帰ってきた七夕の物語(5)
まだ、別の技を研究したというのか!?
織姫は、ぞくぞくと鳥肌を立て、彦星が仕掛けてくる『何か』を待った。
彦星は、にぃっ、と唇の端を吊り上げ、
「ところで・・・織姫よ」
「なんでございましょう?」
「ぬし、上と下とどちらが好みじゃ?」
「?」
織姫は、何を問われているのかわからない。
「上から攻めるのと、下から迎え撃つのとでは、どちらが得意かと聞いている」
織姫は、目を見開いて、
「そういうことであれば・・・私は上になるのが得意でございます」
彦星の真意を探りながら、言った。
「そうか、我はどうやら下からの方が、向いておるようだ・・・」
言いながら、彦星が動いた。
言いながら、膝に乗せていた左手を、すっと目の前まで持ち上げたのである。
「このまま止まっていてもつまらぬ。どちらの『得意』が勝るか、試してみようぞ」
「・・・?」
より一層無防備になった彦星に、さらにさらに織姫が戸惑う。
「好きなように仕掛けてこい、それを我が受ける」
だらりと、左手を差出した姿勢で、彦星は宣言した。
「好きなように・・・?」
きっ、と織姫が表情を引き締める。
たしかにこのまま動かなければつまらない。
そして、この状況では、動いて仕掛けるべきは織姫であった。
戸惑いは消えた。
織姫が動く。
「いざ!!」
差し出された彦星の左手を、織姫は両手で握り、ねじり上げようとした!!
その瞬間、
ふたりの勝負がついていた。
(続く)