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「い、いえ……す、すみません…」

まだ収まらないのかクスクスと笑っているロードにマリアベルは頬を真っ赤に染め俯いている。

笑い終わるとロードは一つ深呼吸をしてから会話を始めた。

「今日はとても良い日ですね 」

微笑みながらそう言い出したロードに『そうなんですか?』とつい聞き返してしまった。

「えぇ。だって姫のあんな一面が見られたのですから 」

そう微笑みながらに言われマリアベルは再び頬を染めてしまった。

「ところでー…」

そこで突然またもや話を支えられてしまったマリアベルは不思議そうにロードの方に視線を向けた。

「マリアベル姫。あなたは5年前にサルーナ国の東、サンメリアにもう少しで入るところに大きな泉がありますよね?あそこで歌を歌っていたことはございますか?」

そう問われ、マリアベルはしばらく考えた後返事をした。

「はい。あります。あの日、私は10歳になって生まれて初めて城の外に出ることを許され嬉しさのあまり従者などを置いてそのままサンメリアがある寸前まで行き、あの泉を見つけてあまりにも綺麗な場所だったので歌を歌ったのです。それが何か?」

王族は10歳を迎えるまでは城の外に出ることを許されず、町の者達に存在を知られることもできなかった。10歳の誕生日に初めて盛大にパーティーをして姫の存在を世の者に知らせるのだ。

「いえ。なんでもありません。教えていただきありがとうございます 」

そう言うとロードはマリアベルに深く頭を下げた。

そこでマリアベルは何か思い出したかのように『あっ』と声を上げ、瞳を輝かせながらロードに言った。

「ロード様!今日のパーティーで私歌を歌うことになっております。楽しみにしていて下さいね!大きく盛大なパーティーでは私が歌を披露することになっているんです!お母様やお父様もいらっしゃるので私頑張ります!」

マリアベルのその言葉を聞くとロードは表情を曇らせてしまった。何かいけないことを言ってしまったかと思いマリアベルはロードに問いかけた。

「ロード様…?どうかなさいましたか?」

「あ、い、いえ。ただ、パーティーで歌を披露されるということは、マリアベル姫はダンスはおやりにはなられないのですよね…?」

どうしてそのような事を聞かれるのかマリアベルにはわからず、とりあえず聞かれた事に答えた。

「いえ、ずっと歌っているわけではありません。前半だけです。後半は演奏楽団などのすばらしい演奏がホールに響くことでしょう 」

それを聞くとロードはいっきに表情を明るくすると、マリアベルの手を取り言った。

「それでは、ダンスのお相手をさせていただいてもよろしいですか?歌い終わった後ステージ傍まで迎えに行かせていただきますので 」

手をもたれ、そのまま微笑みながらに聞かれ、マリアベルは頬を薄く染め『はい』と返事を返した。


あの後、ロードは元来たマリアベルを部屋まで送っていくと『それでは支度が済んだら迎えに参ります』そう言って自室に戻って行った。

マリアベルは部屋で着替えをしていると突然誰かにノックをされロードかと思い、侍女にノックした人物を確かめてもらおうとすると、突然扉が勢いよく開けられ。マリアベルを強く抱きしめた。

部屋に入ってきたのは瞳と同じ色のドレスに髪には珊瑚をモチーフにした髪飾りをぶら下げ、片手には扇子を持ち首には髪と同じ色に光輝いている宝石のついたブレスレットをつけたカナリアとクリーム色のドレスに蝶と春の花をモチーフにした髪飾りに扇子を持ち首には赤い炎のような色の宝石のうまったブレスレットをぶら下げたルルベルだった。

「マリア!!!さっきはあの後大丈夫だった!?いじめられなかった!?あの時は、あなたが怒ってたから退いたけどずっっっっっっっっと心配してたんだからね!!!」

確かにさっきは怒ってしまったが、マリアベルは正直に言うとカナリアやルルベルからこのように心配されるのが嫌いではなかった。

カナリアがマリアベルを抱きしめながら叫ぶようにして呟いていると、ゆっくりと歩み寄ってきたルルベルがマリアベルの前で足を止め無言でコクコクと頷いていた。どうやらルルベルもカナリアと同じ考えだったようだ。

