神託
今回は光輝と秀郷視点です。
追記:一部書き直しました
礼拝した後魔石と呼ばれる物に言われたとおり手を触れた途端、突如として光に包まれてどこか遠くに飛ばされる感覚を味わった。
一面真っ白い世界、これまで何度と無く不思議な体験を味わったが、これはそれに輪を掛けて不思議な感覚だった。見ると肉体は無く手や足の感覚も無い。浮遊している感覚があるので取り合えず前に進むように意識を集中させる。
「すみません 誰か居ませんか? ここはどこですか?」
呼びかけたが誰も答えてくれない。
全く、今度は何が出て来るんだよ。踏んだり蹴ったりだな。僕の家は、楓 やあいつには負けるが父は大手電力会社の役員、母は実家が地方の地主兼中企業の創業家出身で、帰国子女ながら地元から離れたがらない為に通っていた高校がある自治体の隣の自治体で公務員の幹部になった後、退職して地元の教育委員会の委員として活動していた。
幼い頃から神童と言われる程の才能を見せ、常に勉強と剣道に打ち込んでいた。護 とは幼馴染、雫 や 楓とも両親の付き合いや剣道の関係で幼馴染の様なものだ。そのお蔭でこの僕に相応しい 楓さん の優しさがあの生っひょろいゴミ屑に向けられているのを見なければいけないという屈辱も味わったが。
「あなたが、天上光輝ですね? はじめまして。私は女神アテナと申します。今はあなたの魂だけをこの神界に招いています」
とふいに後から声を掛けられた。
「これは初めまして。僕は天上光輝です。これから一生懸命頑張ります」
僕は膝まづいて冷静にそう答える。
「うふふふふ その自信ありげな態度に私は大変感服しました。貴方には私の力の一端を預けていますから、私の存在は貴方の心と一つになっていると言っても過言ではないのです。従って貴方の心のありようも良く解かります」
「もったいなきお言葉。心から恐縮します。貴女の仰るとおりなら解かると思いますが、僕は才能に溢れた人間。正直な所神と呼ばれる貴女から選ばれるのは、正直僕以外にはありえないと常々思っていましたから、この結果は当然と思っています」
「凄く自信に溢れていますね。貴方には勇者の一人として皆を導き、魔族の手から罪の無い人々を救い、欲の深い人達からこの大地を守らねばなりません。今の魔族の力や一部の人間達は大変な脅威、人間が滅ぶだけでなく世界自体が消滅の危機を迎えています。魔族や別の国の人達が行っている事は自分達の繁栄・欲望を満たす為なのでしょうが、このまま看過すれば魔族や人間も世界の消滅とともに終焉を迎えます。大きすぎる力に世界を維持しているマナが耐え切れず、雲散霧消した後世界が瞬時に消滅します。ですから、教会や貴方達勇者達のお力が必要なのです。ですが、一つ貴方達について懸念している事があります。貴方の仲間の一部に貴方を良しとしない方々が含まれているようですね」
やっぱりそこか。僕は決して不幸じゃない。むしろ人より幸せなんだろう、たった二つの事さえ我慢すれば。進学校と言われる高校に入学した僕は、これからも皆を引っ張り続ける存在になるものと思っていた。いや、事実クラスの中でも俺に付いて来てくれる奴の方が圧倒的多数だ。
あのゴミ屑孔明との腐れ縁は諦めが付く。気に入らないが、楓 の側に小さい頃から居るという事実がある以上僕が実力で奴を排除すれば良いだけだ。問題はクラスだ。ただでさえゴミ屑の孔明を排除しなければならない、という難題があるのにさらに小山秀郷という屑が現れ始めた。
こいつは事あるごとに常に皆の事を考え、指導して引っ張って行こうと正しい事を言う僕に対して敵対していた。何故こんな奴がこの学校に入れる? 何故僕に従わない? 確かに家柄は僕より上だし、喧嘩も僕と互角かも知れないが、より優れてる僕にあいつは従うべきなんだ。それが何故解らないのか? 考えるだけで頭がこんがらがってくる。だがこの状況を上手く利用すれば、僕が主導権を握る事も夢じゃないな。
「その通りでございます、女神様。ですが、この地上に平和をもたらせるのはこの僕だけ。それはこの世界に来る前から選ばれた僕がもたらす当然の結果、女神様はゆっくりとおくつろぎになって見守っていただければよろしいかと」
「ふふふふ、心強い言葉ですね。解りました。この世界の決まりで、私とのコンタクトはもう取れません。あなたの活躍、期待していますよ?」
「はッ この天上光輝、どの様な手を使おうと必ずや皆を率いて討伐しましょう」
「ふふふふ 期待していますよ」と言われたので、「ありがたき幸せです。必ずや僕が活躍して見せます」と平伏した。
強烈な光が当たりを多い尽くす。気がつくと僕は再び女神の足元に居た。
「ふん、さて、これから僕は頑張らなきゃな。皆の為に。その前に、あのふざけたあいつ等との決着、忙しくなるぞ~」
こうして僕、天上光輝は因縁に決着をつける為、そして皆を導き世界を救うという当然の結果をもたらすため、自分の世界を築くため行動を起こそうと決意を新たに礼拝堂を出て行った。
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さっさと礼拝を済ませた俺は魔石に手を触れた途端、突如として光に包まれてどこか遠くに飛ばされる感覚を味わった。
気がつくと一面真っ黒い世界
「はぁ~ んどはなんなんだよ」
改めて自分を見ると肉体は無く、手や足の感覚も無い。浮遊している感覚があるので取り合えず前に進むように意識を集中させる。
「ち、誰か居ねぇのか? おーい」
クッソ 俺の人生は俺が決めるのに、なんで他者が好き勝手にいじくってんだよ!! 思えば俺の人生はクソだった。優秀な跡継ぎの兄貴が居れば充分だとばかりに、次男の俺の事はどうでも良いのか? 放置気味。さらに親父の高校に進学するや、兄貴そっくりの光輝に出会ってさらに気分が悪い。
親父は昔有名学校法人を運営していて、今は議員として大臣の職責にあるそうだ。学校の運営は忙しいので今は叔母が理事長を務めている。そんな親父は政界の大物にしては話が解り、政策を決めるのも一人一人政党所属の議員の下に行き、説得して話をまとめる話し合いを大切にしている人徳者と言われている。
まぁ俺からすればお笑いだ。そもそも大物がどんな懇切丁寧な対応をしようと、相手が対等・平等というわけじゃない事くらい見て解るだろ。会社の例えば部長が平社員に対して説得したとして、それで平社員に選択の権利があるとでも言うのか? 相手が頭を下げたとしても、そこには無言の圧力が伴うもんだろ。ったく、どいつもこいつもウワベで判断しやがって。
しかも王国のクソッタレどもは勝手に俺を誘拐しやがった。あいつら、絶対に皆殺しにしてやるから覚えてろよくそったれ!!
