パート15
「…………く」
サラと契約して以来この行為を続けてきているが、何度やってもこの感触は慣れない。
始めにサラが噛みついてくる瞬間。小さな歯が当たったかと思うと、すぐに皮膚を破ってくる痛み。
次にサラが突き立てた穴から血を吸われるという感触。自然に出てくる量だけじゃ満足出来ないのか、無理やりに吸い続けて血を飲まれる。
いつもは手首からだけれど、サラの要望でたまに首から血を吸おうとする。それ故に俺自身があまり慣れてないからか、どうしても体全体に無意識に力が入ってしまう。血を吸われるというこの感触に耐えるために。
いつもは三十秒くらいで済むはずなのに、何故か今回だけサラは俺の血をゆっくりと飲み、かなり長い時間をかけてから俺の首から口を離した。
「……ふー」
サラが俺から離れた瞬間、体に込めていた力が一気に脱力して俺はそのまま横になった。
「……大丈夫?」
「ああ……今回はやけに長かったな」
「だって、久しぶりだったから……」
久しぶりとはいえ、前回にこれを行ったのは約一週間前だ。毎日やればすぐにこの感覚に慣れるんだろうが、それをしてしまうとまず俺の血が足りなくなるだろう。
それに、別にこの行為はそこまで頻繁にしなくていい。あくまでもサラの力を抑えるためにやっているだけであり、一日俺の血を摂取すればしばらくは大丈夫のはずだ。
「まあ、いい。とりあえず腹が減ったから飯にするか」
「……うん」
サラの頭をなでながら、頭の中では晩飯の献立を組み立てる。確か昨日買った野菜と肉はまだ残ってるよな……。
そう思いながら台所に行こうとすると、ネネがボーっと立っていた。
「どうしたんだ、ネネ?」
「……あ」
「あ?」
「あんた達は何をやってるのよ――――――っ!?」
いきなり大声をあげたネネに対して、俺は足払いをしたあとに、まだ残っていた聖霊鎮圧用の札を床の上に倒れたネネの頭に張り付ける。それだけで、ネネは動けなくなった。
さて、晩飯を作るか。