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沈黙のストライカー  作者: ムーミンの丸焼き
アストン・ヴィラ2年目

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62/109

反転


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三月の最初の週、ヴィラはホームでブレントフォードと対戦した。


リーグ戦の再開だった。CLのグループステージが一段落して、リーグに戻ってきた。順位は二位、シティとの勝ち点差は三だった。


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前半、二トップは機能していた。


ニコラスがポストに入るたびに、ワトキンスが逆サイドへ動いた。スペースが生まれた。でもブレントフォードの守備は組織的だった。スペースが生まれた瞬間に埋める動きが速かった。


三十二分、ロジャースが左サイドで仕掛けた。モーガン・ロジャースはスピードと推進力があった。ドリブルで二人を剥がしてクロスを上げた。


ニコラスが飛び込んだ。DFも飛んだ。競り合いで弾かれた。


こぼれ球がエリア外へ転がった。


オナナが拾った。アマドゥ・オナナはフィジカルが強く、ルーズボールの回収が速かった。持ち上がってニコラスへパスを出した。


ニコラスがエリア内でボールを受けた。DFが背後から来た。


背中を向けた。


DFの重心を感じた。


反転した。


打った。


入った。


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ベイリーが最初に来た。レオン・ベイリーはジャマイカ代表のウィンガーで、スプリントが速かった。「ニコ!」と叫びながら抱きついてきた。


次にロジャースが来た。「クロスが活きた!」と言った。


ワトキンスが来た。何も言わなかった。でも肩を叩いた。


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ハーフタイム、エメリーが短く言った。


「後半も続けろ。あの形が今日は効いている」


ニコラスはロッカールームの壁を見た。


反転シュートが試合で決まった。CHの練習で決めたのは何度もあった。でも今日は流れの中で、DFがいる状態で、本当の試合で決まった。


エメリーが「その半分を全部にしろ」と言った言葉を思い出した。


まだ全部ではない。でも今日、もう一歩近づいた。


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後半、六十八分だった。


ワトキンスが右へ流れた。DFが一枚ついた。


ニコラスの前にスペースが生まれた。ボールが来た。


打った。


入った。


二点目だった。


今度は反転ではなかった。エリア内で前を向いてシュートを打った。でもそのスペースはワトキンスが作ったものだった。


ワトキンスが近づいてきた。


「二本目はお前のゴールだ」とワトキンスが言った。


「スペースはお前が作った」


「でもシュートを打ったのはお前だ」


ニコラスは少し考えた。


「どちらもだ」


ワトキンスは笑った。「それでいい」


---


試合は二対〇で終わった。


試合後、エメリーがニコラスを呼んだ。


「今日の一点目」


「はい」


「あの状況で反転を選んだのはなぜだ」


ニコラスは少し考えた。


「DFの重心が後ろにある瞬間があった。その瞬間に反転すればゴールへ向けると思った」


「思ったのか、感じたのか」


「感じた。でも後から頭でも追えた」


エメリーは頷いた。「それだ」と言った。「体が感じて、頭が後から追いかけた。その状態が理想だ。よくやった」


それだけだった。


エメリーに「よくやった」と言われたのは、初めてだった。


---


ロッカールームに戻ると、オナナが声をかけてきた。


「あのパス、もう少し速く出せたな」とオナナは言った。自己評価だった。「でも入ったからよかった」


「パスが来なければ打てなかった」


「お前が受けてくれるとわかってたから出せた」オナナは言った。「お前のポストは信頼できる」


ニコラスはその言葉を少し持った。


「ポストプレーを信頼してくれているのか」


「当たり前だ。お前がポストに入ると、俺のパスコースが増える」オナナは笑った。「エゴは別として、チームとして助かってる」


「エゴは別として」


「ゴールを決めたいのは顔に出てる」オナナは笑った。「でもそれがあるから前線の迫力が出る。全部持ってる選手はいない。お前がゴールへ向かう意志を持って、ワトキンスが経験でそれを活かす。二人で一つの前線が完成する」


ニコラスは黙ってその言葉を聞いた。

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