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月の女神

「マリアベル姫は姉様方にとても気に入られておいでなのですね 」

「はい。ですが…ちょっとやりすぎでは…?と思える時が良くあります…」

二人は城の通路を歩きながらにそう話し合っていた。マリアベルがそう言うと、ロードは薄く笑い声をあげた。

「ははっ。私もさきほどはハエと言われてしまいましたからね 」

ロードが笑いながらにそう言うと、今まで忘れていたかのようにマリアベルが慌てながらにロードの前に立ち、深く頭を下げた。

「も、もうしわけありません!姉様達に悪気があったわけではないのです!お許しくださいませ!」

「謝らないで。お姉様方の気持ちわからなくもないから 」

――――ロード様にもご兄弟がいらっしゃるのかしら?でも確かロード様は一人っ子のはず…?―――

マリアベルが考えているとロードが話の続きを話し始めた。

「私だって、もしこんな可愛い妹がいたら可愛くて可愛くて仕方がなくなってしまいます。きっと、お嫁にも出したくなくなるでしょう 」

「へ?」

マリアベルはロードの言葉に頬を真っ赤に染めてしまった。

だが、ロードはそんなマリアベルの反応を楽しんでいるようだった。

「ところでー… 」

すると、ロードは突然、話題を変えた。

「マリアベル姫は歌がお好きなのですよね?」

そう聞かれ、マリアベルは表情をいっきに明るくして元気に返事を返した。

「はいっ!!」

そんなマリアベルの表情を見てロードは一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに元の表情に戻り話を続けた。

「姫は町では『月の姫』と呼ばれているのですよね?その名のとおり美しいほどの髪と瞳の色ですね。そして、歌も上手いだなんて。一度聞かせていただいても構いませんか?」

しかし、マリアベルは一生懸命顔の前で手を振り言った。

「そ、そんな!私の歌なんて…ロード様にお聞かせするほどのものではありません…。それにロード様の国は音楽が盛んな国。すばらしい歌姫の歌をたくさん聞いてきているでしょう?私は足元にもおよばず恥ずかしいです…」

「上手い、下手なんてありません。ただ、ただ歌を、楽しく歌えればそれで構わないのですよ。歌というものは真面目に綺麗に歌うためのものではありません。楽しく、聞いてくれている相手の事を思って歌うものです。大丈夫、あなたの歌は誰の歌よりもすんだ歌声のはずです 」

