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オフェルのギルド

「おぉ……! スッゲェ!」



「アハハ、フミヅキさん、はしゃぎすぎですよ」



門を抜け、中に入れば、そこには中世ヨーロッパ風の建物が建ち並ぶ大通り


そんな光景に少々興奮していると、隣を歩くアルトが苦笑い。

だが、自分の街を凄いと言われたことに満更でもないようだった


「いや、俺ってかなりの田舎から出てきたからな」


ちなみに、これは俺がアルト達とここまで来る途中で考えたいた設定だ。

これなら、何か常識を知らなくても田舎者ってことで呆れられるだけですむからだ

下手に答えてボロを出すよりはマシだろう



「へぇ。 それじゃ、さっきの苻術? てやつはフミヅキさんの所の秘伝?」



「まぁ、そんな感じだな」



マリーの質問は軽く流す。

間違ってはいない。 があってもいない。

道中で聞いたが、俺のような苻術を使う人は見たことがないらしい

まぁ、この4人が知らないだけで、いないとは限らないが



「それじゃ、フミヅキさん。 僕らはこれから学校に戻ります」


「おお。 確か、課題のこと報告に行くんだっけな」



「はい。 フミヅキさんも、ギルドへ?」



「おうよ。 さすがに、身分証明できるもんは欲しいからな」




門を抜ける時の話なのだが、門番のおっさんに注意を受けたのだ。 一応、アルトが事情説明なんかをしてくれたお陰で入れたのだが、後で身分証明できるものをみせにいかないとダメなんだそうだ。

