アクシデント
クラウスさんとベアトリーチェ、それにアンジェお姉ちゃんと昼食を済ませた後は、ムルトに見張りを頼んで裏帳簿のコピーを進めました。
裏帳簿を柱の中に隠そうとも、影を通って侵入できる僕らにとっては、鍵のかかっていない戸棚から物を出すようなものです。
ボレントも経理担当のシラーも、裏帳簿を使用するのは夜間の特定の時間に限られるようで、昼間は邪魔も入らずに作業を進められました。
土属性魔術を使えば、柱の表面を崩したり元に戻したり出来ますが、それなりに時間も手間も掛かるから、頻繁には取り出さないのでしょう。
裏帳簿を取り出すのは簡単でしたが、コピーを取る作業には少々時間が掛かりました。
帳簿は全部で五冊、そのうちの一冊は昨夜のうちにコピーしましたが、残り四冊の厚い帳簿をコピーするのは地道な作業です。
それでも、手書きではなくコピー機を使用しているのだから、まだ楽なのでしょう。
「梶川さん、ありがとうございました。おかげで全部コピーできましたし、データへの変換も済ませられて助かりました」
「Sランク冒険者にして凄腕税務調査官とは、国分君のマルチな才能には驚かされるばかりだよ」
「いえいえ、たまたま闇属性の魔術が潜入調査に使えただけで、帳簿の中身は説明してもらわないとチンプンカンプンですからね」
「むしろ、そうした帳簿を洗い出す作業が出来る人ならば沢山いるだろうし、肝心な帳簿を探し出せる能力は貴重だよ。日本の国税庁でも、是非協力してくれって言われるよ」
「そう言われても、ヴォルザードやリーゼンブルグなど、向こうの世界のことで手一杯の状態ですからね。日本のことは、日本の皆さんにお任せします」
梶川さんと明日の帰還作業の打ち合わせを済ませてヴォルザードに戻ると、すっかり日が暮れていました。
居残り組にアーブルの残党から回収した武器を配るついでに、唯香と一緒に夕食にしようと思い、ヘルトを目印にして移動しました。
唯香は、診療所での仕事を終えて、宿舎の部屋に戻っていました。
「唯香、入ってもいいかな?」
「健人? ちょっと待ってね」
唯香は作業をしていた机の上を片付けてから、僕を招き入れてくれました。
「どうしたの? 何かあったの?」
「あったような……なかったような……」
居残り組に武器を配る件について話し、夕食に誘いました。
「じゃあ、綿貫さんも誘っていこうよ。たぶん、アマンダさんのお店から戻って来てるはずだよ」
「本宮さんは、まだメリーヌさんのお店だろうし、新旧コンビや近藤もまだ戻ってないかな」
「食事しながら食堂で待っていれば、そのうち帰ってくるんじゃない?」
「そうだね。じゃあ、行こうか」
唯香の部屋を出ると、宿舎の廊下はシーンと静まり返っていました。
帰還作業が進んだとは言え、まだ宿舎には三十人ぐらいの女子が残っているはずなのに、静かすぎる気がします。
部屋のドアをノックすると、綿貫さんはアマンダさんの店から戻っていました。
「夕食かぁ……分かった一緒に行くよ」
「どうかしたの? 綿貫さん」
「ん? ちょっと食欲が無いというか……」
「具合が悪いなら、治癒魔術で……」
「いや、たぶん無理だな。病気じゃないから」
「えっ、病気じゃない……?」
「健人、早智子はほら……」
綿貫さんが食欲が無いと言ったのは、妊娠による悪阻だそうです。
「だいぶ楽になってきたけど、まだ普通に食べるのは無理っていうか、偏食気味だな」
硬い黒パンが無性に食べたくなったり、ポテトチップスが食べたくなって、アマンダさんに作ってもらったりしたそうです。
「そんな訳で、今夜のメニューを見て食べられるものだけ食べるから、トレードしようぜ」
「うん、構わないよ。でも、やっぱり子供を産むって大変なんだね」
