プロローグ
村が、真っ赤に燃えてる。
見慣れた家が、人が、何もかもが燃えて消えていった。
そんな中を、ただひたすらと僕は走っていた。
さっきまであちこちから親しかった大人たちの悲鳴が聞こえていたのに、今はそれすらも聞こえなくなってしまった。聞こえるのは僕の息遣いと、家が燃えている音だけだ。もう、生きているのは僕だけなんだと思った。
それでも、誰かが生きてないか探し続ける。
普通なら生きるために早くこの村から出るべきだった。けれど、一人だと不安で押しつぶされそうだったから、誰でもいいから生きている人を探していた。
けれど探しても探しても、見つかるのは死体ばかりだった。それを見つけてしまうたびに涙が出そうになったけれど、必死に耐えた。
「…………っ」
すると、どこかから泣き声が聞こえてきた。
(この声……。もしかして!)
急いで泣き声のする方向に走る。
村の中心部にある広場に着くと、そこはもういつもの広場とはまったく変わっていた。奇麗な水を噴き上げていた噴水は壊れて水は止まっていた。そして地面には大きなヒビがあった。おそらくこの広場が一番被害が大きいだろう。
その壊れた噴水の下に小さな少女が、ぬいぐるみを抱きながらうずくまって泣いていた。
「ニコラっ!」
名前を大きな声で呼ぶと、二コラは顔を上げてこっちを見た。
「おにぃちゃぁん……」
「大丈夫か、二コラ?」
僕が近づくと、二コラはすぐに僕にだきついてきた。安心させるために頭を撫でてやりながら怪我がないか確認する。見た所、服が少しやぶれていたり擦り傷が出来ているだけで、怪我は無いみたいでほっとした。
けど、いつまでもここにいたら死んでしまう。早く二コラを連れて逃げないと。
その時だった。
「―――――――!」
そいつは僕と二コラを見下すかのように、空に浮かんでいた。
背中には悪魔のような翼が生えていて、その両手には堅い鱗で覆われていた。人の形をしていたが、説明するのが出来ないその圧倒的存在を感じて、走り出そうとした両足が動かなくなり、体が震え始めた。
そいつは僕たちに気付いたようで、ゆっくりとこっちを振り向いた。
その顔には、まるで新しい獲物を見つけたかのように――笑みを浮かべていた。