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沈黙のストライカー  作者: ムーミンの丸焼き
アストン・ヴィラ3年目

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99/111

ワトキンスとの会話①


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九月の終わりだった。


リーグ戦三試合を終えて、ヴィラは二勝一分けだった。ニコラスは三ゴール。コーチングはまだぎこちなかったが、試合中に声が出る場面が少しずつ増えていた。


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練習後、グラウンドに二人だけ残ることがあった。


ワトキンスがシュート練習を続けていた。ニコラスも残った。特に約束したわけではなかった。でも自然にそうなっていた。


二年間、そういう場面が何度かあった。


ニコラスがボールを出した。ワトキンスが打った。ゴール左下に決まった。


「今日の練習、どうだった」とワトキンスは言った。


「コーチングが試合よりぎこちない」とニコラスは言った。「試合の方が動きが読める」


「そうかもな」ワトキンスは言った。「試合は状況がはっきりしている。練習は自由度が高い分、難しい」


ニコラスは頷いた。


ワトキンスがもう一本打った。今度はポストに当たった。


「今季のニコラスは去年と違う」とワトキンスは言った。


「どう違う」


「去年までは、お前がゴールを決めることだけ考えていた感じがした」ワトキンスは言った。「今季はたまに周りを見ている。そういう目をしている」


ニコラスは少し間を置いた。「得点が減るかもしれない」


「減るかもな」ワトキンスは言った。あっさりしていた。「でもそれでいいんじゃないか」


「得点王を取りたい」


「取れるよ」ワトキンスは言った。「でも今季じゃないかもしれない。それでも今季やることには意味がある」


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しばらく二人でシュートを打ち続けた。


「サッカーが好きか」とワトキンスは唐突に言った。


ニコラスは少し間を置いた。「好きだ」


「なんで好きか言えるか」


ニコラスは考えた。「ゴールを決めたとき、他のことが全部消える」


「他のこと」


「色々ある」とニコラスは言った。それ以上は言わなかった。


ワトキンスは追及しなかった。「俺はな」とワトキンスは言った。「最初は生活のためだった。家族を養うために続けた。でも今はそれだけじゃない」


「どう変わったか」


「子供が生まれてから変わった」ワトキンスは言った。「試合に勝って帰ると、あいつらが玄関で待っている。その顔を見るためにやっている部分がある」


ニコラスはその言葉を聞いた。


「家族のためにやる、という感じか」


「そうだ」ワトキンスは言った。「大切なものがあると、プレーが変わる。守りたいものがある選手は強い。俺はそう思っている」


ニコラスは少し間を置いた。


「俺には母親がいる」


「知っている」ワトキンスは言った。「お前がチェスターフィールドから今ここにいるのは、お母さんのためでもあるんだろう」


ニコラスは何も言わなかった。


でも否定しなかった。


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「お前はいつか家族を持つか」とワトキンスは言った。


ニコラスは少し間を置いた。「考えたことがない」


「そうか」


「家族というものが、よくわからない」とニコラスは言った。「母親はいる。でも父親は、いないも同然だった。家族がどういうものか、わからない部分がある」


ワトキンスはしばらく何も言わなかった。


「俺の父親も、あまりいい人間じゃなかった」とワトキンスは言った。静かな声だった。「でもだからこそ、自分は違う父親になろうと思った」


ニコラスはその言葉を聞いた。


「お前が知らないなら、自分で作ればいい」ワトキンスは言った。「家族がどういうものか知らないなら、自分がどういう家族にしたいかを考えればいい」


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日が傾いていた。グラウンドが橙色になっていた。


「そろそろ帰るか」とワトキンスは言った。


「そうだな」


二人でボールを片付けた。


ロッカールームへ向かいながら、ワトキンスが言った。


「サッカーへの熱を大切にしろ」とワトキンスは言った。「ゴールを決めたときに他のことが消えると言っていた。その感覚を持ち続けろ。それがなくなったら、俺たちはただ走っているだけになる」


ニコラスは頷いた。


「まだあるか」とワトキンスは言った。「その感覚」


「ある」


「それでいい」ワトキンスは言った。「それがある限り、お前はまだ伸びる」


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