パート10
「……………」
はたして、これはどうするのが最善なのか。
候補としては三つ。
一つは、あの木に引っかかってる聖霊を助けて、穏便に事を済ませるか。
二つ目は、この隙に札をつけてあのままで静かにさせるか。
三つ目は、このままほおっておくか。
「…………三つ目、だな」
俺はただ何かないか探しにここに来ただけ。そういう事にしておこう。
あーあ、無駄に体力使ったな……。まあこれも鍛錬だと思えばいい。それよりも、早く帰らないとサラが心配するな。
そう思った俺は、踵を返して元来た道を帰ろうと――
「ちょ、ちょっとそこのあんた! 何勝手に帰ろうとしてんのよ! さっさと助けなさいよ!」
「……ちっ」
どうやら、俺の存在に気づいていたらしい。気配を消していたのに、意外にも勘はするどいのかもしれない。
「……それで、俺にどうしろと? 鼻から牛乳でも飲めばいいのか?」
「見れば分かるでしょ!? 誰もあんたが鼻から牛乳を飲むとこなんて見たくないわよ!」
「意外に好評なんだぞ、このネタ。前に飯食ってる時に間違えて鼻から飲んだ事があってだな」
「あんた何やってるの!?」
まあ、もちろん嘘だが。
「と、とにかく助けなさいよ! このままだとぱ、パンツが食い込んで痛いのよ!」
「……分からんでもないが、どんな助け方が望みだ?」
「え?」
「お前がどう考えてるか知らんが……俺がその木に登って助けたとしよう。すると俺は必然的にお前のあそこを見てしまう事になる。それはお前も嫌だろう?」
「あ、当たり前じゃない!」
「だとすると、他に助けられる方法としては梯子を持ってきて助ける方法だが……。それだと取りに行くのに時間がかかるし、おそらくしばらくしたら俺以外にもここにたくさんの人が来るだろう」
「そんなの嫌よ! 今すぐ、かつ私に恥を欠かせないように助けなさい!」
やれやれ……我がままの多い聖霊だな。
とはいえ、このままだと何かの拍子に力を暴走させてしまうかもしれない。まだ契約がされてない聖霊の力は、個体によるが中にはかなり強力な聖霊もいる。
こんな奴が、そんな力を持ってるとは思えないが……。
「ちょっと、今私を侮辱するような事考えなかった?」
「いや、なにも考えてないが」
ここにケンやカノンがいたら良かったが……。いや、ケンの場合だと余計ややこしくなってたに違いない。どの道、ここは俺がどうにかするしかないか。
枝の太さを見ると、細くは無かった。聖霊を一人ひっかけても折れないのだから、かなり頑丈なんだろう。
というか、よくパンツ破けないな。
「さて……」
俺は腰に刺してあった木刀を抜いて構えた。