風と貴方は気まぐれで・・・
短編恋愛小説第三弾~。。。
長めの短編ですが、読んで下さると嬉しいです!
ちょっと悲しい所もありますので!
風が私の髪を優しく揺らす。
ふと遠くの木陰に人影が見えた。
その人はシンプルは病院の服を着ており、足を伸ばして青い空を見上げていた。
大きな鍔の付いた帽子を押さえ、私は風に押されながら彼に近付く。
「・・・あなたは誰?」
風に消えない位の声で聞く。
彼はビクリ と肩を動かし、そっとこちらを振り向く。
「・・・君は?」
返事に返事を返すのは可愛い表情で微笑む少年だった。
返事に答えなかったから少しムッ とするが、彼の笑顔につい答えてしまう。
「私は『はとね』。平仮名で『はとね』よ。」
素っ気無く答えるが彼には十分な様だ。
ニッコリ と笑い、私の手を両手で包み込む。
「・・・っ///」
「ね。明日も此処に来てよ。待ってるからね。」
可愛らしく首を傾げて優しく言う。その笑顔は彼が少年だというのにとても可愛く感じた。
破壊力満点の笑顔を残し、彼は「じゃあね。」と駆けていく。
後ろ姿を切なく見つめている自分に気付き、ハッ と我に返る。
「ち、違うわ! べ、別に寂しいな~なんて思ってないわ! って誰に言い訳しているのよ私は!!」
慌てて捲くし立てて頬が紅く染まっていることを誤魔化す。
周りには誰も居ないからわざわざ言い訳する必要はなかったのだけど。
「・・・明日・・・。」
そう呟き、また何時もの様に風を肌で感じる為に目を瞑る。
「・・・どうして彼の顔が浮かぶんだろう・・・」
その疑問は何時もの様に風に洗い流されずに頭に残った。
でも何時もの不愉快な気分になる事はなく、むしろ心を風で綺麗にされた様にスッキリとした心地良い気分がした。
* * *
居た。彼は昨日の様に同じ木にもたれ掛かり足を伸ばして空を見ていた。
私は昨日と同じように帽子の鍔を持って、彼に近付く。
「き・・・来たわよ///」
唇をキュッと引き結んで彼に聞こえる様に呟く。
「クス。顔が真っ赤だよはとね♪」
「よ、呼び捨てで呼ばないでよ! ・・・っ///」
「え~・・・じゃあ・・・はとちゃん?」
「はとじゃないわよ!」
「クスクス。冗談だよはとね♪」
「も、ういいわ・・・。」
首まで真っ赤になりながら頭を抱える。
「それで・・・貴方の名前は何なのよ。私だけが教えるなんて不公平でしょ!」
強めに声を張り上げて詰め寄る。
彼はそっと人差し指を立てて口に付け、小さく囁く。
「ひ・み・つ♪」
「っ///」
耳に付くぐらい口を近付けられていたからか更に顔が紅く感じるのを感じた。
悶えて居るとふと彼は腕時計を確認し、顔をさっと曇らせる。
「・・・時間か・・・。 もう行かなくちゃ。 じゃあねはとね♪ また明日!」
「え、ちょっと!? もう行くの!?」
彼が急に遠くまで駆けて行こうとするのでつい引き止めてしまう。
その言葉に彼がさっきとは打って変わって嬉しそうな表情で振り向き、風に髪をたなびかせながら言う。
「・・・ありがとう♪」
「え・・・?」
とても嬉しそうに微笑む彼に私は見つめる事に嬉しさを感じながら何時の間にか微笑む。
「・・・明日は私が待ってるわ・・・。」
その呟きは風に掻き消されたが彼はその言葉が聞こえたように更に笑顔になった。
* * *
「あ・・・お、おはよう!」
「クス。おはようはとね♪」
またあの木の下で挨拶を交わす。
私は何時彼が来るのか分からなかったが早めに着た。彼も調度いい感じに彼も向かっている途中だった様だ。調度木の下ではち合う。
「い、何時も10時に来てるのね貴方は。」
「そうだよ♪ よく分かったねはとね♪」
同年代と思われる彼にそんな事言われても馬鹿にしている様にしか思えない。
が、私の頬はただ紅く染まるだけだった。
「・・・っ/// そ、そういえば貴方はやっぱり名前は教えてくれないのね。」
頬が紅いのは隠すために言った言葉に、彼は少し困ったような顔して直ぐに微笑む。
「うん秘密♪ 謎があるほうが魅力的でしょ?」
「み、魅力的って・・・そんな訳ないでしょう///」
魅力的なのは本当の事だから否定するのが苦しい・・・。
そんな他愛のない会話をして私達は笑う。
お互い、肌を撫でる風が好きで心地良いこの木の下も好きだった。
だからこそ風を受けながらゆったりと話すのが楽しく、何時までも此処に居たいと思えたのだ。
その関係は何日も何日も続いた。
何時しかお互いが一緒に居ることが当たり前となるほどに。
