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誕生式典開幕

驚きの言葉を述べた。

「 あなたが今、何故ここに来たのか。私に聞きたい事がなんなのか私にはわかっております 」

驚きの言葉にマリアベルは驚きを隠せずにいた。そんなマリアベルに王妃は薄く微笑んでみせた。

そして微笑んだまま優しく『ごめんなさいね。貴方に苦労をかけてしまって』と言った。

王妃のその言葉を聞くとマリアベルは知らずうちに涙を流してしまっていたことに気付き涙を自ら拭った。 

涙を拭っていると突然王妃に抱きしめられ、マリアベルは愛する母の胸の中で泣いた。


心が落ち着きソファに腰かけカップに口を付けていると、向かい側に座った王妃が話し始めた。

「 貴方の元へあの方が来たのね。月の女神様が 」

カップをテーブルに置くとマリアベルは『はい』という返事だけ返した。

「 私がまだ陛下とお会いしていない時、あの方は突然私の夢の中に姿を表したわ。私や貴方とまったくもって同じ姿をした神々しいお方月の女神様。女神様は貴方に『貴方は私の次の月の女神だ』と仰ったのでしょう? 」

その問いにはマリアベルはうなづくことしかできなかった。

「 私の夢の中にもあの方は姿を表したけれど私には後を継げとは仰らなかったわ… 」

王妃の驚くべき言葉にマリアベルは目を見開き王妃に詰め寄った。

「 な、何故…? 」

「 女神様は仰ったわ。『ここより東の国に行くときお前はある男と恋に落ちるだろう。その者との間の子はとてつもない力を秘めた子、その子供を次期月の女神とする。否定は受け付けぬ。だからといって、東の国に行くのをやめれば…どうなるかわかるであろう?』とね。女神様の言うとおり東の国に行くとこの国が存在し、そして陛下と出会ったの 」

マリアベルは王妃のその言葉を聞くと自らの震えを止めるべき手を力強く握った。

「 私が変わりに天に行けたら良いのだけど… 」

王妃の悲しそうな表情を目の当たりにしたマリアベルは我に返ると王妃の横に腰かけた。

「 取り乱してしまい申し訳ありませんでした。お母様。私は大丈夫です。お母様が天に召されてはお父様がまた一人になってしまいます。そのような事おっしゃらないで 」

「 貴方とロード様を引き合わせたのは、貴方に愛する方ができれば貴方は天に行かないと思ったからなの。でも、ゆくのでしょう? 」

マリアベルは王妃に微笑みかけながらうなづいてみせた。

「 月の女神様は仰られました。このまま私がここに残っても良い。そうすれば愛する人と幸せに暮らすことができる…と、ですがその代償もあります。この国が…世界が闇に包まれ異形の者が国のものを食らうんです。私は自分が幸せになりたいがために世界の人々を不幸になどできません。だからこそ私は天に召されることを決心いたしました。それに、女神様は約束もしてくださいました 」

『 約束? 』と王妃が聞くとマリアベルは頷き話を続けた。

「 はい。私が天に召された後、悲しむ方がいないよう記憶を消していただきます。そして、ロード様とカナリアお姉様との間の子が私とロード様の未来の子…というお願いです 」

マリアベルがそう告げると王妃はソファから腰をあげ鏡台の前まで行くと鏡に向かって語りだした。

「 女神様。見ていらっしゃるのでしょう?私からもお願いがございます。お取次ぎ下さいますよう 」

そう告げると、突然鏡の中から眩しいほどの光があふれ出たがしばらくすると、光が消えていくに連れどこからともなく月の女神の声が鳴り響いた。

「 願いとはなんだ 」

鏡から光が消えると、そこには先程まではなかったマリアベルと王妃とソックリな女性、月の女神が鏡の中からこちらに視線を送っていた。

「 はい。マリアベルの記憶を消すさい、私の記憶だけ残しておいていただけませんでしょうか 」

「 何? 」

「 え?お母様? 」

月の女神とマリアベルの言葉はほぼ同時だった。

王妃は月の女神に視線を送ったまま話を続けた。

「 マリアベルは、私と陛下との子、私の愛する子です。この国の誰もがマリアベルの記憶を失うなんてそんなの悲しい事、私は嫌です。忘れるために陛下と出会い恋をしマリアベルを授かった訳ではありません 」

そこまで告げると突然扉の方で音がし、月の女神、王妃、マリアベルは揃って扉に視線を送った。そこにいたのはカナリアだった。

扉のところで立っていたカナリアは三人が自分の存在に気づくとそのまま部屋の中まで歩み入り鏡の前王妃の横で立ち止まった。

「 貴方様が月の女神様であらせられますか。私はカナリア、この国の第一王女でございます 」

そういうなりカナリアはドレスの裾を掴み少ししゃがむと礼をとった。

礼を取り終わると月の女神に睨みつけるような視線を送り告げた。

「 マリアベルより話は伺っております。もし、マリアベルを次の月の女神にすると仰るのなら私の記憶も残しておいていただけませんか。マリアベルとルルベルは私の大切な妹、私の願いはルルベルとマリアベルの幸せ。ですが、どうしてもこの国の者からマリアベルの記憶を消さなければならないと仰るならマリアベルが寂しくならぬよういつでも私と話ができるよう私の記憶も消さずにおけませんか 」

「 カナリアお姉様… 」

姉のその言葉を聞き姉の名を呼ぶと同時にマリアベルは夢を思い出した。夢の中、マリアベルと同じ髪と瞳の色をした少女を寝かしつけていたカナリアは少女にマリアベルのことを話していたのだ。ということは彼女の記憶が消えていなかったということに繋がり、夢を見てからのあの疑問も解決しマリアベルはホッとあんどの息を漏らした。