アルトが言うには、ギルドに登録すれば、ギルドカードというものが発行されるらしく、それが身分証明書の代わりになるのだとか

ただし、冒険者として登録することになる

まぁ、俺としてもそういうのがあれば登録するつもりでいたため、一石二鳥といえばその通りなのだ


「ギルドはこの先、突き当たりを右に曲がった先にあります。 剣を構えた人の絵が目印ですから、すぐに分かると思いますよ」



「すまん。 助かる」



「いえいえ。 シリウスの怪我を治してくれたんですから」



「そうそう! ほんと、助かったぜ! ありがとうな!」



「シリウス! あんた、恩人になんて口の聞き方を……!」




「あわわ、マ、マリーちゃん、お、落ち着いてぇ…!」



マリーが怒り、エルノが慌ててマリーを宥める。そんな様子を苦笑いで見るアルトはそれじゃぁ、と言って俺の前から去っていく


先に去っていくアルトを慌てて追いかける3人だったが、シリウスが振り向いて手を振っていたので小さく返しておいた



「さてと、俺も行くかね」













「あった、ここか」



言われた通りに道を行くと、目当ての建物があった。

木像3階建てだが、かなり大きい。

日本のビルやマンション何かに比べれば月とスッポンだが、この世界の基準で言うなら、かなり大きな建物に入るはずだ



「っと、取り合えず、入って登録しなきゃな」




両開きの扉を開ける。 すると、待っていた光景は、まさにファンタジー

どうやら、中に酒を出す場所もあるのか、屈強な男達が、まだ陽があるうちから酒を飲んでいた

だが、問題はそこではない

皆がみんな、皮や金属の鎧を身に付け、背中や腰に己の武器を装備しているのだ



中には、ビキニアーマーなるものを身に付ける女の人だっていらっしゃる



どの人を見ても、筋肉とか凄い。

そんな男達が、騒がしくも、楽しそうにしているのだった



「すげぇなこりゃ……」



「何かご用ですか?」



「うおっ!?」



酒場のほうに気を取られていると、逆のほうから声をかけられた。

全く警戒していなかったため、驚いたがどうやら、ギルドの職員さんらしい。

制服っぽい服に、胸に剣を構えた人マークが入っていた



「す、すみません。 ギルドの登録に来たんですけど……」



「あ、御登録の方ですか。 でしたら、あちらの受け付け、までお進みください」



言われたのは、酒場とは逆にある受け付け、その一番奥の受け付けだった

言われた通りに進むと、誰もいなかったのだが、どうやら先程の職員さんが担当のようですぐに対応してくれた




「では、最初にこの書類に書けることだけでいいので、記入してください」



手渡された書類を見ると、名前、年齢、武器、ギフトの4項目



「あ、あの、ギフトっていうのは何なんでしょうか……」




「……は?」



「お、いや、俺、スッゲェ田舎から出てきたもんですから、こういう、人が知ってそうなことも知らなかったりして……」



「ああ。 そうですか」



一瞬、何を言ってるんだこいつはみたいな顔で職員さんの笑顔が崩れたため、慌てて自分の作った設定を説明する

分かってくれたのか、職員さんの顔は納得したように、また笑顔に戻った

ちなみに、職員さん、女の人である



「ギフトというのは、その人個人個人の持つ、恩恵のようなものです。 ある日突然、剣の腕が上がったり、できなかったことが上手くできるようになったりといったような例が多いですね。 本人も知らないうちにギフトを授かっていたりするので、それは神殿にある石板に触れれば確認することができるようになっていまが、これについては個人の重要な情報となりますので、明記するかどうかはご本人に任せています」




神殿あったんだな

いや、そうじゃない。 それはいいんだ。

つまり、ギフト=スキルってことで大丈夫なんだよな?

さて、どうするか。



俺は手元の書類を見やる。 取り合えず、ギフト以外の3つは書いても大丈夫なためさっさと書き終えたが、問題はここから




俺の持つスキルの数は全部で15ある。 これ、全て書けば、必ず大問題になるに違いない

聞けば、ギフトとはこの世界の住人からすれば神様から与えられたものとして扱われているらしい

まず、苻術はアルトたちにも説明した手前、書いても大丈夫だろう。

別に書く必要もないのだが、何も無いは無いで、逆に絡まれる要因になりかねない




というわけで、1つ2つくらいは書いておこう




名前 フミヅキ




年齢 18歳




武器 手甲




ギフト 苻術、格闘




「書けました」



「はい、確かに」



そう言って俺の書いた書類に目を通す職員さん。

ギフトの辺りで一瞬眉を潜めたが、そこはプロ。直ぐに笑顔に戻り、少々お待ちくださいと丁寧に一礼をしてから奥に下がった





「……ギルドの職員でも見たことないのか…」




どうやら、この世界に苻術というものがない可能性が濃厚になってきた




「はぁ……。 どうしたものか……」




「お待たせしました」



丁度、先程の職員さんが戻ってきた。 手には、何か銀色のカードのようなものが握られている



「こちらが、あなたのギルドカードとなります。 今回は最初の登録でしたので無料ですが、紛失したりなどで再発行する場合には、金貨1枚必要となりますので、ご注意下さい」



「了解しました」




「それでは、これでフミヅキ様の登録は終了となります。 ようこそ、ギルドオフェル支部へ。 私たちはあなたを歓迎します」




ニッコリと笑う職員さんに少し照れてしまう。 だが、俺はまだ聞きたいことがある。

お金の問題だ




聞くところによると、貨幣は下から銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、白金貨の6つ。 白金貨なんて、貴族でもそう使わないらしいが、ドラゴンの討伐何かでの報酬で稀に使われるそうだ



いや、ドラゴンいんのかよ



一応、金貨まではここにあるみたいで、見せてもらうことに。 俺が田舎では物々交換でしたと言えば、可哀想なものを見る目で見られたのは気のせいだろう




「こちらが、銅貨から、金貨までの5枚ですね。 白金貨はここにはないので、こちらの絵でご勘弁下さい」



「あ、いえ。 ありがとうございます」




お礼をいってから、銅貨から順に見ていく。銅貨は見た目10円玉くらいの大きさだったが、中に描かれているのは人の顔



どうやら、この大陸を初めて統一した昔の偉人らしい。



大とついている貨幣は一回り大きくできているようだったが、やはり中の絵は同じ



「うぅん……なんか、この顔見たことあるような…」



そう、俺は何度もこの顔を見た気がするのだが、ここ数時間の内容が濃すぎて上手く思い出せない



が、金貨を見た瞬間に、そんな疑問が吹き飛んでいた




「!? す、すいません。 ありがとうございました!!」



俺は慌ててギルドを出ると人目のつかなさそうな場所でウィンドウを開く

表示するのは金貨の欄




「! やっぱりこれか…」



2000000Gと表示されている部分に触れ、1Gだけ手元に出す



現れたのは先程、ギルドでみたのと全く同じ1枚の金貨だった



「助かるっちゃ助かるが……これはヤバイだろ」



金貨1枚でもかなりの価値がある。 それが2000000枚。

これはバレたらかなり面倒なことになる




「……とりあえず、門に行ってから宿でも探すか」




異世界初日。 俺の精神はもうかなり疲れきっていた

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