名前すら知らない彼だが、名前を知らなくても大丈夫だと思えていた。
でもある時から彼は来なくなった・・・。
それは何時もの様に私が風を感じて待っていた日のことだった。
* * *
「・・・どうして来ないのよ・・・。」
彼が来なくなって一週間が経った。
私は不安に駆られながらも待ち続けた。
彼の事だから何時もの様に笑って来ると。
でも彼は来ない。
その不安は風をいくら感じても消えることなく私の中で渦巻く。
「・・・どうして・・・。」
名前すらも知らない彼は何時の間にか私の心の中心となっていた様だ。
彼と離れてからその事を私は理解した。
彼は私にとって居なくてはいけない存在だと・・・。
「会いたいよ・・・。」
風がその言葉に反応する様に吹き荒れる。
会いたい・・・。彼に会いたい。
「確か・・・病院の服着ていたよね・・・彼は。」
そう言って足を何時も彼が帰っていく方向に向けて歩き出す。
彼の居るところは病院のはず。
ならこの方向にある病院の何処かに彼が居るはず。
「待っててくれるよね? 絶対に待っててね! ・・・その時は私の気持ちを言ってあげるから。」
その決意を胸に私は走る。
彼の通る道を辿って。
* * *
「すいません。ここに私と同じくらいの男の子っていますか?」
「男の子・・・ですか。それだけじゃあ・・・分からないですね、すいませんが。それにこの病院には大体が老人なので・・・。」
「そうですか・・・ありがとうございます。」
お礼を言って看護婦さんに頭を下げる。
最初に目に付いた病院に彼はいないようだ。
この町は小さく、人口も少ない。子どもの数も少ないので入院している様な子どもは圧倒的に少ない。
だから『入院している男の子』というには限られている。
直ぐに見つけられるはずだ。
「すいません。ここに入院している男の子っていますか?」
「男の子、ですか・・・。ここには数人居ますが・・・。」
「ほ、本当ですかっ!?」
「は、はいそうですが・・・。」
二つ目の病院で呼び止めた看護婦さんの言葉を最後まで聞かずに走り出す。
この病院の何処かに・・・彼が。
「・・・何処の病室なんだろ。」
階段を上りきってから病室の場所を知らないことを思い出す。
一度下に戻って入院している男の子について聞こうとすると、声が聞こえてきた。
「大丈夫かしら・・・あの子。」
「微妙だな・・・。医者に聞いた話では大分危ない、との事だしな・・・。」
その会話は、夫婦と思われる二人の大人の会話だった。
二人は病室の前で小声で話しており、ぎりぎり聞くことが出来た。
「あの子ったら・・・どうして外に出たりしたのか・・・。」
「ああ。前はこんなに頻繁には抜け出したりは・・・。」
その少ない会話から彼の両親だという事が窺えた。
そして私と会うために彼の病状が悪化したことも・・・。
「私のせいで・・・。」
気付けば走り出し、彼の両親を押しのけて部屋に入っていた。
「ちょっと!」
「なんなんですかあなたは!」
後ろで両親の非難を聞き流し、私は彼の姿を見つける。
「見つけた!」
献血をするためのやつやら色々な紐やらが付けられていて痛々しい姿の彼に私は表情を歪める。
「ねぇ・・・ねぇ・・・目を覚ましてよ・・・。」
軽く揺するがピクリとも動かない。
「ねぇったら~・・・。」
目から溢れ出す涙を無視しながら彼を見つめる。
「あ、あなたはどちら様で?」
彼の母と思われる女性が恐る恐ると話しかけてくる。
「わ、私は・・・。」
名乗ろうと前へ乗り出すと、何かに腕を引っ張られた。
ふと見ると彼が薄く目を開いてこちらを見ていた。彼は何時もの様に優しく微笑み・・・
「・・・ごめんね、はとね。・・・何時もの場所に・・・行けなくて・・・。」
少し悲しそうに私に謝った。
「いいの・・・いいの! でも・・・教えてくれれば私から行ったのに・・・。」
何も教えてくれなかった事にショックを受けつつも彼の目を見続ける。
涙で濡れた目を更に潤ませながら彼の言葉を聞く。
「僕は前から病気だったんだ・・・。今の技術では治せない様な病気でね・・・。
学校にもろくに行けなかったから生きる理由はなかった・・・。
ただただ過ぎ行く人生を達観していたんだ。
でも君が――はとねが現れた。
はとねが僕の生き理由になったんだよ・・・。」
まるで最期の言葉の様に彼が言う。
「でも・・・もう無理みたい・・・ごめんねはとね。」
涙が止まることを知らないようにどんどん溢れ、シーツに染み込んでいく。
「・・・いやだよ、何処にも行かないでよ! 私はまだ貴方の事、何も知らない!
