パート07
さて、それでは戦闘カリキュラムについて細かく説明していくとしよう。
戦闘カリキュラムの目的は、聖霊との共闘が出来るようになる事。他には護衛任務などを安全に行えるようにする為だ。
聖霊の力は人間よりもはるかに優れているので、それを調整するのが聖霊使いの役目だ。
けれど聖霊の力に頼りすぎてしまうと、契約者が狙われてしまって逆に聖霊の力を弱めてしまう。そうならないようにするのが、聖霊使い自身も一緒に共闘し、自分の身を守れるように訓練するのが、戦闘カリキュラムだ。
にも関わらず、俺だけはサラを戦わせず、自分一人だけで戦っている。
それは何故か。
その理由は、サラが他の聖霊とは圧倒的に違う部分があるからだ。
「喰らえっ!」
契約している聖霊に指示を出して、挟み打ちで同時攻撃をしてきた相手に、俺は後ろに逃げる事によって回避する。
フィールドの周りにある観客席には、評価をつけるためにいる教師、この後に戦う生徒たち、すでに終わって暇つぶしに見ている生徒たちなど、様々だ。
週に一度行われる戦闘カリキュラムでは、フィールドと呼ばれる場所で生徒と聖霊の二対二で行われる。フィールドは毎回変わっていて、今回は障害物などが少ない『草原』だった。
対戦相手は、いつも成績が等しい相手を教師たちは選んでいから、不公平な事は一切起こらない。現に俺が今戦っている生徒と聖霊のコンビは、カノンよりも一つ下の、つまりは上から三番目の実力を持っている。
……まあ、そんな事はどうでもいいだがな。
「今だぜご主人!」
相手の聖霊が俺の隙をついて突進してきた。聖霊種はドワーフ型、力が人間よりもはるかに強い事で有名だ。だが、能力が制限されている今なら、ただ力が強いだけだ。
「おらっ!」
持っている聖霊用の武器で殴りかかってきた聖霊の腕を掴んで、振り下ろされた力を逆に利用して、契約者である生徒に向かってそのまま投げた。
「ちょ、ま……うわあああ!?」
「何っ!?」
相手はまさか自分に向かって投げるとは思わなかったみたいで、投げられた聖霊を受け止める為にその場に立ち止まった。まあ、それが狙いなんだが。
俺は投げた瞬間に後を追いかけるように走り出していた。
そして腰に刺してあった木刀を抜き、また同時に聖霊鎮圧用の札を取りだす。
戦闘カリキュラムでの勝負の決め方は、契約者である生徒には致命傷と同様の攻撃を受ける、あるいは降伏する。それと同時に相手の聖霊に、今取りだした札を張り付けないといけない。まあ致命傷というのは実際にその部分に当てるのではなく、首にある頸動脈や心臓などに木刀を当てればいい。
この訓練は相手が聖霊使いである事も考慮しての特訓だ。たとえ契約者を倒したとしても、聖霊だけでも反撃されてしまう。そうされないようにと考えられたのが、張り付けるだけで相手の聖霊の動きを止めてしまう札を学園は作りだした。
簡単に話してしまえば、聖霊さえなんとかしてしまえば、勝ちはほぼ決まる。
投げ飛ばされた自分の聖霊を受け止めたのを見た瞬間、俺はその隙をついて一気に懐へと入りこむ。後ろに後退されるまえに、木刀で横なぎに振って相手の足元を狙う。不意を突かれた相手はそのまま背中から倒れ込んだ。
最後に、聖霊の頭に札を張ってから膝で動けなくさせて、木刀を生徒の首――ちょうど頸動脈がある辺りに当てる。
「これで、終わりだな」
聖霊は札を張られて行動不能になり、また契約者である生徒もこれで致命傷を負った事になることを確認した教師は、戦闘カリキュラムを終えるホイッスルを鳴らした。