表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

帰ってきた七夕の物語(2)

り、


り、


り、


と、庭の片隅で虫が鳴いている。

 

開け放った縁側から入ってくる柔らかな夜風が、香炉から立ち上る煙を、ゆらめかせている。

 

 

座敷は、静かであった。

 

 

小さな膳が準備されており、彦星がそこへ座り、織姫の酌を受けた。

 


恋人たちは静かに、語り始めていた。

 

 


「織姫よ、我は十分に研究をしてきたぞ」

 

織姫に酒を注がれた杯を口にして、得意そうに彦星がつぶやく。



「ほほ、楽しみでございますな。実は私も工夫を重ねてきたところでございます。」


織姫は頬を心もち紅に上気させながら、乾された杯に酒を注ぐ。

それを、くいっとあおり、彦星の眼が楽しそうに輝く。

 

 

「おう、それは楽しみよな」

 

「ええ。実に」

 


二人の視線が、意味ありげに、ねっとりと絡まり合う・・・

 

 

そのまま、彦星は杯を卓に置いた。

 

織姫も、徳利を置く。

 

 

 

「もうお酒は、よろしいのですか?」

 

「おう、本題に入ろうではないか。」

 

 

 

嬉しくてたまらない。といった様子が、言葉の奥底に隠れているのが、ありありと分かるような口調で、彦星が言った。

 

織姫もそれを感じ、目を細めた。




り・・・

 

 

 

それまで、庭で鳴いていた虫たちが、急速に静かになっていく。


夜風も、ぴたりと止まった。

 


 

恋人たちの夜が、始まろうとしていた・・・


 

 


  

 




 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