まだ何にも知らないんだよ!? それに・・・私だって・・・貴方が居ないと!」
何時になく大声で叫ぶ私を驚いたように彼の目が少し見開かれる。
「私は・・・一人だった! 家族も親戚も友達も居なくて・・・一人だった!
皆からは何時も酷い事を言われて・・・自殺だってしようともしたわっ!
そんな私に生きる理由を与えてくれたのは・・・貴方なの!!
そんな貴方が・・・勝手に居なくなる事は、私が絶対に許さない!!」
こんなに我を失って叫んだのは何時振りだろうか・・・。
何時も何時も強くあろうとしていたからこんな事は一度もなかった。
ましてや自分の弱さを見せるなんて・・・。
でもそれは、彼が私の中で大切で失くしたくない人だったから。
彼の全てが知りたい。彼に私の事を知って欲しい。ずっと私の傍に居て欲しい。
その願いを必死に私は彼に伝える。
彼はずっと驚いた表情で私を見ていたが、スッと目を細め、綺麗な微笑みを浮かべ、私の頬に手を当てる。
「・・・ありがとう・・・はとね。 あのね、僕は君が好きだよ・・・。
あの日、あの木の下で君を見たときからね・・・。」
急の告白に泣いているにも関わらず、頬が紅く染まる。
「・・・君が僕の名前を聞いたとき、僕はわざと教えなかったんだ・・・。
だって・・・教えてしまうと、もう、会えない様な気がしたからね・・・。
だからずっと教えなかったんだ・・・。」
彼はあの日の事を思い出しているのか遠くの方を微笑みながら見つめている。
「っ・・・。 そんな事しなくても・・・私はまた会いに行っていたよ!
だって・・・私だって・・・貴方の事が、好きなのだから!」
心の中にあった思いを出し尽くす様に声を絞り出す。
この思いを伝えるために。心の奥まで伝わる様に。
「・・・はとね・・・僕の名前は『かいと』。
君と一緒で平仮名で『かいと』、だよ。」
「・・・っかい、と! かいと、かいと。」
心の奥深くまでに刻み込む様に何度も呟く。
「・・・最期に・・・僕の名前を言って・・・?」
まるでもう生きる事を諦めているように彼が囁く。
私はその事に衝撃を受け、何時の間にか叫んでいた。
「っ! 聞きたかったら・・・生きなさいっっ!!」
何時もの様に上から目線の口調になってしまったが彼は笑顔だった。
「・・・クス。そうだね。頑張るよ・・・頑張るから・・・傍に居てね・・・?」
「居るっ! ずっと居るからっ! 死ぬなんて、許さないからっ!!」
そして彼は微笑みながらゆっくりと目を閉じた―――。
「ねぇねぇママ。 どうしてあたしにはパパがいないの?」
「・・・フフ。 貴方のパパはね遠い所に行っちゃったのよ?」
「とーいところ? ・・・んーよくわかんない!」
「クス。何時か分かるわよ。」
そんな会話は彼との思い出の場所で風と一緒に奏でられていた。
彼はもう居ない・・・。
でも彼との愛の結晶はここに居る。
彼との幸せの時間はまだここで生きている―――。
連載でいいんじゃないかな~ と書いてる時に思ったりもした小説でした!
どうでしたか?
感想などお待ちしてます!!




