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パート06

 お店でケーキやパフェを食べ終わった俺達は、あの後ケンがいきなり用事を思い出したとかなんかで、本屋には俺とサラだけで行った。その後は晩飯の材料などを買い、特に何事もなく寮に帰った。

 ガリシア学園の校則として、学園に通う生徒は全員寮生活をすることとなっている。

 放課後になれば自由に学園の外に出ることが出来るが、きちんと決められた時間までに帰らないと罰則を受ける事になる。

 そして一番の特徴的な事と言えば、晩飯だろう。あの俺の養父でもある学園長の方針で、学園からは晩飯が出ない。部屋の中にある料理器具を使って自分で作らなければいけないのだ。

 とはいえ、料理が出来ない人やケンみたいにめんどくさがる人なんかは、外食なんかで済ませる。けれど俺の場合は、将来の事を考えて自分できちんと暮らせるように。それとサラが晩飯は俺の手料理が良いと言ってるからだった。

 すっかり顔なじみになった寮の管理人さんに挨拶をし、自分達の部屋に戻る。

「ただいま。さてと、晩飯が出来るまで少し時間かかるから、さっき買った本でも読んで待ってろ」

「分かった」

 そう言うとサラは素直に俺の言う事に従って、部屋の奥に行った。その間に俺はさっさと作る事にしよう。

「っと、その前に……」

 エプロンをつけながら、俺は所々に丸が書かれてあるカレンダーを確認する。

 ふむ……。この前やってからまだそう間は開いてないから、今日はしなくてよさそうだな。

 ちらりと本を読んでるサラの方を見て、特に問題がなさそうなのを確認して、台所に戻った。今日は特売日だったから、少し豪華な物を作る事にしよう。


 その晩。

 サラが寝たころを見計らって、俺はこっそりと寮の外に出た。

 寮の裏には生徒が気分転換が出来るようにと、広い庭のような物がある。俺はサラが寝た後、いつもここで特訓をしていた。

 静かに体をほぐして温まってきたら、生徒全員に支給されている木刀を真っ正面に構える。

「ふう……」

 ゆっくりと息を整えて、木刀を振る。

 ぶれない様に、まるで円を描くように。

 これは師匠が言っていた事だが、訓練でも実戦でも技を使いたいのならば、まず基礎をしっかりとするようにしろ、と言われている。それが出来なければ応用をした所で、途中で失敗して隙をみせてしまう。

 そうならないようにも、まず始めに基礎的な素振りをして、その後にまるで相手がいるかのように思いながら、実戦形式に動きを加えていく。

 どこにどんな攻撃が来てもいいように動き、かつどのように攻めれば自分にとって有利に動くかを考えながら。相手がただの人間だったらともかく、この学園には聖霊がいる。聖霊種によって力は違うから、そういう事も頭の中にいれながら特訓をしないといけない。

 そうやってしばらく特訓をしていると、どこからか目線を感じた。

「……誰だ?」

 動きを止めて、木刀を構えて警戒していると、暗闇から学園長――もとい俺の養父であるラエルが現われた。

「やあ、精が出るね」

「あんたか……。一体何をしにここへ?」

「自分の息子の頑張り姿を見に来たに決まってるじゃないか。それに戦闘カリキュラムだと、君はかなり有名なんだからさ」

 俺は持ってきたタオルで汗を拭きながら、その場にしゃがんで休憩する。ラエルは俺の許可もなく、勝手に俺の隣に座ってきた。

「放課後はすまなかったね。カノンさんを大人しくさせるためには、君を一度呼ぶしかなかったんだ」

「別に気にしてない。あれであいつが大人しくなるとは思えないがな」

「まあね。ひとまずは誤魔化しておいたけど、いずれ聞かれると思うから。覚悟はしておいた方がいいかもね」

 まるで人ごとのように話すラエルに、俺は少しいらついた。

「それで、サラちゃんの様子はどう?」

「今の所は変化はない。いつものあれが効いてるのか、サラの体はまだ元のままだ。ただそのせいなのか、体の成長が止まってしまってる」

「なるほど、聞いてた通りか。君としてはじれったいかもしれないけど、この学園にいる間はひとまず安心していい。監視局の方も手出しはさせないようにしてるから、君はゆっくりサラちゃんの事を守るんだ」

 監視局、か。

 正式名称は聖霊監視研究局部。聖霊について研究する政府直属の機関であると同時に、いつか人間にとっての脅威にならないように監視する機関だ。

 ちなみにこのガリシア学園は、監視局からの直接の関わりはないようにしている。監視局が監視するのは、この学園を卒業して一人前になった聖霊使いの聖霊と、未だに契約すらされていない聖霊のみとなっている。

「それにしても……」

「なんだ?」

「いや、体の成長が止まってるってことは、もしかすると大人になってもあのままということだろう? つまり年齢だけは大人で体は子供と、まさにロリコンなどには理想的な」

「黙れこの変態」

 そういえば、こいつはケンと同等に変態だったのを忘れていた。普段、生徒に対する態度はまさに学園長らしいのだが、俺の時だけは素を出す。ああ、だからいつもいらつくのか。

「まあその様子なら安心したよ。僕はそろそろ戻るさ。君もあまり夜ふかししないようにね」

「あんたに言われたくねえよ」

 そう言って、手をひらひらとさせながら校舎に戻って行った。

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