇ……あぁ、ふかふか……」
当然にゃ、ご主人様のためにヘソ天で仕上げておいたから、ふっかふかにゃ。
「ご主人様は働きすぎにゃ」
「うん……でも、穴ウサギを使って悪さする連中がいてね。もう片付いたから大丈夫」
ご主人様は、隣の国まで足を延ばして、色々と仕事をしているそうにゃ。
ご主人様が居ない間、家を守るのはネロの仕事にゃ。
「ネロ、年末年始は、お客さんがたくさん来るから騒がしくなるけど、よろしくね」
「任せるにゃ、ネロに任せておけば、心配は要らないにゃ」
「うん、ありがとう……」
ご主人様は、後から出て来たミルトを抱え、マルトとムルトに挟まれて、ちょっと眠ったと思ったらむくっと起き上がって仕事に戻っていったにゃ。
ご主人様は、子供も生まれて、子育ても忙しいみたいにゃ。
ネロみたいにノンビリ……じゃなくて、一つの仕事に専念できれば楽なのににゃ。
昼間は賑やかな家も、夜には静けさを取り戻すにゃ。
用事の無いコボルト隊も戻ってきて、巣穴や家のあちこちで丸くなって眠っているにゃ。
眠っているけど耳は起きていて、家族の誰かがトイレに起きたりすると、むくっと起きて様子を確かめているにゃ。
この時間は、ちょっとネロが家を空けても大丈夫にゃ。
「ネロ、今夜も行くみゃぁ」
家の屋根の上で、ぐぐっと伸びをしていると、レビンが話しかけてきたにゃ。
「当然にゃ、ネロはまだまだ強くなるにゃ」
「じゃあ、一緒に行くみゃん」
するりとトレノも姿を現したにゃ。
空の上には、細い月が浮かんでいるだけで、狩りには悪くない天気にゃ。
屋根から城壁へと飛び移り、城壁から旅人が消えた街道へと飛び降りて走りだす。
足音一つ立てず、気流を操り風さえも乱さないにゃ。
ネロの後ろに続くレビンとトレノの足音が聞こえてくるにゃ。
レビンとトレノは、ネロみたいに風の魔法は使えないから、足音を忍ばせても気流は操れない。
でも、森を進んだところで、レビンとトレノは一気に速度を上げる。
レビンとトレノの体がピカっと光ると、ドーンという音を残して遥か彼方へ一瞬で移動したにゃ。
その光を目掛けて、ネロも速度を引き上げるにゃ。
ネロは雷の魔法は使えにゃい……でも、風の魔法を全開にして、少しでも追いつけるように工夫を重ねたにゃ。
ネロが速度を上げるのを邪魔しているのは空気の壁にゃ。
だから風の魔法で邪魔な空気をどかして、ネロ自身が風になって飛ぶと、これまでの何倍も早く飛べるようになったにゃ。
レビンとトレノに、殆ど遅れを取らずに南の大陸まで飛んで来られたにゃ。
「ネロ、何を狩るみゃぁ」
「岩トカゲにゃ」
「あいつは硬いみゃん」
「硬いから倒し甲斐があるにゃ」
岩トカゲは、土の魔法をつかうトカゲで、土の魔法で作った鋭く尖った岩の鎧を着ているにゃ。
トレノが言うように凄く硬くて、ただ風の魔法では弾かれてしまうにゃ。
レビンとトレノが使う雷の魔法も、岩の鎧を伝って地面に逃がされてしまうにゃ。
普通だったら、ネロたちが狙う相手ではないけれど、苦手を克服しないと強くなれないにゃ。
岩トカゲは、南の大陸の西の岩場と草原の境目あたりに暮らしているにゃ。
夜行性で、ゴブリンとかを狙って食べるから、今の時間は動きまわっているはずにゃ。
空の上から探していると、草原を移動する岩トカゲを見つけたにゃ。
守りが硬い分だけ動きは遅くて、上から見ているとネロたちの倍ぐらいの大きさの岩山が、ゆっくりと移動しているように見えるにゃ。
「レビンの攻撃は通じないみゃぁ」
「トレノの攻撃も通じないみゃん」
「倒すのはネロがやるにゃ、レビンとトレノは動き回って気を引き付けるだけでいいにゃ」
岩トカゲは岩の鎧の間から、薄くて鋭い岩を飛ばして来るにゃ。
ゴブリンやオークは避けきれず、負傷して動けなくなったところを襲われて食べられてしまうにゃ。
でも、ネロたちは動きが速いから、岩トカゲの攻撃は余裕を持って避けられるにゃ。
「じゃあ、始めるにゃ」
バリバリっという音を残して、レビンとトレノが岩トカゲの前に降り立ったにゃ。
それを見た岩トカゲは、頭を下げて岩を逆立たせ、鋭く薄い岩を飛ばしてきたにゃ。
薄い岩によって草が薙ぎ払われたけど、レビンとトレノはバリバリっという音を残して姿を消して岩を避けたにゃ。
「今度はネロの番にゃ、ふっしゃぁぁぁぁ!」
空から駆け下りながら、風の爪による切り裂き攻撃を叩きつけたにゃ。
「グォォォォォ!」
衝撃を感じた岩トカゲが吠えたけど、ネロの攻撃は岩の鎧の表面を削った程度で、ダメージは殆ど通っていにゃい。
「ふっしゃぁぁぁぁ!」
「グォォォォ!」
真正面に降り立って威嚇すると、岩トカゲはネロ目掛けて薄い岩を飛ばしてきたが、そんな攻撃に当たるほどノロマではないにゃ。
レビンとトレノと連携して、威嚇と離脱を繰り返すと、だんだん岩トカゲの鎧が小さくなってきたにゃ。
岩トカゲの飛ばして来る岩は、岩の鎧から剥がして飛ばしてくるようで、飛ばせば飛ばすほど鎧が痩せていくにゃ。
そして、ネロの攻撃も、鋭く、硬く、丈夫になるように強度を上げていったにゃ。
ご主人様が、ネロのお腹に寄りかかりながら言ってたにゃ。
硬いだけじゃ駄目で、撓らないといけないみたいにゃ。
風の硬め方を変えて、速度を上げ、硬い鎧を切り裂いて、岩トカゲの本体も切り裂くように風の刃を振るうにゃ。
「ふっしゃぁぁぁぁぁ!」
「グェェェェ……」
岩の鎧が割れて、岩トカゲから鮮血が噴き出したにゃ。
これにゃ、これが岩をも切り裂くネロの爪にゃ。
「ふっしゃぁぁぁぁ!」
二回、三回、四回と風の爪で切り裂いて、岩トカゲが血まみれになったらレビンとトレノの出番にゃ。
「今にゃ、雷の魔法を撃ちこむにゃ」
「分かったみゃぁ」
「任せるみゃん」
ピカっとレビンとトレノが光った直後、岩トカゲ目掛けて稲妻が降り注いだにゃ。
岩トカゲはブスブスと白い煙を上げ、ネロが風の刃で斬りつけても、ピクリとも動かなくなったにゃ。
「やっつけたにゃ」
「ネロの爪は凄いみゃぁ」
「岩トカゲの鎧も切り裂いたみゃん」
「まぁ、ざっとこんなもんにゃ」
この後、岩トカゲの鎧をバリバリと剥がして、お腹を切り裂いて魔石を取り出して、影の空間の保管庫に放り込んでおいたにゃ。
さて、夜明けまでには、まだ時間があるにゃ。
もう一狩りしていくにゃ。





