11番――日本戦
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六月二十九日、マドリード。ベルナベウ。
ベスト16、イングランド対日本。
ニコラスはウォームアップ中に日本の選手たちを見た。
11番がいた。
AKIだった。
リバプールでは21番を背負っている男が、日本代表では11番をつけていた。左サイドでボールを受けて、縦に仕掛けていた。ウォームアップの動きでも、縦への意識が見えた。
プレミアで何度も見た動きだった。
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キックオフ前、ライスが言った。「いつも通りやる」
今日は違う意味があった、とニコラスは思った。
AKIとはDMでやり取りをしていた。「ピッチで」という約束をしていた。今日がその日だった。
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前半、日本は予想以上に組織的だった。
4-4-2で中盤をコンパクトに保ち、イングランドのパスコースを消してきた。ニコラスへのボールは常に二枚がかりで対応してきた。
十一分、AKIが左サイドでボールを受けた。
縦に仕掛けた。キャッシュが対応した。AKIが内側へ切り込んだ。シュートを打った。
マルティネスが弾いた。
「危なかった」とケインがニコラスの隣で言った。
「あいつは内側も使う」とニコラスは言った。「縦だけじゃない」
「知っているのか」
「プレミアで何度も見た」
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二十七分、ニコラスがゴールを決めた。
メイヌーが中盤で奪った。前へ出した。ニコラスが受けた。DFが寄せてきた。
体を使って入れ替わった。
一瞬でシュートコースが生まれた。
右足で打った。
GKの逆を突いた。
ネットが揺れた。
スタジアムが沸いた。イングランドサポーターの声が大きかった。
ニコラスは右手を上げた。チームメイトが集まってきた。
スタンドをちらりと見た。どこかにグレースがいるはずだった。見えなかった。でもどこかにいた。
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前半終了間際、日本が同点にした。
AKIが左サイドで受けた。縦に仕掛けた。キャッシュを外した。低いクロスを入れた。
日本の9番がニアで合わせた。
マルティネスの手に当たったが、ゴールラインを越えた。
一対一。
ハーフタイム、ロッカールームでトゥヘルが言った。
「日本の11番、右サイドへ誘導しろ。キャッシュが縦を切る。内側はライスが潰す」
「わかった」とライスが言った。
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後半、イングランドがペースを上げた。
日本の守備ブロックに対して、ボールを動かす速度を上げた。
六十一分、スペースが生まれた。
ベリンガムが縦に走った。ニコラスが右へ流れた。ケインが中に残った。
ベリンガムからケインへ。ケインがワンタッチでニコラスへ落とした。
ニコラスが受けた瞬間、DFが二枚来た。
体で止めた。落とした。走り込んできたベリンガムがシュートを打った。
二対一。
ベリンガムがニコラスを指差した。「お前の体があったから収まった」と言った。
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七十三分、ニコラスとAKIが直接ボールを争った。
ロングボールがニコラスとAKIの間に落ちた。
二人同時に走り込んだ。
ニコラスが体を入れてボールを収めた。AKIが後ろから体を当てた。
ニコラスが体格で押し返した。
ボールがラインを割った。
AKIが立ち上がった。ニコラスも立ち上がった。
一瞬、目が合った。
AKIが小さく頷いた。ニコラスも頷いた。
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八十一分、ニコラスが追加点を決めた。
コーナーキックだった。
ケインがニアへ動いた。DFが二枚ついた。
ファーでニコラスが完全にフリーになっていた。
ボールが来た。
ヘッドで合わせた。
三対一。
これで試合が決まった。
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試合終了。三対一。
イングランドがベスト8へ進んだ。
ピッチで選手たちが握手を交わした。
AKIがニコラスの前に来た。
「ロメロさん、今日は完敗でした」とAKIは言った。日本語だった。
「今日は」とニコラスは返した。日本語で。
AKIは少し驚いた顔をした。「日本語うまくなってる!勉強したんですか」
「少しな」
「お母さんとの旅行、楽しみにしてくださいよ」とAKIは言った。「京都の神社、絶対気に入ると思うんで」
「行く」
AKIは笑った。「また感想聞かせてください!」
二人はユニフォームを交換した。
AKIの11番のユニフォームをニコラスが受け取った。
「来季もプレミアで戦いましょう」とAKIは言った。
「プレミアで」
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ロッカールームへ戻りながら、アリスターが隣に来た。
「AKIと話してたじゃないか、ニック」
「そうだ」
「何話してたんだ」
「来季またプレミアで戦おうと言った」
アリスターは少し笑った。「ライバルと友達になるの、上手いよなお前」
ニコラスは少し考えた。
「ライバルだから話せる」
アリスターはその言葉を聞いた。
「そうかもな」
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