「そうだぜ。これから唯香やマノンにも大変な思いをさせるんだ、しっかりしろよ国分」
「勿論、僕に出来ることは何でもするけど、まだ、その……してもいないから実感は無いな」
「へぇ、意外に真面目なんだなぁ……国分は、とっくに押し倒したり、押し倒されてるかと思ってたよ」
「際どい場面はあったけど、しても、されてもいないからね」
ここは返事を間違えると、腕を組んでる唯香が夜叉に変身して、僕の命が危なくなりそうですから言葉を選ばないといけませんね。
この至高のふにゅんふにゅんが、万力と化さないようにしないと……。
食堂に足を運ぶと、以前は同級生と守備隊の人で席が埋まっていましたが、だいぶ空席が目立つようになっていました。
帰還作業が進んで、こちらに残っている同級生の方が少なくなっているからでしょう。
いつの頃からか、食堂の奥側に同級生たちが集まり、出口に近い方に守備隊の人が集まるようになっていて、当然空席が目立つのは奥側です。
トレイを受け取った後、僕らも奥側の席に座りました。
同級生の何人かは僕に声を掛けて来て、中には明日帰還する予定の人もいました。
帰還作業を始めた頃は、本当に日本に戻れるのか不安に思う人もいたそうですが、回を重ねて帰国した同級生とも連絡を取り合うようになり、懸念は払拭されたようです。
ただ、日本に帰国予定の同級生たちの心は、すでに日本に戻った後のことに関心が向いているようで、ヴォルザードに残る僕らとは意識の隔たりのようなものを感じます。
というか、僕が勝手に感じるだけで、みんなにはそんなつもりはないのでしょうね。
同級生たちに混じって三人で食事をしていると、妙に視線を感じます。
ふっと目を向けると、ふっと顔を逸らす守備隊の人が見受けられました。
「何だろう、妙に見られているような……」
「あぁ、国分、あれは新人さんだろう」
「ん? でも、今は銀髪だから、黒髪ほど目立たないと……」
「はぁ……国分は自覚が足りないよ。診療所の天使ちゃんの隣にいる、一見冴えない銀髪の男っていったら、ここじゃ魔物使いとして有名なんだぞ」
綿貫さんの話では、先月半ばに入隊した新人が、訓練で怪我をすれば診療所の世話になり、治療を担当する唯香とマノンが話題になっていたそうです。
あわよくば……なんて考える連中に、先輩の隊員が釘を刺し、今の状況が生まれているようです。
「唯香に目が眩んで、国分に挑んでくるような奴がいれば面白いのにな?」
「いやいや、全然面白くないからね。面倒なだけだよ」
「なんだよ、僕の唯香に手を出すな……とかやってくれよ」
「守備隊の皆さんとは良好な関係を築いていたいんだから、揉め事なんてごめんだよ。あっ……でも勿論、唯香には指一本触れさせないよ」
「健人……」
「唯香……」
「ゴメン、あたしが悪かったから、イチャイチャするのは二人だけの時にして」
せっかく唯香といい雰囲気になったのに、綿貫さんは無粋ですよね。
でも、唯香とお互いに、あーん……とかしちゃいますけど。
じゃないと、守備隊の新人さんに示しがつきませんもんね。
怨嗟を含んだ視線をあちこちから浴びながら食事をしてると、近藤と新旧コンビが姿を見せました。
そう言えば、鷹山は自宅でシーリアさんたちと夕食なんですね。
「近藤、こっちこっち」
「おぅ、国分がここで飯食ってるのは珍しいな。どうかしたのか?」
「リーゼンブルグの反体制勢力から、武器とか防具とかを取り上げて来たから、近藤たちに横流ししようかと思ってさ」
「マジか、俺たちにとっては有り難い話だけど、それってテロ組織から武器を強奪してきたってことだよな? ホント国分は極悪だな」
「何言ってるんだよ。無駄な流血沙汰が起こらないようにしているだけじゃん。こんな平和主義者に向かって失礼だよ」
