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沈黙のストライカー  作者: ムーミンの丸焼き
2030ワールドカップ

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88/118

11番――日本戦


---


六月二十九日、マドリード。ベルナベウ。


ベスト16、イングランド対日本。


ニコラスはウォームアップ中に日本の選手たちを見た。


11番がいた。


AKIだった。


リバプールでは21番を背負っている男が、日本代表では11番をつけていた。左サイドでボールを受けて、縦に仕掛けていた。ウォームアップの動きでも、縦への意識が見えた。


プレミアで何度も見た動きだった。


---


キックオフ前、ライスが言った。「いつも通りやる」


今日は違う意味があった、とニコラスは思った。


AKIとはDMでやり取りをしていた。「ピッチで」という約束をしていた。今日がその日だった。


---


前半、日本は予想以上に組織的だった。


4-4-2で中盤をコンパクトに保ち、イングランドのパスコースを消してきた。ニコラスへのボールは常に二枚がかりで対応してきた。


十一分、AKIが左サイドでボールを受けた。


縦に仕掛けた。キャッシュが対応した。AKIが内側へ切り込んだ。シュートを打った。


マルティネスが弾いた。


「危なかった」とケインがニコラスの隣で言った。


「あいつは内側も使う」とニコラスは言った。「縦だけじゃない」


「知っているのか」


「プレミアで何度も見た」


---


二十七分、ニコラスがゴールを決めた。


メイヌーが中盤で奪った。前へ出した。ニコラスが受けた。DFが寄せてきた。


体を使って入れ替わった。


一瞬でシュートコースが生まれた。


右足で打った。


GKの逆を突いた。


ネットが揺れた。


スタジアムが沸いた。イングランドサポーターの声が大きかった。


ニコラスは右手を上げた。チームメイトが集まってきた。


スタンドをちらりと見た。どこかにグレースがいるはずだった。見えなかった。でもどこかにいた。


---


前半終了間際、日本が同点にした。


AKIが左サイドで受けた。縦に仕掛けた。キャッシュを外した。低いクロスを入れた。


日本の9番がニアで合わせた。


マルティネスの手に当たったが、ゴールラインを越えた。


一対一。


ハーフタイム、ロッカールームでトゥヘルが言った。


「日本の11番、右サイドへ誘導しろ。キャッシュが縦を切る。内側はライスが潰す」


「わかった」とライスが言った。


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後半、イングランドがペースを上げた。


日本の守備ブロックに対して、ボールを動かす速度を上げた。


六十一分、スペースが生まれた。


ベリンガムが縦に走った。ニコラスが右へ流れた。ケインが中に残った。


ベリンガムからケインへ。ケインがワンタッチでニコラスへ落とした。


ニコラスが受けた瞬間、DFが二枚来た。


体で止めた。落とした。走り込んできたベリンガムがシュートを打った。


二対一。


ベリンガムがニコラスを指差した。「お前の体があったから収まった」と言った。


---


七十三分、ニコラスとAKIが直接ボールを争った。


ロングボールがニコラスとAKIの間に落ちた。


二人同時に走り込んだ。


ニコラスが体を入れてボールを収めた。AKIが後ろから体を当てた。


ニコラスが体格で押し返した。


ボールがラインを割った。


AKIが立ち上がった。ニコラスも立ち上がった。


一瞬、目が合った。


AKIが小さく頷いた。ニコラスも頷いた。


---


八十一分、ニコラスが追加点を決めた。


コーナーキックだった。


ケインがニアへ動いた。DFが二枚ついた。


ファーでニコラスが完全にフリーになっていた。


ボールが来た。


ヘッドで合わせた。


三対一。


これで試合が決まった。


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試合終了。三対一。


イングランドがベスト8へ進んだ。


ピッチで選手たちが握手を交わした。


AKIがニコラスの前に来た。


「ロメロさん、今日は完敗でした」とAKIは言った。日本語だった。


「今日は」とニコラスは返した。日本語で。


AKIは少し驚いた顔をした。「日本語うまくなってる!勉強したんですか」


「少しな」


「お母さんとの旅行、楽しみにしてくださいよ」とAKIは言った。「京都の神社、絶対気に入ると思うんで」


「行く」


AKIは笑った。「また感想聞かせてください!」


二人はユニフォームを交換した。


AKIの11番のユニフォームをニコラスが受け取った。


「来季もプレミアで戦いましょう」とAKIは言った。


「プレミアで」


---


ロッカールームへ戻りながら、アリスターが隣に来た。


「AKIと話してたじゃないか、ニック」


「そうだ」


「何話してたんだ」


「来季またプレミアで戦おうと言った」


アリスターは少し笑った。「ライバルと友達になるの、上手いよなお前」


ニコラスは少し考えた。


「ライバルだから話せる」


アリスターはその言葉を聞いた。


「そうかもな」


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