表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/36

転移だと思っていた

今回から、主人公の一人称に変わります


勝手ではございますが、これからもどうぞよろしくお願いします

「……ここは」



閉じていた目を開ける。 先程、謎のアイテムから発せられた光はもうなく、手で目を覆っていたこともあって、まだ見えないといったことはなかった



だが、目の前の光景の変化には驚かされた






「木? ……てことは、ここは森の中なのか?」



アルファたちといたダンジョンは大理石に囲まれた地下の空間。 どうやら、外の何処かに転移されたようだ



「となると、あれは転移系のアイテムだったのか。 てか、いきなり発動とかどんなバグだよほんと」



運営のバカヤローと悪態をつきながら、俺は手を振ってウィンドウを開く。 とにかく、ダンジョンにいるであろう仲間達と連絡を取らなければならない。 突然俺が消えたことでアルファなんかが騒ぎだすかもしれない



ウィンドウを開いた俺は慣れた手つきでチャットの一覧を開こうとした。 だが、そこで異変に気づく



「…は? 何でないんだ?」



いつもの場所に表示されたチャットの文字に触れようとしたのだが、肝心のチャットの文字がないのだ



そして、俺はもう一つの異変にも気付く。 本来、絶対にあるべきもので、なければ運営が潰れかねないであろうもの


「ログアウトがない……だと……」



ログアウト出来ない。 それすなわち、このゲームから出ることが出来ない。 ということは俺は現実に戻れない



「なんだよこれ……」




チャットも繋がらない。ログアウトも出来ない。ここんな状況を誰が予想出来るのだろうか



何か、運営がトラブったのなら数時間もせずに復旧作業が行われ元に戻るのだろうが、その場合、プレーヤーは皆強制ログアウトされるようになっている



が、それもない。 てことはバグじゃない……?



「いやいやいや。 それはない」



ログアウト出来ないのがバグじゃないとか、どんな判断だよ



自分で自分をツッコんでいるが、状況は変わらない。 とにかく、何をしようにもこの森を抜けなくては話にならない。 何故か、マップも使えないため、自分がどこにいるのかも分からないのだ


……マップもとか、一体何が起こってんだよ…



今までフィールド探索にはマップを使っていたため、ほぼ勘で森の中を歩き始める


が、歩き始めて直ぐに気づいた。 俺の格好だ



俺が着ているのは魔竜を倒した時と同様の平安貴族スタイル


『神話の襲来』というイベントで撃破した八咫烏から得た装備で結構便利で優秀な装備だ


だが、こんな森の中じゃ、動きにくい



更に言うと、これは俺が臨時パーティを組み、サポートに徹するときの装備だ。 普段はソロ活動をしている俺の装備はまた別にある。 なので、今はそちらを着る



「チャットとログアウト……あと、マップ以外は使えるんだな……」



装備の覧でセットしている八咫装備ーー言いやすいので俺はこう言っているーーを外し、ソロで使っているものに変える



直後、八咫装備が消えたかと思えば見慣れた装備が現れる



竜装備と俺が呼ぶそれはその名の通り、とあるエリアのボス戦に参加した際に得たドロップアイテムで知り合いの職人につくってもらったもの、あるいはドロップそのままのものだ


まず竜の骨で作った手甲に風竜の革靴。 風のペンダントにそして、いつもなら風竜のローブというアイテムを着るのだが、先程手に入れたドロップアイテムである魔竜のローブなるものを代わりに着た



効果は以前のものよりもかなりよくなっているため着るならこちらだろう



ちなみに、この装備には 対物理、抗魔術、状態異常無効などの他に、俊敏補正や自己修復能力などかなりのものだ



ついでに言うが、先程の八咫装備はこれらの効果が落ちるが代わりに常時体力回復や苻術の威力の微増などごついているため、あれはあれで凄かったりする




「よし、行くか 」



とにかくここから出なければ。 そんな思いで俺は一歩を踏み出した












「くそ……慣れないことはするんじゃにかった……!!」



約二時間後、俺は森の中をさ迷っていた。


はっきり言おう。 迷子である



「歩いても歩いても木ばっかり。 せめて、目印でもあればいいがそれもない。 しかもだ……」



ピタリと立ち止まり、空を見上げる



「なんで疲れるんだよぉぉぉぉ!!」



VRMMOであるWFOにおいて、本来疲労というものは感じないように出来ている。 流石に体力が限界ギリギリになれば少々体の動きが鈍くなる程度だ



「くそ! 訳がわからねぇ!!」



手甲で覆った拳で隣の木の幹を殴り付ける


確かな感触。 メキッという音と共に木に拳の跡が残った



ゲームなら、こんなリアルなところまで再現は出来ない。 不可能なのだ



だが、その不可能が目の前で起きている



頭の片隅にあった一つの可能性。 信じたくはない。 が、信じざるをえない



「……認めるしかないのか…」



ボソリと呟いたその声は木々がざわめく森の中で響くことはない



「これ……現実なんだな……」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