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沈黙のストライカー  作者: ムーミンの丸焼き
アストン・ヴィラ3年目

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97/109

生意気


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八月下旬、プレシーズン最後の週だった。


練習の強度が上がっていた。エメリーがより実戦に近い形での練習を増やしていた。


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その日の午前、ポゼッション練習があった。


二チームに分かれた。ニコラス、ワトキンス、ロジャーズ、ティーレマンス、パウ・トーレスのチームに、パブロも入った。


練習が始まった。


ティーレマンスがボールを持った。ロジャーズへ出した。ロジャーズがニコラスへ。ニコラスがパブロへ落とした。


パブロがトラップした。前を向いた。ニコラスがパブロの視野に入る位置で手を挙げた。


パブロはニコラスへ出さなかった。


そのままドリブルで前へ出た。相手チームのプレスをかわした。ロジャーズへ出した。


エメリーの笛は鳴らなかった。プレー自体は正しかった。


でもニコラスはその場に立っていた。


何か言おうとした。「なぜ出さなかった」と言おうとした。でも言葉がまとまる前に、次のプレーが始まっていた。


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同じ場面が三度あった。


ニコラスがフリーになっている。パブロがボールを持っている。パブロが出さない。


三度目、パウ・トーレスがパブロに何か言った。スペイン語だった。パブロが軽く返した。パウ・トーレスは何も言わなかった。居心地悪そうだった。


練習が終わった後、ニコラスはパブロに近づいた。


「なぜ出さなかった」


パブロは少し驚いた顔をした。ニコラスから話しかけてくるとは思っていなかったようだった。


「出せる状況でも、俺が運んだ方がいいと思ったからです」とパブロは言った。「フリーでも、俺の方が次の展開を作れる」


「俺がフリーのとき、出すのが原則だ」とニコラスは言った。


「原則より結果じゃないですか」パブロは言った。「俺のドリブルの方が相手を崩せた」


言葉が出てこなかった。反論の言葉は頭の中にあった。「フリーの選手を使うことで相手のプレスが間延びする、それが次の展開を生む」——わかっていた。でも口から出てくる前に間が空いた。


パブロはその沈黙を見た。少し口の端が上がった。


「俺、自分が一番うまいと思ってるんで」とパブロは言った。「自分でやった方がいいと思ったら自分でやります」


ニコラスはパブロを見た。


何も言わなかった。


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ロッカールームで、マルティネスがパブロの隣に座った。


スペイン語で話しかけた。


パブロが答えた。軽い口調だった。


マルティネスが続けた。今度は少し低い声だった。


パブロが少し黙った。それから何か返した。


マルティネスは笑わなかった。立ち上がって自分のロッカーへ戻った。


ニコラスにはやり取りの内容はわからなかった。でもマルティネスが笑わなかったことはわかった。


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午後の練習はシュート練習だった。


パブロの順番になった。


助走を取った。インサイドでコースを狙った。GKの逆を突いた。ネットが揺れた。


技術は本物だった。ニコラスはそれを認めていた。


次の順番でパブロがもう一本打った。今度はアウトサイドで巻いた。ゴール左上に決まった。


「どうですか」とパブロがニコラスに言った。「テクニックで決めました」


ニコラスは少し間を置いた。


「上手い」と言った。


パブロが少し意外そうな顔をした。褒められると思っていなかったようだった。


「でもゴール前では使えないことがある」とニコラスは続けた。「相手が近い。時間がない。そのときに体が使えるかどうかが別れる」


パブロは少し口を開いた。何か言おうとした。でも今度はパブロが黙った。


ニコラスは列の後ろへ戻った。


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夜、ニコラスはアパートで今日のことを振り返った。


午前の練習では言葉が出なかった。でも練習後、パブロに話しかけた。言えた。


完全ではなかった。でも昨日より一歩進んだ。


エメリーが言っていた。百回外れて一回合えばいい。


プレー中に言葉を出すことを怖がらない。それが今季の始まりだった。


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