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沈黙のストライカー  作者: ムーミンの丸焼き
アストン・ヴィラ1年目

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49/110

数字


---


五月の終わり、ゾーイから電話が来た。


「一つ確認したいことがあります」


「何だ」


「インタビューの件です。今シーズン中、全部断りました。でも来月、BBCスポーツから依頼が来ています。これも断りますか」


「断れ」


ゾーイは少し間を置いた。


「今回は少し話が違います。聞いてください」


---


プレミア1年目、19ゴール。


FW得点ランキング2位。プレミア初年度に19点以上取った選手は、過去十年で三人しかいなかった。メディアがその数字を見つけた。


と同時に、別のものも掘り起こし始めた。


チェスターフィールド出身。タトゥー。16歳でサッカーを始めた。チェスターフィールド、コンヤ、ルガーノを経てプレミア。——この経歴は、数字以上に記事になりやすかった。


「今週だけで十七件のインタビュー依頼が来ています」とゾーイは言った。「タブロイドが三件、スポーツ専門誌が六件、テレビが四件、ポッドキャストが四件。断り続けていますが、断るほど記事が増えています」


「記事が増えると何が問題だ」


「ニコラスの口から語られない話が、他人の口で語られます。正確でない情報も混じる。チェスターフィールドの過去について、今週だけで二本、事実と異なる記事が出ました」


ニコラスは黙った。


「どんな内容だ」


「一本は『未成年のころから問題行動があった』という匿名の証言を元にした記事です。事実ではありません。でも否定しなければ、広がります」


---


ニコラスは少し考えた。


「俺が話すと何が変わる」


「ニコラス自身の言葉が出た瞬間から、他人が語るより強くなります。一回だけでいい。どんな人間かを自分の言葉で示せれば、その後は沈黙でも成立します」


「俺は話すのが得意じゃない」


「知っています」ゾーイは言った。「でもこれはサッカーではないので、得意かどうかより、やるかやらないかです」


ニコラスは返す言葉を探した。


「考える」


「わかりました。ただ、一つだけ言わせてください」ゾーイの声が少し変わった。「ニコラスの話は、誰かに勝手に語られる前に、ニコラスが語るべきだと私は思っています。チェスターフィールドでの話も、タトゥーの話も、お父さんの話も。それはニコラスのものです」


父の話。


ニコラスはその言葉をしばらく持った。


「わかった」と言った。「BBCだけ受ける」


ゾーイは少し間を置いた。


「ありがとうございます」


---


話が別に動いた。


「9番の件も報告があります」とゾーイは続けた。


「なんだ」


「来季の契約更新の条件として、9番の正式固定を交渉しました。ヴィラ側が承認しました。来季も9番です」


ニコラスはそれを聞いた。


9番。


チェスターフィールドで29番だった。コンヤでも、ルガーノでも29番だった。ヴィラで初めて9番になった。


チェスターフィールドの29番は、最初に渡された番号だった。自分では選んでいなかった。でも今の9番は、自分がここにいることの証明だった。


「わかった」


「来季もよろしくお願いします」とゾーイは言った。


---


BBCのインタビューは六月の初旬に収録された。


質問は多かった。ニコラスは短く答えた。


「チェスターフィールドについて教えてください」


「育った街です」


「16歳でサッカーを始めたのは本当ですか」


「そうです」


「きっかけは」


「声をかけてくれた人がいた」


「それは誰ですか」


「チェスターフィールドの知り合いです」


インタビュアーは少し考えた顔をした。もっと具体的な答えを期待していたのがわかった。でもニコラスはそれ以上言わなかった。


アリスターの名前は出さなかった。それはアリスターのものだったから。


「タトゥーについて聞いていいですか」


「どうぞ」


「意味はありますか」


「あります」


「教えてもらえますか」


「いつか」


インタビュアーはまた考えた。


「今シーズン19ゴール、プレミア2年目の目標は」


「もっと取る」


「具体的な数字は」


「試合が終わってから数えます」


インタビューは三十分で終わった。


翌日、そのインタビューがBBCのウェブサイトに掲載された。


ゾーイからメッセージが来た。


「想像以上に反響があります。短い回答が逆に効きました。コメント欄に『ミステリアスすぎる』と三百件書かれています」


ニコラスは「そうか」と返した。


「良い意味です」とゾーイは続けた。「ニコラスらしい答えでした」


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