「私も、さっきは怒鳴ってしまってごめんなさい姉様方… 」

カナリアの腕の中でマリアベルが元気なさげにそう呟くと、マリアベルの頭の上に乗っていたカナリアの手が、まるで頭をなでるように上下に動き。

「大丈夫よ。あれは私たちが悪かったんですもの。大切な妹に虫がついたらいやだからってずっと二人の後を付けて行って、あげく部屋から歌声が聞こえなくなっても二人が出てこないのが心配になって覗いてしまった私が悪いんだもの。ごめんなさいね。でも、私達の気持ちもわかってね 」

「後付けてたんですか…。ですが、カナリア姉様。ロード様は悪い方ではないと思います。とても優しい方です。それに、あの優しさはおそらく私限定のものではなく世の女性皆さんに同じような優しさをお見せしているんだと思います。なので姉様方が心配するような事はございません 」

マリアベルがそう言うと、カナリアはマリアベルから少し離れ、頭に乗せた手をまた上下に動かしながら言った。

「そう…。わかったわ。あなたがそこまで言うのなら…少しだけ、信じてみましょうか 」

カナリアのその言葉を聞くとマリアベルは俯いていた顔を上げ、カナリアの方を見ると、カナリアは微笑んでいた。

そしてつられるようにしてマリアベルも微笑みを返した。

「っつ!ありがとうございます!カナリア姉様!!」

そう言うと、そのままルルベルの方に視線を向け、聞いた。

「ルルベル姉様は… 」

マリアベルからそう聞かれると、ルルベルは一瞬カナリアの方に視線を送ってから

「私も、いいわ 」

と、だけ言った。

ルルベルのその言葉を聞くと、マリアベルは今までにしたこともないような笑みを作り

「ありがとうございます!姉様方!」

と、い言った。

その後、マリアベルは大急ぎで用意されていたドレスに腕を通し、カナリアに髪を結ってもらった。

マリアベルのドレスは、薄い青色のドレスに靴はまるで透明のように白く美しい靴に、髪には真珠を散りばめ、結った部分には月をモチーフにした美しい黄金色の髪留めをつけ、首には現在の王妃であるマリアベルの母から子どもの頃にもらった青銀色をした宝石をつけたネックレスとぶら下げていた。

「さぁ、お父様やお客様方がお待ちだわ。行きましょう 」

そう言ってカナリアはマリアベルに手を差し出すが、マリアベルはその手を取らずに首を振りながら顔の前で両手の平をカナリアに見せるようにして横に振った。

「マリア?どうし…」

カナリアが不思議がり一歩マリアベルに近づこうとすると、戸を誰かにノックされた。

「どなたかしら?」

カナリアがそういうと同時に次女が扉を開け、ノックした人物に目をやるとマリアベル達のほうに視線を送り告げた。

「メルツェッタ王太子殿下のお見えです 」

次女のその言葉を聞いてからマリアベルは視線を少しカナリアのほうにむけると、カナリアの額にうっすらと怒りマークが浮かび上がっているのにおびえてしまった。

「……入っていただいて 」

「かしこまりました。 どうぞ 」

促されるように部屋に入ってきたロードはマリアベルを見るなり目を見開いて、口を開けずに放心したようにその場にたたずんでしまった。

――――――どうなさったのかしら?―――――

「ロード様?」

マリアベルが不思議そうに訊ねると、我に返ったようにロードは見開いていた目を細め言った。

「あ…。し、失礼いたしました…あまりにも…あまりにもお美しくて…釘づけになってしまいました… 」

そう、愛おしい者を見つめるような瞳で見られながら言われると、マリアベルは目を見開いて頬を染めてしまった。

「ロード様もお似合いです 」

ロードは、金糸でところどころに飾られた、青色の服を着ていた。





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