表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
沈黙のストライカー  作者: ムーミンの丸焼き
アストン・ヴィラ2年目

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/110

ハーランド――最終節前夜


---


## ハーランド視点


五月の最終週、マンチェスターの自宅だった。


アーリング・ハーランドはソファに座って、スマートフォンをテーブルに置いた。


明日、ヴィラパークへ行く。勝てば優勝。負ければヴィラが優勝する。引き分けでも得失点差でシティが上回るため、自分たちが優勝する。


だから勝てば優勝、負けるな。それだけだった。


---


ハーランドはニコラス・ロメロという選手を、一年前から観察していた。


正確には、数字を見ていた。プレミア1年目、十九ゴール。得点ランキング2位だった。自分との差は二点だったが、プレミア1年目の選手が自分の後ろにいるのは初めてだった。


今季、その選手は2トップに移行した。


ハーランドはその話を聞いたとき、少し意外だった。あれだけゴールを決める選手が、なぜポストプレーの負荷を自分に課すのか。ゴール数が減るのはわかりきっていた。


でも今日の時点で三十三点だった。


2トップをやりながら三十三点。自分の三十四点と一点差だった。


---


タブレットを取り出して、ヴィラの試合映像を見た。


ニコラスの動きだけを追った。


最初に気づいたのは、ポストから反転する場面だった。DFを背負った状態から、一瞬で向きを変えてシュートを打つ。それが今季から増えていた。


ハーランドはその動きを数回繰り返して見た。


DFを感じている、と思った。重心を読んでいる。体が先に動いている。技術として身につけたのではなく、感覚として持っているものだった。


それが厄介だった。


DFからすると、ポストを受けた選手がパスを出すのかシュートを打つのかが、最後の瞬間まで読めない。


自分にはその動きがない。


ハーランドはワントップだった。チームがボールを運んできて、自分がゴール前で決める。それが役割だった。その役割に特化して、プレミアでの五年間を戦ってきた。


でもロメロは違う役割をやりながら、同じ得点数に近いところにいた。


---


もう一つ気になっていたことがあった。


ロメロの得点パターンが、今季から増えていた。


昨季はエリア内での正面からのシュートが多かった。今季はそれに加えて、反転シュート、ヘディング、FK。バリエーションが広がっていた。


昨季の自分と今季の自分を比べるとき、大きな変化はない。同じプレーをより精度高くやる。それがハーランドの進化の仕方だった。


でもロメロは昨季から今季で、使える武器が明らかに増えていた。


二十一歳で、まだ増やしている。


ハーランドはタブレットを置いた。


---


自分がプレミアに来たのは二十一歳のときだった。あのとき、武器はすでに揃っていた。スピード、フィジカル、ゴール前の嗅覚、ヘディング。それを磨くことが仕事だった。


ロメロはチェスターフィールドの四部からプレミアに来た。道が違う。


でもゴール前に立ったときの目は同じだ、とハーランドは思っていた。迷いがない。ゴールだけを見ている。その目は、プレミアで五年やってきた自分と同じだった。


違うのは、ロメロがまだ途中だということだった。


---


明日、ヴィラパークで戦う。


ハーランドは得点王を取るつもりだった。三十四点でシーズンを終えるつもりはなかった。明日も点を取る。それだけだった。


ロメロが三十三点から何点取るかは、ロメロが決めることだった。


自分は自分の試合をする。


ただ一つだけ思っていることがあった。


ロメロが今のペースで武器を増やし続けたら、あと二、三年でどうなるのか。


答えは出なかった。でも明日の試合で、少しわかるかもしれない。


ハーランドはソファから立ち上がった。


明日、ヴィラパークへ行く。


---

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