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予知夢

「 ここは… 」

マリアベルはどこかの森の中にいた。日の光がさし、緑の素晴らしい森だ。

近くから活気あふれる歌が聞こえてくる。サンメリア国の近くなのだろうか。そうマリアベルが考えていると、どこかで泣き声が聞こえてきた。

「 エーン!!お母様ー!!お父様ー!! 」

マリアベルは泣き声のする方に歩み寄って行った。声のする場所に立つと、マリアベルは目を見開いて驚いた。

そこに立っていたのは髪がマリアベルと同じ青銀色で瞳も髪と同じ色の年は10歳か9歳ほどの少女だったからだ。

「 わ、わたし…? 」

マリアベルはわれに返ると。少女の傍まで歩み寄り話かけた。

「 ねぇ。どうしたの?迷子? 」

だが、少女はずっと泣き続けている。

「 泣いたままじゃわからないわ…。ねぇ 」

そこで少女の肩に手を添えようとすると、スルッと通り抜けてしまった。

「 え? 」

「 アリア?ここにいたの? 」

そこで突然、マリアベルの背後からいつも聞いている声が聞こえてきた。振り向いてみると、そこにはいつもとはまた違ったイメージのドレスを身にまとったカナリアがそこに立っていた。

「 お母様ーー!! 」

すると、さきほどまで泣いていたはずの少女が走り出しカナリアに抱きついた。カナリアはしゃがみこみアリアという名の少女の頭を優しく撫でてあげていた。

このとき、マリアベルはやっと今自分が立っている場所がどこなのかがわかった。そう自覚したときだった!

「 カナリア。アリアは見つかった? 」

カナリアの背後から愛おしくてたまらない人の声が聞こえてきたので、マリアベルはそちらを見つめてしまった。

「 お父様!! 」

そう言うとカナリアに頭を撫でられていたアリアはすぐさまロードの元まで駆けて行った。するとロードはアリアを抱き上げてしまった。

「 すまなかった、アリア。目を放してしまったばかりに寂しい思いをさせて 」

ロードは今にも泣きそうな悲しい表情でアリアにそう告げると、アリアは泣いていたのが嘘のようにロードに言った。

「 大丈夫よ!お母様がよくお話してくださる、今の月の女神様のように私も強くなるのだから! 」

『今の月の女神』という言葉を聞くと、マリアベルは心が傷んだ。このアリアという少女は本当なら自分とロードとの間の子、それが今見ている未来の夢では自分は既に天に上がり月の女神となり生まれるはずの魂を信頼できる人であり、大好きな大切な姉カナリアに託し、本人達の記憶から自分が消えてしまっているのだ。

だが、少しマリアベルはアリアの言葉に疑問を抱いた。彼女は今、確かに『今の月の女神様の話』と言ったのだ。カナリアには自分がカナリアの妹だった記憶がないはずだ。と、言うことは自分が話した次の月の女神だという話も記憶から抹消されているはずなのだ。なので、『今の』という言葉が付くのに疑問を抱いてしまった。

すると、突然視界が歪み始め森にいたはずが見たこともない部屋にマリアベルはいた。

「 ここは…? 」

当たりを見回すと、マリアベルの立っている場所から少し離れた場所にある寝台にアリアが寝転がり、カナリアが何やら話をしているのが見えたのでマリアベルは二人に近寄った。近づくに連れて話の内容が聞こえてきた。

「 その子はとても歌が上手でね。お城の中にある一角で毎日のように歌っていたの。髪も瞳もアリアと同じ色のその子はとても頑張り屋でね?ダンスも上手だったわ 」

カナリアが口にしている話にでてきてる『その子』というのが自分だということにマリアベルが気付くのにはあまり時間はかからなかった。

「 ねぇ。お母様?その人は今どこにいるの?私、お会いしたいわ 」

アリアが眠気眼でそう告げると、カナリアは薄く微笑み頭を撫でてあげながら告げた。

「 その子は、今大切なお仕事をしに遠くまで行ってしまっているの。いつか…いつか、帰ってきてくれたのなら…きっと…きっと… 」

そこで涙を流してしまったカナリアにアリアは眠気眼を見開き寝台から起き上がり、カナリアの瞳に手を当てた。

「 母様…?どうなさったの…?どこか痛いの?大丈夫よ。大丈夫 」

アリアは最初片手はカナリアの瞳に、もう片方の手はカナリアの頭を撫でるようにしていたがカナリアの涙が止まらないことを知り寝台の上で膝立ちカナリアの頭を包むようにして抱きしめた。