カナリアにそう告げられると、月の女神は王妃とカナリアの瞳を交互に伺い最後には溜息を漏らした。

「 よかろう。そのかわり、もし一言でもマリアベルの事を思い出させるような言葉を出したら…その時は記憶を洗いざらい消す魔法をかけておくぞ。マリアベルが月の女神になると同時に私は星の一部となり消えてしまうからな 」

そう告げると月の女神は片手を前に差し出した、すると鏡の中から伸ばされた腕だけが姿を表し王妃とカナリアの額の前で止まった。すると、手と額の間が薄明るくなると光は王妃とカナリアの体を包み込み消えていった。

光が体を包み消えると、月の女神は腕を鏡の中に戻し言った。

「 これで用はないな。では、マリアベル明日の夜この城で一番高い西の塔で待っているぞ。そこで私と交代だ 」

「 はい 」

マリアベルはそう返事を返すことしかできなかった。

それからマリアベル、カナリアは自室に戻り明日に備えて眠った。


翌日、マリアベル16歳誕生式典


コンコン。

「 はい 」

部屋にノック音が鳴り響きマリアベルの次女が扉に向かって歩きだした。扉を少し開け向こうにいる人物を確かめると次女は振り返っていった。

「 カナリア姫様、ルルベル姫様がいらっしゃられました 」

今日はこれから誕生式典が行われる。

「 マリアおはよう!今日は良い朝ね!ちゃんと眠れた?緊張して眠れなかったのではなくて? 」

そう言いながらカナリアがマリアベルに抱擁してくる。マリアベルは微笑みながらその抱擁を返し返事を返した。

「 眠れなくなどありませんでした。今日が楽しみで逆にぐっすりと寝付けましたよ、カナリアお姉様 」

そう言っていると、いつのまに来たのかマリアベルの横にいたルルベルは何も言わずにただマリアベルの首に自分のそれを回し小さい声で言った。

「 おめでとう… 」

マリアベルはそんなルルベルにも微笑んで返事を返したのだった。そして、ルルベルは珍しく口数多く言ってきた。

「 マリアも16歳。結婚できる年だけど…私がさせない。マリアベルは私の妹だから… 」

そう言われるとマリアベルの表情は少し暗い悲しみに包まれた表情へとかわった。そんなマリアベルの表情を見ていたカナリアはなんとかマリアベルの表情を笑顔にしようと二人の間に入って言った。

「 マリア支度は終わったの?広間でお母様とお父様が待っておられるわよ 」

二人は同時にカナリアへ視線を送り笑顔で二人で返事を返した。

「「 はい! 」」

カツンコツン、カツンコツン

廊下に三人の靴の音が響くたび、廊下にいた者達は三人の美しい姿を見ながらマリアベルに祝杯の言葉を述べていく。

「 姫様、16歳おめでとうございます 」

「 姫様、おめでとうございます。あの小さな姫様がここまでご立派にご成長なされるなんて… 」

そう言いながら涙を流しているメイド長を傍にいたメイドが慰めている。

「 姫様!おめでとうございます!今宵の誕生式典頑張ってください!歌、楽しみにしてます! 」

フレンドリーに話しかけてくるのは庭師の少年だった。見た目は10代後半の少年だが、これでも全国大会などで優勝するほどの腕をもつ庭師だ。彼は頬を真っ赤に染め上げならがマリアベルに手をふっている。

「 ありがとう皆。今日の日がきたのも皆のおかげよ 」

そんなメイドや庭師達にマリアベルはそう告げながら先を急ぐ。

広間の入口に着くと、そこにはロードが立っていた。ロードの姿を視線に入れるとマリアベルは嬉しそうな表情を見せるが、そんな事にも気付かずカナリアとルルベルが間に割って入り、ロードに文句を言い出す。

「 ロード様、どうなさいました?もうパーティーは始まっているはず。中にお入りにならないのですか?…もしや。やはり私達とエスコート役を交換したいとでもおっしゃるおつもり? 」

そう言うとカナリアは両腰に手を当てロードを睨みつけた。ルルベルはどこから出したのか自分の剣を構え今にも切りかかりそうだ。

そんな二人にロードは一歩後ずさると言葉を滑らせた。

「 い、いえ。ただ会場に入ってしまうとマリアはすぐにステージに上がり降りた後もおそらく色々な国からのお客様に囲まれてしまうと思われますのでここでマリアを待って会ったらすぐにでもお祝いの言葉が述べられるように…と思いまして… 」

その言葉を発している最中、カナリアはただただジッとロードを見つめる。ロードが言葉を言い終わるとカナリアは目を閉じため息を着くとマリアベルから離れそのままルルベルの腕を掴んだ。

「 姉様? 」

何も言われず突然腕をつかまれたルルベルはカナリアに視線を送ると。

「 ルル。行きましょう。ロード様はお客様です。どうせもう少ししたらご自分のお国にお帰りになられるお方。ロード様が帰ればマリアのエスコート役はまた私達だけになるのだから 」

ルルベル、ロードはカナリアの言葉を聞くなり目を大きく見開くがマリアベルだけは一瞬驚いたように目を見開いたがすぐにあることに気がついたのだった。

――――カナリアお姉様、もしかして気を使ってくださってる…?―――――――

カナリアはマリアベルとロードが話を交わす事ができるのが今日で最後としっているからこそ、最後のエスコート役を彼に委ねたのだろう。

カナリアの言うことには従うようにしているのか、ルルベルは渋々カナリアに手を引かれながら会場入りを果たしたのだった。



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