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沈黙のストライカー  作者: ムーミンの丸焼き
アストン・ヴィラ2年目

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55/109

二年目


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八月の第二週、プレミアリーグが開幕した。


ヴィラパークのロッカールームに入ったとき、ニコラスは一瞬止まった。


去年と同じ場所だった。同じロッカー、同じ匂い、同じ光の入り方。でも何かが違った。


違うのは自分だ、とニコラスは思った。去年の八月、ここに来たのは初めてだった。今日は二度目だった。それだけのことだが、それだけで何かが変わる。


ユニフォームを着た。9番。背番号は同じだった。


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今日から二トップだった。


プレシーズンの三週間で、エメリーはさまざまなパターンを試した。ニコラスが中央でワトキンスが右寄り、あるいは逆。どちらかがポストに入りどちらかが抜ける。並走してスペースを作る。崩れた場面もあった。噛み合った場面もあった。


まだ完成していない、とニコラスはわかっていた。エメリーもわかっていた。でも今日から使う、とエメリーは言った。


「完成してから使うのではない」とエメリーは言った。「使いながら完成させる」


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試合が始まった。


相手はニューカッスルだった。


序盤、二トップは機能しなかった。


ニコラスがエリアに向かうとワトキンスも同じ方向へ動いた。スペースが消えた。ニコラスが外に流れるとワトキンスも外へ引っ張られた。去年のプレシーズンと同じ問題が、公式戦の速度で起きていた。


十八分、ニコラスがボールを受けた。DFが一枚来た。体を使って反転しようとした。


もう一枚来た。


出せなかった。ボールを失った。


ベンチのエメリーは何も言わなかった。


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三十四分、ワトキンスが動いた。


右サイドへ流れた。DFが一枚ついていった。


その瞬間、ニコラスの前にスペースが生まれた。


一歩、二歩。


ボールが来た。


シュートを打った。


GKが弾いた。


入らなかった。でも、あの一瞬があった。


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ハーフタイム、エメリーが言った。


「三十四分のやつ。ワトキンスが流れてスペースが生まれた。あれがある。続けろ」


それだけだった。


ニコラスはワトキンスを見た。ワトキンスは頷いた。


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後半、もう一度あった。


六十一分、今度はニコラスが右へ流れた。DFがついてきた。


ワトキンスの前にスペースが生まれた。


ボールが入った。ワトキンスがシュートした。


入った。


一対〇。


ニコラスはポジションに戻りながら、その流れを振り返った。自分が動いてスペースを作った。ゴールを取ったのはワトキンスだった。


アシストはついた。でもゴールじゃない。


その感覚を、ニコラスは少し持ったまま後半を走り続けた。


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試合は一対〇で終わった。


通路でエメリーとすれ違った。


「あのスペースは、意図して作ったか」


ニコラスは少し考えた。


「半分は意図した。半分は体が動いた」


エメリーは頷いた。


「その半分を、全部にしろ」


それだけ言って、先に歩いていった。


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ロッカールームで着替えながら、ニコラスは今日の試合を思い返した。


一年目の開幕戦と比べた。あのときはヴィラパークが初めてで、七万人が何なのかまだわかっていなかった。今日は七万人がどういうものかわかっていた。だから落ち着いて入れた。


でもゴールは取れなかった。


ワトキンスが取った。


自分が作ったスペースで、ワトキンスが取った。


それが正解だとわかっていた。チームが勝った。でも何かがまだ落ち着かなかった。


その感覚が何なのかを、ニコラスはまだ言葉にできなかった。


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― 新着の感想 ―
題名、何とかなりましたね。 実は、最初、題名がムーミンの方だと思ってまして。どんなファンタジーかと思って…。 相変わらずサッカー、解らないけど楽しんで読んでます。 戦術の話、興味深いです。
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