パート03
ケン・サーチェスは金髪で見た目は少し、街中でナンパでもしていそうな男だ。
だけどその内面はしっかりとしていて、人柄もいい。俺なんかと違って友達は多いし、教師からの印象も悪くはない。ただ少しふざけてる部分もあるが、こいつの場合はそのおかげで絡みやすい。俺のこの学園で唯一の親友だ。
「まったく、こんな可愛い子をこんな所で待たせてんじゃねえよ。誰かに攫われたりしたらどうすんだよ? なあ?」
「……遅い」
ケンの傍にいたのは、寮で待ってるはずだったサラがいた。
サラは俺の契約聖霊で、姿は人間とまったく同じだから聖霊種はヒューマン型だ。髪は黒髪で、最近伸ばしっぱなしだから、腰まで伸びてしまっている。年齢は俺の二つ下で十三歳だけど、それを知らなかったら八歳くらいの少女と勘違いしてしまうほど、幼く見える。身長も小さいってのもあるかもしれないが。
「悪い、さっきまで学園長に呼ばれていてな」
「学園長に? そりゃまたなんでだ?」
「カノンだよ。あいつが余計なお節介を焼いたんだ」
「ははー……。さては例の戦闘カリキュラムの件だな? まあ仕方ねえだろ。お前とサラちゃんの事情について、知ってる奴なんて俺ぐらいなんだし。それにあいつならそういう事にはすぐに行動する、クラス委員長なんだからさ」
そうだな、と俺は相槌を打っていると、サラが俺の傍に寄ってきて心配そうな目で俺を見てきた。
「何か、言われたの?」
「気にするな。別にサラが気にするような事じゃないし、それに呼ばれたのは学園長だったからな」
「学園長か……。確かお前の養父だっけ?」
「……まあな」
そう。実は学園長は俺の養父でもある。
幼いころにいた村がある事件で無くなってしまい、その時に生き残った俺を助けて養子にしたのだ。
だから学園長には感謝してるし、いつか恩を返そうとも思っている。
どうせ、今回のカノンの呼び出しに応じたのも、あの学園長ならただ『俺の顔が見たかっただけ』で呼んだ、って言うんだろうけどな。
「それにしてもサラ。寮で待ってろって言っただろ?」
「……だって、遅かったから」
「だとしてもだ。もしケン以外の奴に絡まれたりしたらどうするつもりだったんだ? それでお前の力が暴走でもしたら――」
「おいおいラット。そんくらいにしといてやれよ。サラちゃんはお前の事が心配で、危険を冒してまでここまで来たんだぜ?」
「………………」
ケンの言うとおり、サラは遅くなった俺の事が不安になって、ここまで来てくれたんだろう。
だとしても、俺はサラに甘くしてはいけない。
それが、俺があの村での出来事を一生背負い続ける証でもあるのだから。
……けど、今回のは俺のせいだしな。
俯いたサラの頭に優しく手をのせて、ゆっくりと撫でてやる。
「遅くなって悪かったな、サラ。お詫びに買い物と一緒になんか買ってやる」
「……ん、別にいい」
「遠慮するな。晩飯までまだ時間はあるし、好きなとこに寄っていいぞ」
「お、マジで? じゃあ俺はだな……」
「誰もケン様に言ってないでしょうが」
フェイはケンにチョップをした。フェアリー型で体がかなり小柄にも関わらず、フェイのチョップは結構痛い。ツッコミには最適だろう。
「まったくだ。というか、お前たちもついてくるつもりか?」
「まあな。そろそろフェイが読む本が少なくなってきたからな」
そういえばこいつも、自分の聖霊には甘い男だった。なんせ、図書館じゃなくわざわざ遠くにある本屋までいって本を買う奴なんだからな。
「それなら、今日は俺たちも本屋に行くとするか」
「……ん」
「そんなら、近くに旨い店があるのを知ってんだ。一緒に行かねえか?」
「知ってるって言っても、ただクラスメイトの人に教えてもらっただけでしょう」
「細かい事は気にすんなよ」
そんな風にふざけ合いながら、俺たちは学園を出た。