シェアハウスの大晦日
※今回は古田達也目線の話になります。
大晦日の夜、国分の屋敷ではヴォルザードの領主一家や浅川さんの両親なども招いて、盛大な年越しパーティーを行うと言っていた。
俺たちが暮らすシェアハウスでも、今夜は年越しパーティーを開催する予定だ。
参加者は、鷹山と嫁のシーリアさん、娘のリリサちゃん、義理の母親になるフローチェさん。
ジョーと同棲しているリカルダ、俺、和樹。
八木一家は、嫁であるマリーデの実家にお呼ばれしているらしい。
相良、本宮、本宮に弟子入り状態のミリエ。
綿貫と娘の未来ちゃん。
まぁ、ここまでは予定通りのメンバーだ。
各々が食材や酒を持ち寄り、料理はフローチェさん、シーリア、それに綿貫が担当してくれている。
一階のリビングに集まって、みんなで料理を並べ、カップや酒、ジュースも並べていく。
「じゃあ、そろそろ始めようか」
料理の準備が終わり、全員が顔を揃えたところで、開会を宣言したのはジョーだ。
俺たち冒険者パーティーのリーダーだし、なんだかんだシェアハウスの顔的存在になっている。
「では、今年も全員無事に終えられそうです。来年も良い年になりますように……乾杯!」
「乾杯!」
テーブルの上には、所狭しと料理が並べられている。
スペアリブの照り焼きや、鳥の唐揚げ、ポテトフライ、山盛りの肉団子、パスタやサンドイッチ、おにぎりなど、大きな皿にドカ盛りされている。
乾杯直後は、酒やジュースを口にしたが、その後は全員が料理にかぶりついた。
ぶっちゃけ、食べ盛りばかりだから、食べる量は半端ない。
それを見越してのドカ盛りなのだが、あっと言う間に山が消えていく。
各自が黙々と料理を堪能した後、少し腹が膨れてくると話に花が咲き始める。
鷹山は一家団欒、ジョーはリカルダとイチャイチャ、相良、本宮、ミリエ、綿貫は女子トーク。
そして、和樹は革職人見習いのヒメアと話し込んでいる。
そうなのだ、パーティーの準備をしている時から、ヒメアが来ているのは分かっていたが、あえて意識しないようにしていた。
パーティーが始まった後は、まずは腹ごしらえを優先したのだが、気付いたら俺だけ浮いていた。
こうしたパーティーの時には、これまでだと和樹と馬鹿話をしたり、同棲を始める前のジョーも巻き込んで三人で……というパターンが多かったのだが、今や完全にボッチだ。
和樹と一緒の時には、相良とか本宮なんかとも話していたが、女子四人が固まっている所に入っていくのは気が引ける。
かと言って、必死に顔を引き締めているつもりで、鼻の下が伸びきっている和樹の邪魔をするのも気が引ける。
八発様ことジョーをいじるのも、ちょっと違う気がする。
ラスト・モテないの称号が、これほど重いとは思ってもみなかった。
和樹の相手ヒメアは、何と言うか普通だ。
飛び抜けた美人ではないが、とんでもない不細工でもない。
美人というタイプではないが、愛嬌がある。
スタイルは、俺の考えるポッチャリレベルからは片足を踏み外してしまっているが、その分だけ胸は大きい。
邪魔してやろうとか、寝取ってやろうといった衝動が湧かないタイプだ。
それでも、隣に座って小首を傾げ、ちょっと上目使いで和樹を見ながら、くるくると表情を変えながら話を聞いている姿は可愛らしいと思ってしまった。
和樹は、魔物を討伐した時の話をしているようだ。
女の子相手に討伐の話なんて、普通だったら場違いにも程があるが、冒険者の防具を作る職人なので、前のめりになるほど真剣に聞いている。
和樹は和樹で、普段酒場でオッサン相手に話しているような内容なので、緊張しないで話せているようだ。
俺も和樹も、同年代の女子と何を話して良いのかサッパリ分かっていない。
国分の力でネットは使えるけど、ネットで探した話題なんて、ヴォルザードに暮らす女の子では理解できない。
