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ハズレ判定から始まったチート魔術士生活  作者: 篠浦 知螺


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ヴォルザードへの報告

 パーンという乾いた音が響いた直後、三十メートルほど先に設置された木製の的が弾け飛びました。

 音の発生源はエルマネア製の魔筒で、構えているのはクラウスさんです。


 ここはヴォルザード守備隊の敷地内にある、攻撃魔法の訓練場です。

 魔筒の性能を確かめてもらうために、実物を試射してもらったのです。


「なるほどな、これなら魔力の少ない人間でも、安定して攻撃を続けられるって訳だ」

「そうです。その代わり、弾丸が無くなればただの鉄の筒になっちゃいますけどね」

「カルツ、撃ってみろ」

「良いんですか?」

「構わないだろう、ケント」

「はい、どうぞ」


 魔筒の試射には、カルツさんも参加しています。

 撃ち方については、クラウスさんに説明した時に聞いていたので大丈夫でしょう。


 カルツさんは弓矢の心得もあるそうなので、魔筒を構える姿も堂に入ってます。

 ところが、カルツさんが引き金を引いても弾は発射されませんでした。


「カルツ、弾を送らないと撃てないぞ」

「そうでした。すみません、もう一度」


 エルマネア製の魔筒は、リボルバータイプの連発式ですが、撃鉄を起こしても自動でシリンダーは回転しないので、自分で回す必要があります。

 カルツさんは、もう一度撃鉄を起こし、シリンダーを回して次弾を装填しました。


 今度はパーンという銃声が響き、見事に的に命中しました。


「結構な反動があるのですね」

「そりゃそうだろう、あれだけの勢いで弾を撃ち出すんだからな」

「反動はありますが、あの威力で魔力を全く使わないというのは驚きですね」

「確かにな、これだけの武器を大量に揃えたら、そりゃあ隣の国に攻め込んでやろうとか考えるだろうな」


 エルマネアの国王がキリアやヨーゲセンに攻め込んだ理由は、自分の才能を大臣どもに認めさせるためだったようですが、突如として大きな力を手に入れれば、考えが変わってしまうのは無理もないでしょう。


「ケント、ニホンにも同じ様な……いや、もっと優れた武器があるが、所持や使用には厳しい制限が付いているんだったな?」

「はい、日本では、自衛のための軍備と警察、それと狩猟や競技のために免許を取得した個人しか所有や使用は認められていません」

「無許可で所有している奴は居ないのか?」

「反社会的な組織の人間が所持しているみたいですが、勿論違法ですし、発見されれば検挙されます」

「お前は、ヴォルザード……ランズヘルト共和国では、日本と同様に厳しい制限を付けたいんだな?」

「そうです。一度世の中に出回れば、急速な改良が行われ、威力も格段に向上していくはずです。当然、殺傷能力も上がりますし、野放しにすれば必ずや犯罪に利用されるようになります」


 クラウスさんには、厳しい規制がある日本と、規制の緩いアメリカの現状を伝えて、魔物対策などに魔筒を役立ててもらいたいので、提供する代わりに規制を設けてほしいと頼んだのです。