そしてロードにもう一度『聞かせていただけませんか?』と微笑みながらに聞かれたマリアベルは頬を薄く染めたまま小さく頷いた。


マリアベルとロードは城にある一つの部屋にやってきた。そこは昨日、マリアベルがピアノを弾きながら歌を歌っていた部屋だ。

ピアノの傍に行くとマリアベルはゆっくりと息を吸って歌い始めた。

「心~のこ~えを~あなた~にき~かせ~」

マリアベルが歌っているのを離れたところからロードが見つめていた。

ロードの表情はどこか、愛しい者を見守っているような表情だった。

――――やっと、やっと見つけた。私のー…――――

マリアベルが歌い終わると拍手の音が聞こえ、聞こえる方に視線を向けると、そこにはロードがいた。マリアベルはその場で頬を真っ赤に染め下を向いてしまう。

「素晴らしかったですよ。姫。今のは『女神の悲愛』ですね。姫はこの曲の物語をご存知で?」

突然問われ、マリアベルは首をかしげてしまう。するとロードは一つ頷くと語りだした。

「昔、ある遠くの国の森の中にあまり他の村の人たちには知られていないほど奥に一つの村がありました。その村にはそれはそれは美しい身なりで歌声のすばらしい女性が住んでおりました。ある日、その女性が森の中で木の実を拾っていると、一人の若い青年が倒れていました。女性は急いで自分の家へ青年を連れて行き手当しました。その後青年は傷も綺麗に治り、女性に助けてもらった礼に家の仕事を手伝いました。次第に二人は恋に落ち、最後には子どもができました。ある時、女性のお腹にまだ子どもがいる時、青年が女性に話しがあると呼び出し言いました。『私は隣国にある大国の王子なんだ。君を妃に迎えたい』と言われました。すると、女性は喜びの表情を浮かべた後悲しみの表情をうかべて言いました。『申し訳ありません。あなたと行くことはできないのです。』青年がその訳を聞くと『私は神に遣わされて月の女神になるために地上に降りた者なのです。私はもう天上世界に戻らなければなりません。』女性の話を聞いた青年は驚きました。その次の日、青年が布団の中で目を覚まし、横の布団に視線を向けると女性の姿はなくなっていました。青年は探しましたが、どこにも女性の姿はなく、青年は女性への気持ちを心に残したまま村を後にしました。青年が帰って行くところを天井世界から見つめていた月の女神は1曲の歌を歌いました。それが『女神の悲愛』と呼ばれているんです。女神のお腹にいたはずの子どもがその後どうなったのかわ、誰も知りません 」

そんな話があったのかと口に手を付け薄く瞳に涙を浮かべてしまっていた。

ロードはそんなマリアベルに手を差し出し人差し指を瞳にあて涙を拭ってくれた。

「泣かないでください…。あなたに泣き顔は似合わない…。それに、女神と青年はそんな別れになりましたが、きっと女神の子どもがこの世界で家族をもって幸せに暮らしていると私は思うのです。なので、泣かないで。女神もきっと自分の子どもが幸せであることに喜んでいるはずだから 」

そう言うロードの視線をマリアベルの視線が重なり、二人はしばらく見つめ合っていたが。突然の声に驚いてしまった。

「な、ななななな何をしているの!!??」

二人は視線を放し扉の方に向くと、そこにはワナワナとこちらを見ているカナリアとルルベルの姿があった。カナリアはマリアベルの表情を見るなり、ルルベルとともに駆け寄りマリアベルを二人で羽交い締めに抱きしめロードを睨みつけた。

「サンメリア国第一王太子殿下ロード様!我が国の宝であり私たちの可愛い妹のマリアベルを泣かすとはどういう事かご説明を!」

『内容によってはしばくぞこら』と、語っているような目でロードを睨みつける。

ロードは1歩後ろに下がり、降参と言うように両手を顔の前まで上げ、カナリアたちに平を見せながら言った。

「も、もうしわけあり…」

「姉様方…。いい加減にしてください…」

ロードが謝罪の言葉を言おうとするとマリアベルの声がそれを遮った。

マリアベルが小刻みに震えながらそう言うと、カナリアとルルベルはすぐさま抱きつく手を放し1歩マリアベルから離れて言った。

「だ、だってあなた泣いているじゃない!この男にいじめられたからじゃ!」

カナリアがそう言うと、カナリアの隣まで歩み寄ってきたルルベルがコクコクと頷いた。

「わ、私が泣いているのにロード様は関係ありません…。突然現れて、早とちりしたあげく、お客様であるロード様に暴言を吐くなど言語道断!!ロード様にお謝りください!!」

突然マリアベルが怒鳴った。一瞬だったがマリアベルの横に巨大な大蛇が姿を表したようだった。

カナリアとルルベルは同時に「ヒイイ!!」と叫び。「申し訳ありませんでした!」とロードに頭を下げ走って行ってしまった。

――――まったくもう!姉様方ったら!――――

マリアベルが腰に手を当て息を荒くしながら、カナリア達が出ていった扉を見つめていると、背後で笑い声が聞こえてきて。マリアベルが声のする方を向くと、ロードが笑いを一生懸命堪えようとしているが、たえられず口と目がニヤケ笑い声を出してしまっているところだった。

それで、やっと今の状況に気付いたマリアベルは即座に頭を下げロードに謝罪した。

「お、お恥ずかしいものをお見せして申し訳ありませんでした!」




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