かと言って、和樹が話しているような討伐の話が、ヴォルザードに暮らす女の子に受けるのかと言えば、殆ど受けないのだ。
一体、どんな話をしたら注目してもらえるのか、俺にはサッパリ分からない。
仕方がないから、一人でスマホをいじりながら酒を飲んでいると、不意にポンと肩を叩かれた。
「暇そうじゃんか」
「鷹山か……リリサちゃんは?」
「もう寝たよ。昼間思い切り遊んでおいたからな」
「嫁は?」
「女子トークだ」
鷹山が指差す方へ視線を転じると、相良たちのグループにフローチェさんとシーリアが加わっていた。
「鷹山さぁ、普段は嫁と何を話してんの?」
「はっ? そんなもの、うちのリリサがどれだけ可愛いかに決まってんだろう」
「聞いた俺が馬鹿だったよ」
「それだけじゃないぞ、どれだけシーリアが魅力的か、フローチェさんに感謝しているかとかだな」
「えっ、仕事の話とかは?」
「仕事の話なんて退屈なだけだろう。お土産とか、ラストックの街の復興度合いとかは話すぞ」
「そっか、行った街の話とかすれば良いのか……てか、観光とか全然してねぇな」
こちらの世界では、ちょっと旅行とか、隣町に遊びに……といった感じで、移動する人は少ない。
マールブルグとか、バッケンハイムとか、ラストックへ行く人は、殆どが仕事で行く人ばかりだ。
なので、違う街の話だったら若い女性にも受けそうだが、依頼で行く場合は観光している暇が無いのだ。
到着するのは殆どが夕方で、翌朝出発というケースが少なくない。
たまに、一日滞在する依頼もあるのだが、これまでは金を使わないように、宿から殆ど出歩いていない。
「来年は、ラストックとかマールブルグの街を見て回ろうかな」
「良いんじゃねぇ、現地の女の子と知り合いになるかもな」
「鷹山、お前天才か! そうだよ、その手があるよ」
「でも、遠距離は難しいんじゃね?」
「いいや、そこに愛さえあれば……」
「ジョーみたいになるかもな」
「うっ……」
ジョーは今の彼女と付き合う前に、マールブルグの女冒険者と付き合っていた時期がある。
童貞を喪失した相手らしく、ジョーは本気で結婚まで考えていたようだが、ある日訪ねて行ったら家がもぬけの殻になっていたそうだ。
「でも、あれは年齢差とか別の問題もあったんじゃね?」
「かもな、でも達也の場合、ヴォルザードでも知り合えないのに、たまたま行った街で知り合えるのか?」
「そ、それは……やってみなきゃ分からないだろう。そもそも鷹山だって、異世界召喚なんてレアな状況だったのに、シーリアちゃんと知り合ってるじゃん」
「そうだけど、俺は元々モテてたぞ」
「ぐふぅ……そうかもしれないけど、やってみなきゃ分からんだろう」
「まぁ、可能性は限りなくゼロに近いが、ゼロではないからな」
確かにその通りではあるのだが、鷹山に可能性ゼロとか言われると、何だかメッチャムカついてくる。
「はぁ……可愛い彼女できねぇかぁ……」
「どうした、どうした、ラスト・モテない君」
「湿気た顔してると、更にモテなくなるぞ」
「お前らなぁ……」
リカルダとヒメアも女子トークに加わったようで、和樹とジョーもこちらに移動してきた。
「とりあえず、年が明ける前に、達也の何処が駄目なのか、みんなで考えてやろうぜ」
「顔だろう」
「顔だな」
「顔だよな」
「お前らなぁ……あんま調子に乗ってると、足下掬われるぞ」
「あと性格な」
「性欲が顔に出過ぎてる」
「酒の飲みすぎ」
「お前ら、いい加減にしろ!」
彼女がいないだけで、何でここまでイジられなきゃいけないんだ。
てか、和樹の勝ち誇った顔がムカつくぅ……。
来年は絶対に彼女を作ってやる。
めっちゃ美人で、スタイル抜群の彼女を作ってやるからな。





