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沈黙のストライカー  作者: ムーミンの丸焼き
アストン・ヴィラ2年目

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70/110

首位


---


五月の中旬、リーグ戦の残りは三試合だった。


グレースの検査結果が届いた。心臓に軽い不整脈があるが、日常生活に支障のない程度だった。投薬と定期検診で管理できると医師に言われたとグレースから連絡が来た。


「ほら、大丈夫だったでしょ」とグレースはメッセージで送ってきた。


ニコラスは「良かった」とだけ返した。


送金はそのままにした。グレースから返金はなかった。


---


順位表はこうだった。


1位 マンチェスター・シティ 勝ち点79

2位 アストン・ヴィラ    勝ち点78


一点差だった。


二週間前まで差は四だった。ヴィラが三連勝し、シティが一分一敗で取りこぼした。


残り三試合。全勝すれば勝ち点は87になる。シティが一つでも取りこぼせば、逆転できる。


---


練習でエメリーが全員を集めた。


「順位表を見るな」とエメリーは言った。「シティの結果を気にするな。自分たちの試合をするだけだ。残り三試合、全部勝つ。それだけを考えろ」


ニコラスはその言葉を聞いた。


順位表を見るな。でも全員が見ていた。見ないふりをしながら、全員が知っていた。


---


三十三節、ヴィラはウェストハムと対戦した。


前半、膠着した。ウェストハムは引いて守った。二トップへのパスコースを消してきた。


三十八分、ロジャースが左サイドで前を向いた。クロスが入った。ニコラスが飛んだ。DFが競った。


こぼれ球がワトキンスの前に転がった。


押し込んだ。


一対〇。


---


後半、ヴィラが追加点を取った。


六十三分、ニコラスがポストでボールを受けた。DFを背負った。


反転した。


打った。


入った。


二対〇。


ヴィラパークが揺れた。


試合はそのまま二対〇で終わった。


同じ時間帯に行われたシティの試合は一対一の引き分けだった。


---


勝ち点が並んだ。


1位 マンチェスター・シティ 勝ち点80(得失点差+47)

2位 アストン・ヴィラ    勝ち点81


ヴィラが首位に立った。


試合後、ロッカールームでその結果が伝わった。


ベイリーが叫んだ。ロジャースが飛び跳ねた。ティーレマンスが珍しく声を上げた。


ニコラスは少し笑った。声は出さなかった。でも笑った。


ワトキンスが隣に来た。


「まだ二試合ある」とワトキンスは言った。


「わかってる」


「でも今日は笑っていい」


「笑ってる」


ワトキンスは頷いた。「そうだな」


---


翌日の練習、エメリーが映像を見せた。残り二試合の対戦相手の分析だった。


三十四節はトッテナム。最終節はマンチェスター・シティだった。


「最終節でシティと直接対決か」とオナナがつぶやいた。


「そういうことだ」とエメリーは言った。「でも最終節の前に、トッテナムがある。忘れるな」


---


その夜、ゾーイから電話が来た。


「首位ですね」とゾーイは言った。


「そうだ」


「シティとの最終節、メディアが騒いでいます。チケットの価格が跳ね上がっています」


「そうか」


「ハーランドとの得点王争いも、今日の得点で差が縮まりました」ゾーイは言った。「現在ハーランドが三十三点、あなたが三十一点。最終節前の三十四節でどれだけ取れるかです」


ニコラスはその数字を聞いた。


二点差。残り二試合。得点王はまだわからなかった。でもリーグタイトルの方が先だった。


「トッテナム戦、全力でやる」とニコラスは言った。


「わかっています」ゾーイは言った。「ただ、ハーランドも明日試合があります。状況次第で差が変わります」


「ハーランドの試合は見ない」


「それでいいと思います」ゾーイは言った。「あなたは自分の試合をするだけです」


---


三十四節、トッテナム戦。


ヴィラパークだった。


前半からヴィラが押し込んだ。トッテナムの守備は整っていたが、二トップに対応しきれていなかった。


二十九分、ワトキンスが右に流れた。ニコラスの前にスペースが生まれた。


ボールが来た。


打った。


入った。


三十二点目だった。


---


後半、五十一分。


コーナーキックが来た。ニコラスがファーサイドで待っていた。ボールが来た。


頭で合わせた。


入った。


三十三点目だった。


ヴィラパークが揺れた。


---


試合は二対〇で終わった。


同じ時間帯のシティの試合結果が入った。


シティは三対一で勝っていた。


1位 アストン・ヴィラ    勝ち点84(得失点差+43)

2位 マンチェスター・シティ 勝ち点83(得失点差+49)


一点差。最終節を残して、ヴィラが首位だった。


---


ロッカールームで、エメリーが言った。


「最終節。シティに勝てば優勝だ。引き分けでも、得失点差でシティが上回るため優勝はシティになる。つまり勝つしかない」


静かだった。


「ハーランドの得点数を教える」エメリーは続けた。「三十四点だ。ロメロは三十三点。一点差だ」


ニコラスはその数字を聞いた。


ハーランドが三十四点。自分が三十三点。最終節で二点取れば逆転できる。でもハーランドも得点するかもしれない。


でも今はそれより先に、シティに勝つことだった。


「最終節、全力でやれ」エメリーは言った。「それだけだ」


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