「ふ、相当フラストレーションが溜っておるようじゃの」
「な!! 誰だ!! それにここはどこだ?!!」
「ここは神界じゃよ。そして我が名は軍神アレスじゃ。よろしく頼むぞ、小山秀郷よ」
「はぁぁぁ? 軍神? 女神の足元の魔石で祈ったら軍神が出てくるとかありえるのか?」
「ふん 勘違いをしているようだから教えてやるが、その魔石に祈ったからと言ってアテナに会えるとは限らぬ。その魔石、いや神秘石は数少ない神界と繋がる扉の様なものじゃ」
「なるほどな。んで、俺になんの様だ」
「お主には帝国の勇者として、帝国を導かねばならぬ。対価としてワシが加護をやろう。そうじゃのう、狂戦士というダブルの職業を与えよう」
「は? 帝国の勇者? ・・・・・・・もし断ったらどうする」
「わしが断ったからと言ってお前を殺すという事にはならぬよ。また言う事を聞かせるだけの力も当の昔に無い」
「へぇ~ デメリットは無いって事か?」
「ふん 生意気な。そんな訳なかろう。デメリットはある。女神や人間が勇者達を使ってやろうとしている事は、帝国に不利益をもたらし世界の破滅を助長するものじゃ。帝国の科学技術があるから、今の世界環境はマシになっていると言えるのじゃぞ?」
「なるほどな。一つ質問だ。帝国を救うって以外では俺の好きなようにやって良いのか? お前があれこれ命令するんじゃないのか?」
「ふっ そんな心配はいらん。先程も言ったであろう? 力は当の昔に無くなっておると。そもそも我々がお主に話しかけるのもこの一回限り、もはや干渉する力も無い。帝国を守れば、後はどの様な人生を送ろうと構わん。おっと、最低限勇者達や主要な大国は始末してくれるとありがたいが。例えば女神の神託を受けた光輝とか帝国とかな。お主達の間にも色々とあるようじゃの?」
光輝、あいつとはいずれ決着をつけなきゃな。思い返せば、奴はうざくてむかつく偽善者野郎だった。何一つとして共感できる部分が無かった。皆は自分に従って当然、あのグループが決めて当然の様な態度。正義にあつく人徳者だと女子にも評判だったが、その陰の顔はとんだクソ野郎だって事は一目で見抜いた。
まずは一度だけ光輝の考えに反対した奴だ。案の定取り巻きの仕業で、そいつはクラスの中で孤立しかけた。孤立しなかったのは俺が庇ってやったからだ。その時だけは俺の生まれに感謝したが……
そして最高に傑作だったのが、あの大企業のご令嬢とやらに御執心なのが見え見えだったって事だが、それだけじゃなくその御令嬢が心を寄せてるのがあの女みてぇな男の方で、それを見ていた奴がせっかくのイケメン顔を醜く歪ませてたって事だ。
表向き所謂不良グループといわれる田山等3人とは敵対しているが、陰ではあいつらに金を払ったり、たまには自ら赴いてあいつをいじめてるって事はこっちはもうお見通しなんだよ、このクソ偽善者が。奴はそれでも優秀だ。恐らく力もつけるだろう。そして真っ先に狙うのがあの女男、その次が俺だろうな……
「ああ、取り合えず力をつけなきゃならねぇから、少し先にはなるがきっちりと決着はつけてやるぜ。解った。俺は手前等帝国の庇護者になってやるよ」
「ふふふふ、解ったぞ。では楽しみにしておるぞ、おっと言い忘れておった。当然他の勇者も始末しておいてくれよ? 例えば魔族の勇者魔王やエルフ・獣人の勇者じゃ」
へえそんなのも居るんだ、どういう奴らか? と想像していると再び強い光に包まれた。気がつけば礼拝堂に居た。俺のステータスタグを見てみる
小山秀郷 16歳 男 レベル:1
職業:狂戦士
称号:勇者
体力:150
攻撃:200
防御:50
敏捷:120
魔量:50
魔力:80
魔防:50
固有技能:【戦神の祝福】【先読】
【戦神の祝福】ブーストの上位版。魔量総量の半分の消費で5分間だけステータス4倍になる
【先読】直前の軌道が分かる
称号【勇者】基礎値UP・成長速度三倍
これは良い物をもらった。自分の自由と欲望の為、そして因縁の相手である光輝との決着の為に一日も早く力をつけようと決意しながら礼拝堂を出た。




