FAカップ――マンチェスター・シティ
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三月の第一週、FAカップ準々決勝。
エティハド・スタジアム。マンチェスター・シティのホームだった。
4回戦のニューカッスル戦、5回戦のチェルシー戦を勝ち上がってきた。どちらもエメリーがターンオーバーを使いながら、ギリギリで勝った。チームの体力を消耗しながら、ここまで来た。
準々決勝の相手がシティだった。
ハーランドがいる。
十月のリーグ戦で二対二の引き分けだった。あのとき二人はピッチで向き合って、試合後に短い言葉を交わした。「また会おう」——それが今日だった。
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試合前、ロッカールームでエメリーが言った。
「カップ戦の準々決勝だ。リーグとは別の戦いだ。今日負ければシーズンのタイトルが一つ消える。でも今日勝てば準決勝が見えてくる。ウェンブリーが見えてくる。やれるか」
全員が頷いた。
ニコラスも頷いた。
ウェンブリー。まだ行ったことのないスタジアムだ。
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試合が始まった。
シティは速かった。
リーグでの対戦より、シャープだった気がした。カップ戦に向けてのプレッシャーがあるのか、序盤から圧力をかけてきた。
ハーランドはリーグ戦のときと同じだった。静かに構えていた。エリアの外では最小限にしか動かない。でもボールが来た瞬間、別のスイッチが入る。
十二分、先制点を取られた。
ハーランドではなかった。右サイドからのコンビネーションで、中盤の選手に決められた。
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ヴィラは追いついた。
二十九分、ニコラスがエリアに入った。DFが来た。体を使って振り切った。右足を振った。GKの左を抜いた。
一対一。
シティのプレッシャーを一点で跳ね返した。
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でも三十八分、また取られた。
今度はハーランドだった。
CKから混戦になった。こぼれ球がハーランドの前に来た。
体が動いていた。考えていなかった。
蹴った。
入った。
二対一。
ニコラスはゴールを見た。
リーグで対戦したときも、CLで対戦したリバプールのときも、プレミアの一流選手のゴールは速い。考えた後に体が動くのではなく、体がもう動いている。ハーランドも同じだ。
前半が終わった。
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ロッカールームでエメリーが言った。「一点差だ。後半取れる。前半と同じことをやれ」
ニコラスはそれを聞いた。
取れる。後半また取る。
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後半が始まった。
ヴィラが押した。ワトキンスが走り続けた。ニコラスがエリアに入り続けた。
五十八分、ニコラスにボールが来た。
ペナルティエリアの外、右側。DFが一枚来た。
切り返した。
シュートコースが開いた。
左足で蹴った。
GKが弾いた。
こぼれ球が来た。
ワトキンスが走り込んだ。
蹴った。
GKが止めた。
入らなかった。
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六十七分、シティがカウンターに出た。
ハーランドが受けた。
マルティネスが飛び出した。
ハーランドはそれを見ていた。体が先に動いていた。
浮かせた。
マルティネスの手が届かなかった。
入った。
三対一。
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残り二十三分、ヴィラは取り返そうとした。
ニコラスが走った。何度も仕掛けた。
七十六分、ニコラスがシュートした。GKが止めた。
八十一分、ワトキンスのヘッドがクロスバーに当たった。
八十八分、ニコラスがDFを二枚振り切ってシュートした。
入った。
三対二。
残り二分。
もう一点。
ヴィラは全員前に出た。
最後のCKが来た。
全員が飛んだ。
クリアされた。
試合が終わった。
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三対二。
ヴィラはFAカップ準々決勝で敗退した。
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ロッカールームは静かだった。
誰も話さなかった。
ウェンブリーが消えた。
エメリーが言った。「今日まで戦ってきた。リーグとCLはまだある。切り替えろ」
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着替えながら、ニコラスはこのシーズンのカップ戦を振り返った。
CLリバプールに負けた。CLレアルに負けた。FAカップシティに負けた。
三つとも、ゴールを取った。でも届かなかった。
チェスターフィールドのFAカップでエバートンに負けた夜と、似た感覚があった。でも違うことがある。
あのときは「チームが同じ水準でなければ届かない」と思った。今日は、チームとして戦った。それでも届かなかった。
差はまだある。でも差の種類が変わっている。
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通路でハーランドとすれ違った。
ハーランドはもう試合後の顔に戻っていた。チームメイトと話して笑っていた。
ニコラスに気づいた。
「惜しかった」とハーランドは言った。
「届かなかった」
「二点目、あれは良かった」ハーランドは少し笑った。「来季また当たろう」
「来季は取り返す」
「リーグでも?」
「全部で」
ハーランドは笑った。声が出た。
「それでいい」と言って、先に歩いていった。
廊下が少し明るくなるような笑い声が遠ざかっていった。
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バスの中、ニコラスはスマートフォムを取り出した。
ゾーイからメッセージが来ていた。
「お疲れ様でした。リーグ首位、CLは残っています。切り替えてください」
ニコラスは少し間を置いてから返信した。
「来季、全部取る」
ゾーイからすぐ返ってきた。
「それを待っていました」
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バスがマンチェスターの夜を走った。
リーグ首位。でも薄い差だ。CLはまだ続く。
今季取れるものと、来季への積み残しが、少しずつはっきりしてきた。
ハーランドの「来季また当たろう」という言葉が、バスの振動の中に残っていた。
来季。まだこのシーズンは終わっていない。でも来季のことを、もう考え始めている自分がいた。
それでいい、とニコラスは思った。
終わる前に、次を見ている。
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