雷切
「サンダーバード…鳥なら…。」
伸行は右手に魔力を込める。
一瞬でいい、少しでも動きを鈍らせるだけでこの鳳を叩き潰せる。
『無駄ですよ。』
Repetitionより詠唱無しで術を使う方が魔力の減りが多いのだが仕方が無い。
雷玉を無数に空中に浮かばさせる。
アリスは気付かなかった。
サンダーバードの突撃と雷球包囲で完全に勝ったと思っていたのだ。
もう鳥と伸行の距離は5mも無い。
「伸びろ、増えろ!」
短く詠唱する。
すると、先程破壊したはずの氷の植物は一瞬で大きくなって
サンダーバードを絡め取る。
『しまった…弾けサンダーバード!!』
サンダーバードはそれを聞くと、今まで以上の力でその植物を破壊しようとする。
「潰せ。」
そう告げると同時に、植物はサンダーバードを氷で覆う。
…パキンと音がするとサンダーバードと植物は跡形も無く居なくなっていた。
それはまさに、一瞬の出来事。
『まだ、包囲雷球が残ってる。』
アリアスは頭をすぐに切り替えて、伸行と雷玉の位置を確認しようとする。
球を操るには再び魔力をそこに流し込み操るのだが、
サンダーバードを潰された事により上手く魔力が通らない。
異能力は精神面が、かなり重要なので圧倒的有利でもいつ不利になるのか分からない。
伸行はそこを何より見逃さなかった。
いまなら詠唱しきれると判断したのだ。
「戸次道雪より使われ、雷神を斬りし刀。…雷切!」
ぶんと音をたてて、刀を一振りすると…。