カナリアはそんなアリアの行動に安心したのか、アリアを放し涙を拭い寝台の中に戻りように促した。

「 大丈夫よ。大丈夫。きっと会えるわ 」

そんな二人の様子を黙って見つめていたマリアベルは知らずうちに涙を流してしまっていた。

涙を拭っているとまた視界が歪み始め、マリアベルは「今度はどこに?」と次に現れる世界を待った。

すると、今度の光景はさっきとは違い真っ暗な世界だった。

「 真っ暗…ここはどこ…? 」

当たりを見渡すとどうやらここはサルーナ国にある町なのだと言う事を理解することができた。だが、何故か人の気配がとても少なくどの家も電気を付けていなかった。

「 今は夜中なのかしら?」と思ったが、広間に置かれている大時計を見てみるとまだ眠りにつく時間ではなかった。そして、もう一つマリアベルが気になったのは空だった。空に必ずあるはずの物がどこを探しても見当たらないのだ。

そう、月がどこにもなかった。

――――――――さきほどまで見ていたのが私が天に上がってからの未来なら…ここはもしかして私が地上を選んだ未来…?―――――――

と、そこで突然足元からボコボコボコという不快な音が聞こえてきて、マリアベルは足元を見るとそこには地面からまるで水が沸き上がるように何か黒い液体のような物がでてきていた。

君が悪くなりその場から数歩後ろに下がると、マリアベルの立っていた場所足元から湧き上がっていた液体が段々形を作っていることに気付いた。マリアベルはその姿形を見た事があった。そう、前に夢の中で女神様が見せてくれた自分が女神にならず地上に残ってからの地上の様子を見たときに地上にいた無魔だった。

姿を表した無魔はそれだけではなかった良く見ると、マリアベルの周囲には無魔が何十匹も姿を表し町に向かって歩いていた。

「 ヒック!ウイ~~ック! 」

そこで突然人の声が聞こえ、マリアベルがそちらに視線を送ると、そこには仕事帰りにどこかでお酒でも飲んだのか酔っ払っている男がフラフラと歩いていた。どうやら無魔達はその男に向かって歩いているようだ。

「 ダ…ダメ…やめ… 」

マリアベルがそう叫ぼうとした途端!シャアアアアア!!!と、無魔達が声をあげながらその男に襲いかかった。

「 な、なんだ!?う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

「 い、嫌ぁぁぁぁぁぁぁ!!! 」

男が叫ぶのとマリアベルが叫ぶのはほぼ同時だった。マリアベルが叫ぶと途端に視界が明るくなり、マリアベルは目を覚ましていた。

「 姫様!?姫様!大丈夫ですか!?どうかなさったのですか!? 」

どうやらマリアベルは夢の中だけではなく現実で叫んでしまっていたようで叫び声を聞いた警備中の兵が次女と一緒にマリアベルの部屋までやってきてくれていた。

外は既に薄明るい空の色をしていた。いつもよりかは早めに起きてしまったようだ。

「 姫様…!大丈夫ですか??? 」

マリアベルは額に手を当て次女の手を借りながらベッドから体を起こし周りを見ると次女を呼びに行ってくれたのであろう兵がどうすればいいのかと辺をキョロキョロと見ていた。

