ハーランド――最終節前夜
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## ハーランド視点
五月の最終週、マンチェスターの自宅だった。
アーリング・ハーランドはソファに座って、スマートフォンをテーブルに置いた。
明日、ヴィラパークへ行く。勝てば優勝。負ければヴィラが優勝する。引き分けでも得失点差でシティが上回るため、自分たちが優勝する。
だから勝てば優勝、負けるな。それだけだった。
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ハーランドはニコラス・ロメロという選手を、一年前から観察していた。
正確には、数字を見ていた。プレミア1年目、十九ゴール。得点ランキング2位だった。自分との差は二点だったが、プレミア1年目の選手が自分の後ろにいるのは初めてだった。
今季、その選手は2トップに移行した。
ハーランドはその話を聞いたとき、少し意外だった。あれだけゴールを決める選手が、なぜポストプレーの負荷を自分に課すのか。ゴール数が減るのはわかりきっていた。
でも今日の時点で三十三点だった。
2トップをやりながら三十三点。自分の三十四点と一点差だった。
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タブレットを取り出して、ヴィラの試合映像を見た。
ニコラスの動きだけを追った。
最初に気づいたのは、ポストから反転する場面だった。DFを背負った状態から、一瞬で向きを変えてシュートを打つ。それが今季から増えていた。
ハーランドはその動きを数回繰り返して見た。
DFを感じている、と思った。重心を読んでいる。体が先に動いている。技術として身につけたのではなく、感覚として持っているものだった。
それが厄介だった。
DFからすると、ポストを受けた選手がパスを出すのかシュートを打つのかが、最後の瞬間まで読めない。
自分にはその動きがない。
ハーランドはワントップだった。チームがボールを運んできて、自分がゴール前で決める。それが役割だった。その役割に特化して、プレミアでの五年間を戦ってきた。
でもロメロは違う役割をやりながら、同じ得点数に近いところにいた。
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もう一つ気になっていたことがあった。
ロメロの得点パターンが、今季から増えていた。
昨季はエリア内での正面からのシュートが多かった。今季はそれに加えて、反転シュート、ヘディング、FK。バリエーションが広がっていた。
昨季の自分と今季の自分を比べるとき、大きな変化はない。同じプレーをより精度高くやる。それがハーランドの進化の仕方だった。
でもロメロは昨季から今季で、使える武器が明らかに増えていた。
二十一歳で、まだ増やしている。
ハーランドはタブレットを置いた。
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自分がプレミアに来たのは二十一歳のときだった。あのとき、武器はすでに揃っていた。スピード、フィジカル、ゴール前の嗅覚、ヘディング。それを磨くことが仕事だった。
ロメロはチェスターフィールドの四部からプレミアに来た。道が違う。
でもゴール前に立ったときの目は同じだ、とハーランドは思っていた。迷いがない。ゴールだけを見ている。その目は、プレミアで五年やってきた自分と同じだった。
違うのは、ロメロがまだ途中だということだった。
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明日、ヴィラパークで戦う。
ハーランドは得点王を取るつもりだった。三十四点でシーズンを終えるつもりはなかった。明日も点を取る。それだけだった。
ロメロが三十三点から何点取るかは、ロメロが決めることだった。
自分は自分の試合をする。
ただ一つだけ思っていることがあった。
ロメロが今のペースで武器を増やし続けたら、あと二、三年でどうなるのか。
答えは出なかった。でも明日の試合で、少しわかるかもしれない。
ハーランドはソファから立ち上がった。
明日、ヴィラパークへ行く。
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