「はいはい、じゃあそういう事にしておくか。それで、どんな物があるんだ?」
「長剣、槍、盾、鎧、手甲、脚甲、チェーンメイル、ナイフ、その他もろもろ……」
アーブルの残党から奪ってきた武器の種類を教えると、新旧コンビが食いついてきました。
「おぉ、槍いいな、槍! 大型の魔物を相手にする時は、距離取って戦った方が安全だろう」
「和樹、盾はどうだよ。こっちは鉄の値段が高いから、盾の良いものとか高いじゃん」
「盾かぁ……俺考えたんだけど、機動隊が使ってるポリカの盾とか手に入らないかな? あれ軽いし、強いし、透明だし、良くね? 国分の伝手で何とかならねぇ?」
「うーん……手に入らないこともないけど、壊れたり盗まれたりしたら、代わりの盾がすぐ手に入らないし、こっちの鉄盾を基本に考えておいた方が良くない?」
「なるほど、それも一理あるな」
近藤と新旧コンビが加わって、どんな武器を使うのか相談をしていると、八木と相良さんも姿を見せました。
相良さんの関心は、武器よりも馬車です。
「ねぇねぇ、国分。一頭立ての小型の馬車とか無いかな?」
「小型の馬車ねぇ……あったと思うけど、小さい方が良いの?」
「色々調べてみたんだけど、やっぱり馬を飼うのは大変だから、馬車だけ所有して、馬は使う時だけ借りようと思ってるんだ」
「なるほど、その方が経費は節約出来るのか」
確かに、東京育ちの僕らが馬を飼うのは大変です。
そう言えば、八木や新旧コンビを救出した後で、御者の訓練をやりましたね。
結局ザーエ達に引っぱってもらったので、訓練の成果を使うことはなかったけど、これから八木たちは使う機会があるかもね。
馬車は、まだ置く場所がないので、シェアハウスが完成してから改めて選んでもらうことにして、小型で程度の良いものは残しておきます。
武器や防具は、魔道具の明かりがある宿舎の玄関前に並べ、好みのものを選んでもらうことにしました。
「どうする達也、どれを貰っておく?」
「ただで貰えるんだから、一式貰っておくべきじゃね? なぁ、ジョー」
「そうだね、槍と片手盾、チェーンメイル、手甲、脚甲……ぐらいかな」
近藤と新旧コンビがガヤガヤと品定めをする横で、本宮さんも真剣な表情で武器を選んでいました。
見た目重視の新旧コンビを、近藤と本宮さんが止めるという感じです。
「ねぇねぇ、国分君、チェーンメイルって、もっと小さいサイズは無いのかな?」
「ちょっと待って……」
アーブルの残党から奪ってきた武器の殆どは、成人男性が使う汎用サイズなので、新旧コンビでも大きすぎる感じです。
今回、鷹山が参加していませんが、体のサイズは同じぐらいな古田に選んでおいてもらいます。
「一応、これが一番小さいサイズだけど……」
「うーん……これでも大きいか。しょうがない、サイズは直してもらうよ」
本宮さんは、スレンダーな体形なので、一番小さなサイズでも肩幅が余り、袖は指先まで届いてしまいます。
裾も膝ぐらいまであって、試着した姿は前衛的なワンピースという感じです。
チェーンメイルは、それ自体が結構な重量があるので、布のようにヒラヒラはせず、ズドーンと凹凸も無く……。
「国分君、何か失礼なことを考えてない?」
「と、とんでもない。重そうだし、かなり袖が長いって思ってただけだよ」
「いやいや、国分、横から見ても真っ平だなって……」
「八木君もちょっと着てみてよ、ほら、冒険者になるんでしょ?」
余計な一言を口走った八木は、本宮さんに試着してたチェーンメイルを押し付けられて、渋々といった様子で身に着けました。
「うぉ、こんなに重いのか、結構肩にズシっと来るな」
「じゃあ、八木君、ちょっとそこに立ってて、強度試験をするから……」
