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沈黙のストライカー  作者: ムーミンの丸焼き
アストン・ヴィラ3年目

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94/110

三年目


-----


八月、バーミンガム。


プレシーズンが始まっていた。


ニコラスはトレーニンググラウンドに早く来た。いつも通りだった。芝の上でボールを蹴った。朝の空気はまだ涼しかった。


三年目だった。


-----


エメリーに呼ばれたのは、プレシーズン二日目の朝だった。


監督室に入ると、エメリーはホワイトボードの前に立っていた。


「座れ」


ニコラスは座った。


エメリーはしばらくニコラスを見た。それから言った。


「ワールドカップを見ていた」


「そうですか」


「ムバッペと話したと聞いた」


「少し」


エメリーは頷いた。「あいつが何をしているか、わかったか」


ニコラスは少し間を置いた。「一つの動きでチーム全体が動く」


「そうだ」エメリーは言った。「昨季、俺はお前に言語化を教えた。お前はそれを覚えた。今季はその次だ」


「チームを動かす」


「動かすだけじゃない」エメリーは言った。「昨季、お前はワトキンスと連動することを覚えた。今季はそれをチーム全体に広げろ。ワトキンスだけじゃない。ティーレマンスが動く。ロジャーズが動く。デュランが動く。お前の動きでチーム全体が動くようにしろ」


「コーチングを始めろ」エメリーは言った。「言語化はできるようになった。次はそれをプレー中に味方へ伝えることだ。瞬時に言葉が出るようにしろ。まだお前の言葉は試合の外にしかない」


ニコラスはその言葉を聞いた。


「できるか」とエメリーは言った。


「やります」


エメリーは少し間を置いた。「その先はその後だ。今季はまずチーム全体と繋がれ」


-----


練習が始まった。


ワトキンスと並んでウォームアップをした。


「今季もよろしく」とワトキンスは言った。


「よろしく」


二人は並んで走った。言葉はそれだけだった。でも二年間で積み上げてきたものがあった。隣を走るだけで、お互いの状態がわかった。


ワトキンスが少し軽そうに走っていた。オフシーズンのコンディション調整がうまくいったのかもしれなかった。


「今季で三年目か」とワトキンスは走りながら言った。


「そうだ」


「早いな」


ニコラスは少し頷いた。


「今季は何を目指してる」とワトキンスは聞いた。


「チーム全体と連動する。ワトキンスだけじゃなく」


ワトキンスは少し間を置いた。「難しいな。俺とは二年かかった」


「そうだな」


「でもお前ならやる」とワトキンスは言った。断言するように。


ニコラスはその言葉を聞いた。


-----


午後の練習が終わったころ、グラウンドの端に見慣れない選手がいた。


細身だった。浅黒い肌。焦げ茶の髪。若かった。


マルティネスが近づいて、スペイン語で何か話しかけていた。相手が笑った。


「ユースから上がってきた選手か」とワトキンスがニコラスの隣で言った。


「そうらしい」


「アルゼンチン人だ」とワトキンスは言った。「マルティネスが知り合いみたいだな」


ニコラスはその選手を少し見た。


若かった。でも立ち方に自信があった。グラウンドを見渡す目が、周りを品定めしているように見えた。


それだけ見て、ニコラスはロッカールームへ向かった。


-----


夜、ニコラスはバーミンガムのアパートに戻った。


三年目が始まった。


エメリーの言葉が頭にあった。「一つの動きでチーム全体が動く」。ムバッペが三十一歳でやっていることを二十二歳でやれ。


難しかった。でも今季やることが見えていた。


スマートフォンを取り出した。アリスターにメッセージを送った。


```

今季始まった。

```


すぐに返信が来た。


```

俺も!今季こそプレミア取るぞニック

ユナイテッドが優勝するから覚悟しといて

```


```

ヴィラが取る。

```


```

言うようになったな笑

今季もやり合おう

```


ニコラスはスマートフォンを置いた。


窓の外にバーミンガムの夜景が広がっていた。


三年目が始まる。


-----

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