「 大丈夫よ…。ちょっとおかしな夢を見てしまったの… 」

マリアベルが二人を落ち着かせようとそう言うと、兵はやっと一息ついてから「それでは姫様。失礼いたします。」とマリアベルの安静を確認してから寝室を出ていった。

次女も兵と同じく一息つくと「紅茶を入れてまいりますのでお待ちください。」と言い寝室を出ていった。

「 はぁ… 」

マリアベルはやっと一人になれたというように大きく息を吐いた。

―――――さきほどまで見ていた物が…――――――

マリアベルはさきほどまで見ていた夢の内容を思い出すと胸に手を当て強く目を瞑り俯いた。

―――――私が…私が地上を選んでしまうということは無魔にこの町を襲うのを許す事。そして、私が天を選べば町の皆が幸せになれる。そして私とロード様との間に生まれずはずの子が姉様によって生み出され、ロード様も姉様も幸せになれる…そう、私が一人諦めればー…――――――――

マリアベルは再び決意の気持ちを胸に秘めた。

――――――そうなれば、明日の式典の夜まで思い出を作らなきゃ!―――――――

そこでまたも部屋の戸をノックされ、返事を返すとトレイを持った次女が寝室へ入ってきた。

「 お待たせいたしました。紅茶をお持ちいたしました。姫様、本当になんともございませんか?もし、ご無理をされているのでしたら朝食は部屋で取れるようにいたしますが… 」

紅茶をカップに注ぐ準備をしていた手を一旦止め次女がそう心配そうな表情でマリアベルに話かけてきた。

「 そうね…。じゃあそうするわ。用意をお願いできる? 」

マリアベルは心配そうにしている次女の要望どおりにすることにした。次女は要望を聞いてもらえてうれしかったのかうれしそうな表情で元気に返事を返し、マリアベルが紅茶を飲み終わるとそれを持って部屋を出て行った。

その後、次女の持ってきた朝食をマリアベルは持ってきてくれた次女にもお裾分けしながら楽しく食べた。

朝食を終えまたも次女に紅茶を注いでもらい窓際に椅子を移動させ腰かけながら窓から見れる国の風景を堪能していると

コンコン

と、部屋の戸を誰かが叩いた。

次女が開けようか迷いながらマリアベルの指示を待っているので、マリアベルは次女にアイコンタクトを送り戸を開けるように指示をした。次女はゆっくりと戸に歩み寄り戸の向こう側にいる人物を確かめると戸を閉めマリアベルの方を向き直った。

「 ロード様がいらっしゃいました。どうなさいますか? 」

「 お通しして頂戴 」

マリアベルからそう言われると次女は嬉しそうに戸をあけ、向こう側にいるはずのロードを部屋へ招き入れた。

「 マリア。おはよう 」

「 おはようございます。ロード様 」

ロードは部屋に入ると長椅子に腰かけた。次女が紅茶を持ってくるとそれを手に取り飲んだ。

紅茶を一通り飲むとロードは話をしだした。

「 マリア。今日は聞きたいことがあってきたんだ… 」

そこでマリアベルの心が一瞬ドキンとなった。それは先日ロードに言われた事が原因だった。『愛しています。結婚してください』。そう、彼はマリアベルに求婚してきたのだ。

返事はいつでもいいと言っていたので明日何も言わず記憶を消し天に昇ろうと考えていたので何も考えてはいなかったが、やはり返事が気になってしまったのかもしれないとマリアベルは緊張しながらロードに答えた。

「 聞きたい事?それは…? 」

ロードはしばらく頬を染めたまま宙を仰いでいたが決心したかのように強い眼差しをマリアベルに向かって見せた。その強い眼差しを見て、マリアベルの心がまたもやドキンとなってしまった。

「 た… 」

「 …っつ!! 」

マリアベルは身構えるかのように目を強く瞑り、ロードの言葉を待った

「 誕生日プレゼントは何がいいかな? 」

思いがけない言葉が目の前から聞こえマリアベルはキョトンとしながら瞬きを繰り返し、目の前に座るロードを見つめた。

ロードはさきほどよりも数倍に頬を真っ赤に染め恥ずかしそうにマリアベルに聞いてきた。

「 え…っと…だね。お姉さん達も何かあげるみたいだし、あの…私も何かあげれたら…とね…。あ…あははは 」

そう言いながらロードは頭をポリポリとかいている。そんなロードにマリアベルはつい噴き出してしまった。

「 …っぷ。あ…あはははははは!クスクスクスクス… 」

「 マリア…? 」



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