「馬鹿、やめろ! 抜き身の槍で何しようって……痛っ、痛っ、止めて」
「真っ平で悪かったわね! ほら、槍を捌くにも邪魔にならないし、そのうち弓にも挑戦してみるから、また的……じゃなかった、テストに協力……」
「する訳ないだろう!」
八木が身に着けたチェーンメイルは、なかなか良い品物だったようで、本宮さんの刺突をシッカリ受け止め、流血の事態には至っていないようです。
ただ、チェーンメイルは、金属鎧と違って変形するので、衝撃は通っちゃうんだよね。
チェーンメイルの欠点を体現するかのように、倒れてヒクヒクしている八木を放り捨てて、本宮さんは武器選びを再開しました。
玄関先でガヤガヤしていたので、帰国予定の同級生たちも、何事かと見物に集まってきました。
「国分、俺たちも見ていいか?」
「別に構わないけど、全部刃が付いた本物だから振り回して遊ばないでよ」
「了解、了解」
日本に帰る同級生には、武器も防具も必要のない物ばかりですが、逆に言うなら日本に戻ったら手にする機会は殆ど無い物ばかりです。
念のために出しておいた大剣とかは、一度は背負ってみたり、構えてみたくなるものですよね。
「国分君、私はこれにする……」
本宮さんが選んだのは、八木から剥ぎ取ったチェーンメイルと槍、刃幅の広い短剣、バックラー、手甲、脚甲、革の防具あれこれと、鉄兜でした。
「全部装備したら、たぶん今の私だと動けなくなっちゃうと思うんだけど、状況に合わせて装備も変えようと思ってるんだ」
「なるほど……どうかな、ラインハルト」
『なかなか賢明な選択ですぞ、最初から討伐目的で出掛ける場合と、捜索に出かける場合などでは当然装備も変わってきますからな。ただし、どの装備を付けた場合でも、混乱なく動けるように訓練しておく必要がありますし、防具の強度の限界も知っておいた方がよろしいでしょうな』
ラインハルトの言葉を伝えると、本宮さんは大きく頷いた後で頼み事をしてきました。
「あのニコラさんの件って、星の曜日には片付くんだよね?」
「うん、ボレントが余程の馬鹿でもない限り、大丈夫だと思うよ」
「それじゃあさ、例の訓練場に連れて行ってくれない?」
「そうだね、みんな新しい武器とかも使ってみたいだろうから、居残り組で合同訓練しようか?」
「ホント? 魔物の討伐とかも経験できる?」
「勿論、活きの良いゴブリンとか用意しちゃうよ」
「やったーっ! これで経験値アップできちゃうよ」
小躍りして喜んでいる本宮さんに、ムクっと起き上がった八木が呟きました。
「甘いぞ本宮。お前は甘すぎる」
「何よ、まだ何か文句あんの?」
「ふん、お前は国分の性格の悪さを全然理解していない」
「どういう意味よ」
「こいつの言う活きの良いゴブリンは、マジ半端なく活きが良いからな。下手したら上位種じゃねぇの……って奴を捕まえて来やがるんだからな」
「えっ、それって本当なの?」
急に不安になったらしい本宮さんが、僕の方へと振り向いたので、安心させるように満面の笑みで答えました。
「大丈夫、大丈夫。僕や僕の眷属が見守ってる状態なんだよ。ヤバいと思えば介入するし、そもそも弱ったゴブリンを討伐したって、何の役にも立たないでしょ? そりゃあ実戦を想定した訓練なんだから甘くはないよ。それでも、安全が確保された状況で、実際に魔物の討伐が出来るんだから、これ以上の経験が積める場所は無いんじゃない」
「そうだよね。実際の討伐依頼は命賭けの仕事なんだから、訓練が厳しいのなんて当たり前よね」
「本宮、騙されてんじゃねぇよ。こいつは鬼だぞ、鬼! ヘトヘトになって討伐を終えても休憩すら許さず、さっさと魔石を取り出せって冷たく言い放つ男だからな」
どうやら八木は、先日のパーティー加入試験のことを根に持ってるようですね。
