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沈黙のストライカー  作者: ムーミンの丸焼き
アストン・ヴィラ2年目

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68/110

CL――リバプール(第二戦)


---


ヴィラパークは満員だった。


七万人。ホームだった。去年のCLのグループステージでもここで戦った。でも準決勝は違った。スタジアムの空気が、試合前から重かった。良い意味での重さだった。七万人が同じものを求めている重さだった。


アグリゲートは二対二。今日勝てば決勝だった。


---


試合が始まった。


ヴィラが前に出た。ホームの勢いがあった。前半からリバプールを押し込んだ。


十四分、チャンスが来た。


ロジャースがエリア内に侵入した。クロスを上げた。ニコラスが飛んだ。DFも飛んだ。


競り負けた。


惜しかった。でも入らなかった。


二十二分、今度はワトキンスが抜け出した。GKと一対一になった。シュートを打った。


ポストに当たった。


会場がため息をついた。


---


三十一分、リバプールが先制した。


カウンターだった。


AKIがボールを受けた。前を向いた。キャッシュが寄せた。AKIは止まらなかった。縦に抜いた。


ニコラスはそのドリブルを見ながら、第一戦の六十一分を思い出した。あのとき右を通った。今日は縦に来た。


クロスが上がった。ファーサイドに合わせられた。


一対〇。


---


ハーフタイム、エメリーが言った。


「焦るな。前半の内容は悪くない。チャンスは作れている。後半も同じことをやれ。一点取れば同点だ。同点になれば延長がある」


ニコラスはその言葉を聞いた。


焦るな。わかっていた。でも体の中に少し、去年のCLの感覚が戻ってきた。あのときも先制されて、追いかけた。


でも今日は去年じゃない。


---


後半が始まった。


五十八分、ニコラスが動いた。


エリア外でボールを受けた。DFが来た。背中を向けた。


DFの重心が後ろに移った瞬間を感じた。


反転した。


打った。


入った。


一対一。


ヴィラパークが揺れた。七万人の声が一つになった。


---


その後、試合は膠着した。


リバプールが守りを固めた。ヴィラが攻めた。スペースが消えた。ワトキンスがポストに入った。ニコラスが動いた。でもリバプールの守備は組織的で、スペースを生まれる前に埋めた。


七十一分、ワトキンスに代わってデュランが入った。


デュランのフィジカルで前線を活性化しようとした。クロスが入った。デュランが競った。GKがキャッチした。


八十三分だった。


リバプールのセットプレーだった。コーナーキックが入った。ニコラスはゴール前の混戦の中でクリアしようとした選手を見た。


弾いた。


ゴールに向かっていた。


マルティネスが手を伸ばした。


ラインを割った。


二対一。


---


残り七分。


ヴィラが攻めた。ニコラスがエリアに入った。クロスが来た。競った。


外れた。


ロジャースがミドルシュートを打った。


GKが弾いた。


オナナが詰めた。


ブロックされた。


試合終了の笛が鳴った。


一対二。アグリゲート三対四。


リバプールが決勝に進んだ。


---


ヴィラパークが静かになった。


七万人が静かになる音があった。


ニコラスはピッチの上に立ったまま、少し下を向いた。


去年も負けた。でも去年はグループステージだった。今日は準決勝だった。一点差だった。


打てた場面はあった。決めきれなかった。


でも後悔とは少し違う感覚だった。やれることはやった。でも届かなかった。その差が何なのか、今はまだわからなかった。


---


通路でAKIと鉢合わせた。


AKIは表情が複雑だった。勝った顔ではなかった。でも負けた顔でもなかった。


「惜しかった」とAKIが言った。


「そうだな」


「八十三分のあれ、止めたかった」


「止められなかった」


AKIは少し黙った。


「ヴィラ、去年より全然違った」とAKIは言った。「本当に。今日は際どかった」


ニコラスはAKIを見た。


「来年も当たるかもしれない」


「当たりたい」AKIは言った。「でも来年は決勝で当たりたい」


ニコラスはその言葉を少し聞いた。


「同じだ」と言った。


AKIは笑った。今度はいつもの軽い笑顔だった。


「またな、ロメロ」


「ああ」


---


ロッカールームに戻ると、チームメイトたちは静かだった。


誰も何も言わなかった。着替える音だけがあった。


しばらくして、ワトキンスが口を開いた。


「来季はここから先に行く」


それだけだった。


誰も返事をしなかった。でも返事をしなくていい言葉だった。


ニコラスも何も言わなかった。


でもその言葉は、静かにニコラスの中に残った。


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