二年目
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八月の第二週、プレミアリーグが開幕した。
ヴィラパークのロッカールームに入ったとき、ニコラスは一瞬止まった。
去年と同じ場所だった。同じロッカー、同じ匂い、同じ光の入り方。でも何かが違った。
違うのは自分だ、とニコラスは思った。去年の八月、ここに来たのは初めてだった。今日は二度目だった。それだけのことだが、それだけで何かが変わる。
ユニフォームを着た。9番。背番号は同じだった。
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今日から二トップだった。
プレシーズンの三週間で、エメリーはさまざまなパターンを試した。ニコラスが中央でワトキンスが右寄り、あるいは逆。どちらかがポストに入りどちらかが抜ける。並走してスペースを作る。崩れた場面もあった。噛み合った場面もあった。
まだ完成していない、とニコラスはわかっていた。エメリーもわかっていた。でも今日から使う、とエメリーは言った。
「完成してから使うのではない」とエメリーは言った。「使いながら完成させる」
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試合が始まった。
相手はニューカッスルだった。
序盤、二トップは機能しなかった。
ニコラスがエリアに向かうとワトキンスも同じ方向へ動いた。スペースが消えた。ニコラスが外に流れるとワトキンスも外へ引っ張られた。去年のプレシーズンと同じ問題が、公式戦の速度で起きていた。
十八分、ニコラスがボールを受けた。DFが一枚来た。体を使って反転しようとした。
もう一枚来た。
出せなかった。ボールを失った。
ベンチのエメリーは何も言わなかった。
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三十四分、ワトキンスが動いた。
右サイドへ流れた。DFが一枚ついていった。
その瞬間、ニコラスの前にスペースが生まれた。
一歩、二歩。
ボールが来た。
シュートを打った。
GKが弾いた。
入らなかった。でも、あの一瞬があった。
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ハーフタイム、エメリーが言った。
「三十四分のやつ。ワトキンスが流れてスペースが生まれた。あれがある。続けろ」
それだけだった。
ニコラスはワトキンスを見た。ワトキンスは頷いた。
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後半、もう一度あった。
六十一分、今度はニコラスが右へ流れた。DFがついてきた。
ワトキンスの前にスペースが生まれた。
ボールが入った。ワトキンスがシュートした。
入った。
一対〇。
ニコラスはポジションに戻りながら、その流れを振り返った。自分が動いてスペースを作った。ゴールを取ったのはワトキンスだった。
アシストはついた。でもゴールじゃない。
その感覚を、ニコラスは少し持ったまま後半を走り続けた。
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試合は一対〇で終わった。
通路でエメリーとすれ違った。
「あのスペースは、意図して作ったか」
ニコラスは少し考えた。
「半分は意図した。半分は体が動いた」
エメリーは頷いた。
「その半分を、全部にしろ」
それだけ言って、先に歩いていった。
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ロッカールームで着替えながら、ニコラスは今日の試合を思い返した。
一年目の開幕戦と比べた。あのときはヴィラパークが初めてで、七万人が何なのかまだわかっていなかった。今日は七万人がどういうものかわかっていた。だから落ち着いて入れた。
でもゴールは取れなかった。
ワトキンスが取った。
自分が作ったスペースで、ワトキンスが取った。
それが正解だとわかっていた。チームが勝った。でも何かがまだ落ち着かなかった。
その感覚が何なのかを、ニコラスはまだ言葉にできなかった。
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