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帰ってきた七夕の物語(7)
「う・・・」
しばらくして、織姫が目覚めた。
その横で、片付けたはずの膳を持ってきて、彦星が手酌で杯をあおっていた。
目覚めた織姫に気付くと、とても優しい表情になり、
「まだ寝ておれ」
と、声をかけた。
ふ、と横になったまま、織姫は笑みを浮かべ、
「やられてしまいました・・・」
と、つぶやいた。
さみしげな口調で。
「大切な夜が、終わってしまいますな・・・」
ぽつりと、
言った。
彦星は、無言で、織姫の髪をなでている。
庭では、ふたたび虫が鳴いている。
部屋の隅で、香炉から、かぐわしい香りのする煙が、ゆらめいている。
く、
と杯をあおった彦星は、不意に大声で笑い出した。
「なあに、織姫よ、すぐに次の逢瀬よ。たかが1年、今までの年月に比べれば、何ほどのものかよ」
くしゃ、
と、やさしく、太い指が織姫の髪を撫で回していた・・・
(了)