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沈黙のストライカー  作者: ムーミンの丸焼き
アストン・ヴィラ3年目

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95/109

パブロ・ブランコ


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プレシーズン三日目の練習だった。


シュート練習をしていた。ニコラスが列に並んでいると、後ろから声がした。


「ロメロさんですよね」


スペイン語訛りの英語だった。


振り向いた。昨日グラウンドの端で見た選手だった。近くで見ると若かった。細身で、目が鋭かった。


「そうだ」


「パブロ・ブランコです」その選手は言った。「ユースから上がってきました」


ニコラスは頷いた。


「プレミアリーグのトップスコアラーに会えて光栄です」パブロは言った。「去年の得点は三十四点でしたっけ」


「そうだ」


「ハーランドに一点届かなかった」パブロは言った。笑っていた。「惜しかったですね」


ニコラスは何も言わなかった。


「今季は得点王取れますか」


「取る」


パブロは少し笑った。「フィジカルで取ってる感じがしますけど、テクニックはどうなんですか」


ニコラスは少し間を置いた。何か言おうとした。でも言葉が出なかった。


順番が来た。ニコラスはシュートを打った。ゴール右上に突き刺さった。


振り返らずに列の後ろへ戻った。


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午後の練習でパス練習があった。


ニコラス、ワトキンス、ロジャーズ、パブロの四人組になった。


ロジャーズがボールを持った。ニコラスへ出した。ニコラスがパブロへ落とした。パブロがワトキンスへ。ワトキンスがロジャーズへ戻した。


何度か繰り返した。


パブロのボールタッチは滑らかだった。トラップが正確で、パスに迷いがなかった。十八歳とは思えない技術だった。


次の局面でニコラスがパブロへ出した。パブロがニコラスへ戻さず、そのままドリブルを始めた。ロジャーズへ出した。


エメリーが笛を吹いた。「パブロ、ロメロへ戻せ」


「でも俺の方が前を向けてました」とパブロは言った。


「練習の意図がある」とエメリーは言った。「従え」


パブロは頷いた。でも納得していない顔だった。


ロジャーズがニコラスに小声で言った。「ああいうやつだ、気にするな」


ニコラスは何も言わなかった。


-----


練習後、ロッカールームでパブロがマルティネスとスペイン語で話していた。


ニコラスには内容はわからなかった。でも時々こちらを見ていた。


マルティネスがパブロに何か言った。パブロが軽く笑って返した。


マルティネスは笑わなかった。


-----


翌日の練習だった。


シュート練習の後、パブロがニコラスの隣に来た。


「ロメロさん、昨日のシュート見てましたよ」とパブロは言った。「確かに上手い。でも、ゴール前で体使ってこじ開けてるだけじゃないですか」


ニコラスは少し間を置いた。


何か言おうとした。「それだけじゃない」と言おうとした。でも言葉がうまく出てこなかった。何をどう言えばいいかが瞬時にまとまらなかった。


「俺はテクニックでゴール前を崩せます」パブロは続けた。「そっちの方が綺麗じゃないですか」


デュランが近くで着替えながら聞いていた。「お前、ニコラスに何言ってんだ」とデュランは言った。スペイン語訛りの英語だった。


「本当のことを言ってるだけです」


「本当のこと」デュランは言った。「ニコラスのゴール全部見たことあるか。あるなら同じこと言えるか確認してから話せ」


パブロは少し口を閉じた。でも引かなかった。「見ました。フィジカルに頼ってる部分が多いと思います」


デュランは呆れた顔をした。ニコラスを見た。


ニコラスは何も言わなかった。着替えを続けた。


-----


その日の夜、ニコラスはアパートで天井を見ていた。


コーチングを始めろ、とエメリーに言われた。言葉で伝えることを始めろ。


でも今日、パブロに何も言えなかった。


反論しようとした。でも言葉が出なかった。試合中でもない、練習後のロッカールームでも出なかった。


言語化はできていた。頭の中では整理できていた。でも口から出てくるまでに時間がかかった。相手がすでに次の言葉を言っていた。


スマートフォンを取り出した。グレースに電話した。


「どうしたの」とグレースは言った。


「なんでもない。声が聞きたかった」


グレースは少し間を置いた。「何かあったの」


「生意気な後輩が来た」


グレースが笑った。「あなたが後輩の話をする日が来るとは思わなかった」


「俺もそう思う」


「どんな子なの」


「上手い」とニコラスは言った。「でも生意気だ」


「あなたも最初はそう思われてたんじゃないの」とグレースは言った。


ニコラスは少し間を置いた。


「そうかもしれない」


「うまくやりなさい」とグレースは言った。「あなたの方が先輩なんだから」


電話を切った。


天井を見た。


先輩。


その言葉が少し頭に残った。


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