首位
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五月の中旬、リーグ戦の残りは三試合だった。
グレースの検査結果が届いた。心臓に軽い不整脈があるが、日常生活に支障のない程度だった。投薬と定期検診で管理できると医師に言われたとグレースから連絡が来た。
「ほら、大丈夫だったでしょ」とグレースはメッセージで送ってきた。
ニコラスは「良かった」とだけ返した。
送金はそのままにした。グレースから返金はなかった。
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順位表はこうだった。
1位 マンチェスター・シティ 勝ち点79
2位 アストン・ヴィラ 勝ち点78
一点差だった。
二週間前まで差は四だった。ヴィラが三連勝し、シティが一分一敗で取りこぼした。
残り三試合。全勝すれば勝ち点は87になる。シティが一つでも取りこぼせば、逆転できる。
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練習でエメリーが全員を集めた。
「順位表を見るな」とエメリーは言った。「シティの結果を気にするな。自分たちの試合をするだけだ。残り三試合、全部勝つ。それだけを考えろ」
ニコラスはその言葉を聞いた。
順位表を見るな。でも全員が見ていた。見ないふりをしながら、全員が知っていた。
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三十三節、ヴィラはウェストハムと対戦した。
前半、膠着した。ウェストハムは引いて守った。二トップへのパスコースを消してきた。
三十八分、ロジャースが左サイドで前を向いた。クロスが入った。ニコラスが飛んだ。DFが競った。
こぼれ球がワトキンスの前に転がった。
押し込んだ。
一対〇。
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後半、ヴィラが追加点を取った。
六十三分、ニコラスがポストでボールを受けた。DFを背負った。
反転した。
打った。
入った。
二対〇。
ヴィラパークが揺れた。
試合はそのまま二対〇で終わった。
同じ時間帯に行われたシティの試合は一対一の引き分けだった。
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勝ち点が並んだ。
1位 マンチェスター・シティ 勝ち点80(得失点差+47)
2位 アストン・ヴィラ 勝ち点81
ヴィラが首位に立った。
試合後、ロッカールームでその結果が伝わった。
ベイリーが叫んだ。ロジャースが飛び跳ねた。ティーレマンスが珍しく声を上げた。
ニコラスは少し笑った。声は出さなかった。でも笑った。
ワトキンスが隣に来た。
「まだ二試合ある」とワトキンスは言った。
「わかってる」
「でも今日は笑っていい」
「笑ってる」
ワトキンスは頷いた。「そうだな」
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翌日の練習、エメリーが映像を見せた。残り二試合の対戦相手の分析だった。
三十四節はトッテナム。最終節はマンチェスター・シティだった。
「最終節でシティと直接対決か」とオナナがつぶやいた。
「そういうことだ」とエメリーは言った。「でも最終節の前に、トッテナムがある。忘れるな」
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その夜、ゾーイから電話が来た。
「首位ですね」とゾーイは言った。
「そうだ」
「シティとの最終節、メディアが騒いでいます。チケットの価格が跳ね上がっています」
「そうか」
「ハーランドとの得点王争いも、今日の得点で差が縮まりました」ゾーイは言った。「現在ハーランドが三十三点、あなたが三十一点。最終節前の三十四節でどれだけ取れるかです」
ニコラスはその数字を聞いた。
二点差。残り二試合。得点王はまだわからなかった。でもリーグタイトルの方が先だった。
「トッテナム戦、全力でやる」とニコラスは言った。
「わかっています」ゾーイは言った。「ただ、ハーランドも明日試合があります。状況次第で差が変わります」
「ハーランドの試合は見ない」
「それでいいと思います」ゾーイは言った。「あなたは自分の試合をするだけです」
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三十四節、トッテナム戦。
ヴィラパークだった。
前半からヴィラが押し込んだ。トッテナムの守備は整っていたが、二トップに対応しきれていなかった。
二十九分、ワトキンスが右に流れた。ニコラスの前にスペースが生まれた。
ボールが来た。
打った。
入った。
三十二点目だった。
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後半、五十一分。
コーナーキックが来た。ニコラスがファーサイドで待っていた。ボールが来た。
頭で合わせた。
入った。
三十三点目だった。
ヴィラパークが揺れた。
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試合は二対〇で終わった。
同じ時間帯のシティの試合結果が入った。
シティは三対一で勝っていた。
1位 アストン・ヴィラ 勝ち点84(得失点差+43)
2位 マンチェスター・シティ 勝ち点83(得失点差+49)
一点差。最終節を残して、ヴィラが首位だった。
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ロッカールームで、エメリーが言った。
「最終節。シティに勝てば優勝だ。引き分けでも、得失点差でシティが上回るため優勝はシティになる。つまり勝つしかない」
静かだった。
「ハーランドの得点数を教える」エメリーは続けた。「三十四点だ。ロメロは三十三点。一点差だ」
ニコラスはその数字を聞いた。
ハーランドが三十四点。自分が三十三点。最終節で二点取れば逆転できる。でもハーランドも得点するかもしれない。
でも今はそれより先に、シティに勝つことだった。
「最終節、全力でやれ」エメリーは言った。「それだけだ」
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