プロローグ
設定変更部分です。すみません^^;
死とはなんだろうか? 思い出してみれば、俺はつねにそれを考えていたような気がする。
この暗く周りを凶悪なモンスターに囲まれながら、俺はつくづくそう思う。
「人間の肉だぁぁぁ」「喰わせろ 喰わせろ」「憎い…人間が憎い」「返せ…返せ…俺の人生を返せぇぇぇ」
「悪いな、俺はもう人間とは言えないんだ。ソウルドレイン!!」
周りをホーリースピリットよりも遥かに強力、世界を滅ぼすと言われる魔王も彼等に比べれば雑魚だと言われる闇人に囲まれながら、俺は奴等そのものを吸収して力とした。
「ふ~ 一息ついたか。しばらく休むか…… くっそ、俺の人生、不幸の連続だな。奴等、絶対に覚えてろよ」
そう愚痴りながら俺は今までの人生を振り返る。
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決して自慢したいわけではないが、俺の人生は人より不幸な生活を送ってきたと言えるだろう。小学校入学式の日には突然原因不明の高熱を発症して入学式を欠席。その後体調が優れない為に、体力強化もかねて柔道教室とテレビで観た○ろうにの影響で居合・合気道を教えている桐生道場にも通った。
体力系の習い事のせいで成績が悪かったんじゃないか? と言われれば、決してそうでもない。小学校時代は通知表は平均4で、特に理科は5だった。合気道や居合も小学生ながらそこそこの成績だ。どうやらその手の運には恵まれているらしい。
だが俺の運の良さはあくまでそれだけだった。4年の時、事件は起こった。突如家に二人組の男が押し入ってきたらしい。以前父が免許証の入った財布ごと落とした合鍵を使い押し入ったそうだ。
らしい、そうだ、というのはその日俺は道場で 桐生慶二・ 操師範夫婦の薦めで宿泊に招かれて家に居なかったからだ。ちょうど食事中だった20時頃に警察から電話があったらしく、電話を切った奥さんが「コウくん、コウくんのお家で事故があったみたいなの。今からちょっと様子を見に行ってくるから大人しく留守番しててね」と言って出て行ってしまった。家にいつでも帰る事が出来ない状況や両親と妹に逢えない不安に自然と涙が出てきて泣きながら寝た。そして翌日学校を休んだ時に事件のあらましや、遺体の顔を見ることが出来ない理由が盗み聞きしたために理解できた。
父 武志はすぐに殺害した上に肉塊に、母 佐世子や妹 香織は犯されながら全身をメッタ刺しにされた上に父と同様肉塊にされ、顔なども修復不可能な状況だったという。葬儀の場に掲げられている遺影をみながら俺は大泣きし、最後の対面すら出来なかった自分の不遇を呪った。
犯人は20代の男二人で結局逮捕され、シャブや危険ドラッグを買う金欲しさと性欲を満たす為に強盗を働いたと後に聞いた。殺害した動機については顔を見られた事と、なにより母と妹を見て興奮が高ぶった為だったという。そんな理由で俺は大切な家族を失った。
その後身近な血縁者という事で叔父夫婦に引き取られた。だが両親の保険金を手にしたにも関わらず、俺は○リー・ポッターよろしく扱いが最悪だった。与えられたのは4畳程の部屋、ご飯は幼稚園児用の茶碗一杯とコンビニで買ったと思われる惣菜一品に水だけ。また、同学年の息子亜紀羅からはしょっちゅう嫌がらせを受けてそれが学校中のいじめに発展した。そのいじめに積極的に協力してきたのが、エリート商社マンの父親を持つ天上光輝とガタイのでかい箕田護だった。
そんな中数少ない救いが二つあった。まず一つが桐生師範夫婦の存在だ。両親が身体鍛錬の為に習わせてくれた道場も辞めさせられそうになったが、俺に対する扱いを憤慨した桐生師範は「金は要らん!!」と言って無料で通えるようになった。これは俺の予想だが、師範の息子は幼い頃病死しており、それ以来子供が居なかった事や俺の雰囲気が似ている事から可愛がられたんだと思う。結構な頻度で晩御飯を食べる事になった。
もう一つが俺の幼馴染で常に俺の事を心配していた 小寺楓だ。大企業の創立家かつ家族で過半数をもつ筆頭株主兼会長の家のお嬢様だが、俺より身長が高くてツインテールの髪型をしたかなりの勝気な性格でいつも俺をかばっていた。俺は武術を習っていたが体が小さく肌色も生白い虚弱体質で運動神経が悪い俺は決して強くなかったからだ。
さらに叔父夫婦の手前やその息子亜紀羅との関係上、そして表面を取り繕って誰にでも優しい優等生で剣道全国大会にも出場している光輝に対して『いじめ事件』的なものにしたくは無かった。というより、光輝という存在に対して俺の発言に対する信憑性なんて無いも同然だった。
とにかく楓は常に俺をかばい続けてくれた。5年くらいになってからは「私が肩身のせまい思いをしてるコウちゃんを守るんだ」とはりきっていた。あの頃の俺は初心だったからな。俺なんかもつい載せられて「ぼ、僕も楓ちゃんの事守ってあげる」なんて言ってたっけな……
俺が中学に上がる直前に桐生夫妻が事故死した。飲酒のトラックにぶつけられたそうだ。家族が死んでから俺の最大の理解者であり常に優しくしてくれた人だった。俺はただひたすら泣いたがその度に楓が「コウちゃん、大丈夫だからね。私がずっとコウちゃんのそばに居てあげるから」なんて言ってくれていたな。
中学に上がってからも従兄弟のせいでマスマスいじめがエスカレートしていたが、その従兄弟よりも酷かったのが光輝と護だった。中学の時に別の中学でいじめ自殺が起きたが、奴はいけしゃあしゃあと「いじめからは何も生み出しません。それは自殺も同様です。皆さん、いじめは辞めましょう」なんてスピーチをしながら、陰では「お前みたいな頭でっかちの根暗ひ弱が楓に近づいてんじゃねーよ」と従兄弟と一緒に蛸殴りをしていた。
しかも感が良いのか、いつも「そろそろまずいな。俺はもう行くわ。後はお前等でこいつを好きにしてもいいぜ」と言いながら、光輝と護はそそくさと立ち去る。そして結果的にわずかばかりの注意を受けるのは従兄弟というサイクルだった。
中学三年の時、初めて好きだと告白された。
「わ、私ね、コウちゃんの優しくて直向な所がとても好き。この間もさ、迷子の子供を送っていってあげたよね? 私ね、将来 コウちゃん と結婚してあげても良いわよ」
そう言われたあの時の気持ちは、どれだけ嬉しかったか? 初めてキスをされた時、俺は感謝の言葉しか出てこなかった。両親が死んで、何かと気に掛けてきてくれた人達も死んだ。だが、僕には楓さんが居る!! なんて思ってたな……
そんなこんなで従兄弟を除いた俺達は鈴見台学園に入学する事になった。