「何言ってんだよ。ゴブリンごとき四苦八苦してるからだろう。近藤なんて瞬殺だったじゃんか」
「あれは、色々と準備も経験も足りなかったからで、本宮だって最初は絶対に泣きを見るぞ」
「そうかなぁ……八木よりも全然堅実だから、上手く出来ると思うよ」
「お前は、その俺様以外に向ける優しさの半分でもよこしやがれ」
「何言ってるんだよ。散々僕の名前を使って、可愛いお嫁さんまでゲットしておいて、文句を言うとか罰当たりにもほどがあるよ」
「くそぉ、お前ばっかり可愛い嫁さんゲットしやがって……」
八木が拳を握りしめて歯ぎしりした時でした。
「ぎゃぁぁぁぁ!」
突然悲鳴が響き渡り驚いて振り向くと、肩口を押さえて転げ回っている同級生の姿がありました。
その近くには、刃に血がついた大剣が放り出されています。
「ち、違う。殺すとか、そんなつもりじゃなくて、思ったよりも重くて……止められなくて……」
どうやら面白半分で振り上げた大剣を、寸止めするつもりが重さを支え切れずに斬りつけてしまったようです。
僕よりも早く唯香が駆け寄り、素早く詠唱を終えると治癒魔術を掛け始めました。
「マナよ、マナよ、世を司りしマナよ、集え、集え、我が手に集いて癒しとなれ!」
「痛ぇ……痛ぇよぉ……」
肩にあてがわれた唯香の手が仄かに光り、斬られた同級生の表情は少し和らいだものの、まだ苦痛に彩られています。
大剣の振り下ろしが直撃したようなので、かなり傷口も深いのでしょう。
唯香が治癒魔術を掛けている間に、知らせを聞いた加藤先生が駆けつけて来ました。
「誰が斬られたんだ。状況は?」
「今、唯香が治療してます。斬ったのは……あれっ、どこ行った?」
大剣を振り回していたのは、同じクラスになったことのない同級生で、名前が分かりません。
同級生を斬ってしまって怖くなったのでしょう、治療を見守っているうちに姿を晦ましていました。
僕が加藤先生と話している間に治療は終わり、斬られた同級生も起き上がりました。
着ている服がザックリと切れて血まみれで、パッと見は酷い有様ですが、傷も塞がり痛みも無いようです。
ただ、出血が多かったせいでフラフラするようで、友人に肩を借りて部屋に戻って行きました。
「お疲れ様、唯香。骨まで斬れてたんじゃない?」
「うん、鎖骨がバッサリ、肩甲骨に食い込んで止まったみたいだった。あれ、頭を直撃してたら助からなかったと思う」
僕が水属性の魔術で作った水球で手を洗いながら、唯香はブルっと体を震わせました。
僕らの治癒魔術は、壊れた細胞を元に戻せるみたいですが、脳細胞を再生した場合、元の記憶や機能が取り戻せるのか分かりません。
少し迷いましたが、放り出されていた大剣は、拭いを掛けて鞘に納めて影の空間に放り込みました。
見物していた同級生からも武器は全部戻してもらい、近藤たちが選んだ物を残して、他の武器も片付けました。
大剣を振り回した同級生には、後で加藤先生が説教するそうですが、僕まで小言をもらう羽目になっちゃいました。
「国分、帰国する連中にはもう武器を持たせるな。こっちの残る連中は仕方ないとして、帰国できる連中が余計な怪我をしたり、万一のことがあってからじゃ遅いからな」
「分かりました。武器の融通は、他の同級生がいない所でやるようにします」
「頼んだぞ。はぁ……だが、ヴォルザードで起こった事件で助かった。鉈みたいな剣でザックリ斬られても、その場で治療が終わるんだからな」
「でも、日本に報告入れない訳にはいきませんよね?」
「それを言うな。言われなくても分かってる」
加藤先生は、盛大に溜息をつきながら宿舎に戻って行きました。
うん、何だかまた加藤先生の髪の毛が、薄くなってる気がします。