 ヴォルザードと南の大陸は陸続きではなくなりましたが、魔物の極大発生が絶対に起こらないとは言い切れません。


 オークやオーガ、ロックオーガのような魔物が大挙して押し寄せてきた場合、従来の魔術による迎撃に、魔筒による攻撃が加われば、防衛力は確実にアップするはずです。

 僕が元気なうちは、眷属のみんなと共にヴォルザードを守るつもりですが、僕は不死身じゃありませんから、かならずや命が尽きる時が来ます。


 僕や眷属のみんなが居なくなっても、ヴォルザードが魔物に怯えないで済むように、クラウスさんに魔筒の提供を打診したのです。


「この他に、ギガースを倒せる大魔筒もあるんだよな?」

「はい、そちらはもっと威力が高いので、ここで試射するのは難しいです」

「分かった、いずれ実際に威力を見せてもらうが、今は規制の策定が先決だな」


 今日の試射はここまでと言われたので、一旦魔筒は回収して影の空間に仕舞い込みました。


「カルツ、持ち場に戻っていいぞ、いずれまた意見を聞かせてもらうから、そのつもりでいてくれ」

「了解です!」


 カルツさんは、ビシっと敬礼すると、持ち場に戻っていきました。


「さてと……どこで話をするか」

「クラウスさん、うちに来ます?」

「チキュウの魔筒の資料も見れるか?」

「はい、大丈夫ですよ」

「よし、お前の家で資料を見ながら、魔筒の規制について意見を聞かせてくれ」

「分かりました。では、行きましょう」


 動画サイトを探せば、最先端の銃やライフル、機関銃などの映像が見つかるでしょう。

 僕の自宅へ場所を移すと、クラウスさんは早速銃やライフルなどの映像を要求してきました。


 ハンドガンから、ライフル、散弾銃、マシンガン、アンチマテリアルライフル、迫撃砲、無反動砲、ロケットランチャーなどを見せ、最後にバルカン砲の映像を見せると驚いていました。


「何だこりゃ、いったい何発撃ってんだよ」

「一秒間に約百発ですね」

「一秒で百発だと! なんだそりゃ……この鉄、捨てちまうのかよ!」


 船や飛行機から発射されるバルカン砲によって、猛烈な勢いでバラ撒かれる薬莢を見て、クラウスさんは心底勿体無いという顔をしています。

 ヴォルザードでも鉄は普通に使われていますが、捨ててしまえるほど潤沢ではありませんからね。


「弾が飛んで行っちまうのは仕方ねぇけどよぉ……いや、戦っている時に、そんな物を拾い集めている暇なんかねぇのか」

「そうですね、戦闘中は薬莢を拾って再利用しようなんて考えてはいられませんね」

「魔術に較べて威力が安定しているし、発動までの時間も短い。弾が無くなったとしても、魔力切れみたいに動けなくなったりしないのは良いが、金は掛かるな」


 クラウスさんは、頭の中で銃器を使った戦いのコストを計算しているようです。


「こんな、一秒間に何発も撃っちまう武器は、今のヴォルザードで現実的じゃねぇな。それよりも、威力が高く、命中精度も良い物を使って一発で仕留めるやり方が、現状では一番良いな」


 クラウスさん的には、アンチマテリアルライフルが一番気に入ったようです。

 確かに、威力が高く、命中精度も良い物であれば、弾丸を節約できますし、魔術では討伐が難しい相手に対して効果がありそうです。


「ケント、この兵器は魔石ではなく爆材が使われているんだよな?」

「そうです、地球には魔素が存在していませんから、魔石が手に入りません。銃器は全て爆材、火薬を使った弾丸を使用しています」

「エルマネアでは、庶民が暮らしに使う魔石が足りなくなってたんだよな?」

「そうみたいです。魔筒の弾丸を大量に作るには、大量の魔石が必要になりますからね」

「だとしたら、爆材の研究も進めないと駄目ってことか、面倒くせぇなぁ」

「たぶん、爆材を作ったキリアなら、爆材を使った弾丸の製作を進める気がします」

「だろうな、まぁいい、どちらも研究させて実用化に漕ぎ付けるまでだ」


 銃に関する規制は、Bランク以上の冒険者に限定し、犯罪に使った者には重い罰を与える事を基本線として、細部を詰めていくそうです。


「まったく、エルマネアの野郎ども、面倒な物を作りやがって、やってらんねぇな、ケント、もう仕事は終わりだ」

「えっ、まだ日が高いですよ」

「お前、固い事言ってんな」

「はぁ、仕方ないですねぇ」


 結局、クラウスさんと酒盛りすることになって、ギルドから戻ってきたベアトリーチェに二人揃ってお説教を食らいましたとさ。


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― 新着の感想 ―
寿命尽きてもゾンビになって復活しそう 眷属がアンデッドなんだから本人もアンデッドになるよねきっと
首を切り落とされかけても回復するからケント死ぬかな・・・ 不老になっててもおかしくないほどの回復力だぞw
銃の出現は、在留少年少女には衝撃だろうなぁ。 でも、生活に関わっていなかったから、微妙な反応になりそう。
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