終わりと次
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試合後の夜、チームホテルは静かだった。
夕食はあった。でも誰も多くは食べなかった。テーブルに座って、ぼんやりしている選手が多かった。
ニコラスは食事を終えてロビーに出た。
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ベリンガムがソファに座っていた。一人だった。
「座っていいか」とニコラスは言った。
「ああ」
ニコラスは隣に座った。
しばらく二人とも何も言わなかった。
「悔しいな」とベリンガムは言った。
「そうだ」
「俺はあの二点目、防げたと思っている」ベリンガムは言った。「ムバッペがはたいた瞬間、俺が出るべきだった。でも一歩遅かった」
「あの判断は難しかった」
「でも俺ならできたはずだった」ベリンガムは言った。それ以上は言わなかった。
ニコラスは少し間を置いた。
「俺も今日、見えていたものがあった」とニコラスは言った。「ムバッペの動きだ。でもまだできない」
「できていなかったか」
「一つはできた。ケインが教えてくれたことだ。でもムバッペがやっていたことはまだ先だ」
ベリンガムは頷いた。「お前には時間がある」
「ムバッペも同じことを言っていた」
ベリンガムは少し笑った。「世界最高の選手と同じ話をしているのか、俺は」
「今日話した」
「すごいな」ベリンガムは言った。「俺も話しかければよかった」
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サカが通りかかった。
「二人とも眠れないか」とサカは言った。
「眠れない」とベリンガムが言った。
サカは向かいの椅子に座った。
「今日の試合、悔しかったけど」とサカは言った。「このチームで戦えて良かったと思っている」
「俺もそうだ」とベリンガムは言った。
ニコラスは少し間を置いた。
「俺はこのチームに来て、覚えたことがある」
「何だ」とサカは聞いた。
「ワトキンス以外と連動する感覚だ。ケインと練習して、試合でできた」
サカはニコラスを見た。「最初の代表合宿のとき、お前はまだ全部一人でやっていた感じがあった」
「そうだったか」
「今は違う」サカは言った。「ピッチでよく周りを見ている。前より声も出るようになった」
ニコラスはその言葉を聞いた。
言語化して、伝えて、チームを動かす。エメリーが言っていたことが、少しだけ形になってきた。
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ライスが来た。
「みんなここにいたか」とライスは言った。椅子を引いて座った。
四人になった。
「このチームで戦えて良かった」とライスは言った。「次のワールドカップも、できれば一緒に戦いたい」
「四年後か」とベリンガムは言った。
「そうだ。二〇三四年」
ニコラスは少し考えた。二〇三四年、自分は二十五歳になっている。
「次は優勝する」とニコラスは言った。
三人がニコラスを見た。
「珍しいな、お前が先に言うの」とサカは言った。
「思ったから言った」
ライスは少し間を置いた。それから「そうだ、次は優勝する」と言った。
ベリンガムが「優勝する」と言った。
サカが「する」と言った。
四人でしばらく黙っていた。でも悪い沈黙ではなかった。
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深夜、アリスターがニコラスの部屋に来た。
「眠れなかったから来た」とアリスターは言った。
「入れ」
アリスターが入ってきた。床に座った。
「今日、延長で出た」とアリスターは言った。「ペドリを見て気づいたことを試した」
「試合の流れが変わった」
「少しだけな」アリスターは言った。「でも感触があった。来季ユナイテッドでそれをやる」
「やれ」
アリスターは天井を見た。
「ニック、お前は今日何を感じた」
ニコラスは少し考えた。
「ムバッペの動きを見た。あれがまだできない。でも何をすればいいかが見えた」
「それを来季やるのか」
「そうだ」
アリスターは頷いた。「チェスターフィールドから来て、お互いまだやることがあるな」
「そうだな」
「良かった」とアリスターは言った。「まだやることがある方が、楽しいから」
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翌朝、チームが解散した。
空港へ向かう前、ケインを見つけた。
「帰るか」とニコラスは言った。
「そうだ」とケインは言った。「バイエルンへ戻る」
「引退の話、考えているか」
ケインは少し間を置いた。「戻ったら考える。でもたぶん、今季で終わりだ」
ニコラスは頷いた。
「来季、どこかで試合があれば」
「ヴィラとバイエルンがCLで当たるかもしれないな」ケインは言った。「そのときは手加減しないぞ」
「こちらもしない」
ケインは少し笑った。「それでいい」
握手をした。
長い握手だった。
ケインが去っていった。
ニコラスはその背中を見た。
百三十七試合出場して引退した男の息子が、プレミアでもワールドカップでもゴールを決めた。その傍らで、別の偉大な選手がキャリアを終えようとしていた。
サッカーは続いていく。
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空港で、サカが来た。
「また代表で会おう」とサカは言った。
「会おう」
「次のワールドカップ、本気で優勝を狙う」
「そうだ」
サカは笑った。「三年前、初めて代表に来たとき、お前はまだ誰とも目を合わせなかった。今は違う」
ニコラスは少し間を置いた。
「言葉を覚えた」
サカは笑った。「それだな」
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飛行機の中で、ニコラスはスマートフォンを取り出した。
グレースにメッセージを送った。
「ベスト4で負けた。でも来季やることが見えた」
グレースからすぐ返信が来た。
「お疲れ様。日本旅行、もうすぐね」
ニコラスはスマートフォンを置いた。
窓の外にスペインの空が広がっていた。
父がプレーした国で、自分もプレーした。
それだけで十分だった。
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